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2000年(平成12年)

平成12年長審第5号
    件名
プレジャーボート第2栄六丸乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年5月12日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

森田秀彦
    理事官
尾崎安則

    受審人
A 職名:第2栄六丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
プロペラ翼及び舵軸に曲損

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年7月26日11時15分
天草上島北部
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート第2栄六丸
登録長 9.05メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 161キロワット
3 事実の経過
第2栄六丸(以下「栄六丸」という。)は、FRP製プレジャーボートで、遊漁の目的で、A受審人が1人で乗り組み、友人3人を乗せ、船首0.25メートル船尾0.75メートルの喫水をもって、平成10年7月26日08時00分熊本県八代港の定係地を発し、同県天草上島北部の釣り場に向かった。
A受審人は、大戸(うと)ノ瀬戸から天草上島北部の海域に至って釣りを始めたが、釣果が思わしくなかったので、釣り場を求めて、横島ノ瀬戸及び兜(かぶと)ノ瀬戸を北上し、維和(いわ)島北部のドンク鼻沖合に達したころ満潮となり、潮が止まったところで漂泊して昼食を済ませた。11時少し前A受審人は、再び釣り場を求めて同鼻沖合を発進し、逆に南下して兜島沖合に至ったものの、同島付近には他の釣り船を見かけなかったので、更に南下して北島沖合の釣り場に向かうこととした。

ところで、横島ノ瀬戸には潮位によって見え隠れする干出岩が多数存在しており、これら干出岩の存在は海図194号によって調査可能であったが、A受審人は、同瀬戸の水路から外れてその東側水域を維和島に沿って釣り場に向かうこととしたとき、北上時には同瀬戸の水路を無難に航過したことから、同瀬戸の東側の水域においても航行には問題ないものと思い、所持していた海図194号によって前路の干出岩の存在など水路状況の調査を行わなかった。
11時10分A受審人は、肥後兜島灯台から166度(真方位、以下同じ。)520メートルの地点に達したとき、針路を北島に向かう177度に定めたところ、前方840メートルの長瀬の干出岩に向首するようになったが、同干出岩の存在に気付かないまま、機関を微速力前進にかけ、5.5ノットの対地速力で手動操舵で進行中、11時15分栄六丸は、肥後兜島灯台から172度1,340メートルの地点において、原針路、原速力のまま長瀬の干出岩に乗り揚げた。

当時、天候は曇で風力3の南風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、微弱な南流があった。
乗揚の結果、プロペラ翼及び舵軸に曲損を生じたが、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、天草上島北部の横島ノ瀬戸の水路から外れてその東側水域を維和島に沿って釣り場に向かう際、水路調査が不十分で、干出岩に向けて進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、天草上島北部の横島ノ瀬戸の水路から外れてその東側水域を維和島に沿って釣り場に向かう場合、前路には潮位によって見え隠れする干出岩が存在していたのだから、所持していた海図によって水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、北上時には同瀬戸の水路を無難に航過したことから、同瀬戸の東側水域においても航行には問題ないものと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、前路の干出岩の存在に気付かないまま、同干出岩に向首進行して乗揚を招き、プロペラ翼及び舵軸に曲損を生じさせるに至った。






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