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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年11月13日08時13分 三重県答志島東方沖合シモーサ礁 2 船舶の要目 船種船名
海底線敷設船黒潮丸 総トン数 4,776.56トン 全長 119.28メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
6,545キロワット 3 事実の経過 黒潮丸は、可変ピッチプロペラを装備し、船底前部外板下に長さ2.5メートル深さ約0.8メートル幅2.0メートルのソナードームを備えた海底線敷設船で、A受審人ほか30人が乗り組み、作業員9人を乗せ、三重県神島と同県答志島及び神島と同県菅島との間にそれぞれ敷設されていた3本の海底線の撤去作業の目的で、清水バラスト約550トンを載せ、船首5.43メートル船尾4.98メートルの喫水をもって、平成9年11月6日09時55分京浜港横浜区出田町の定係地を発し、21時00分三重県鳥羽市石鏡町の東方沖合に至り、翌日の作業に備えて、支援タグボートから指定された場所に錨泊した。 A受審人は翌7日08時00分抜錨し、来航した支援タグボートと共に作業現場に向かい、答志島と神島との間を結ぶ2本の海底線のうち北側の海底線から順次撤去作業を始め、17時00分同作業を終えて夜間は答志島北東方沖合の伊勢湾内に錨泊し、翌朝08時00分ごろ抜錨して作業地点に向かう運航形態を繰り返し、同作業に従事して2本の海底線を撤去し終え、3本目の海底線の撤去に着手するため、越えて13日08時01分菅島灯台から002度(真方位、以下同じ。)3.4海里の錨地を発し、同灯台から358度0.7海里の菅島水道東口の作業予定地点に向かった。 A受審人は、発航後自ら操船の指揮をとり、二等航海士を船位の確認と見張りに、三等航海士をテレグラフ操作にそれぞれ就け、甲板手を操舵に当て、08時09分少し過ぎ菅島灯台から015度3.4海里の地点に達したとき、針路を133度に定め、機関を翼角14.5度の港内全速力前進にかけ12.0ノットの対地速力とし、小築海島とその東方0.7海里に存在するシモーサ礁の間の水路を通って目的地に向かうつもりで進行した。 A受審人は、08時11分わずか前菅島灯台から020度3.3海里の地点に達したとき、シモーサ礁西方の予定針路線上の水域に多数の小型漁船が操業しているのを認め、自船の進路を遮る状況であったが、作業の進行が遅れていたことから、早めに作業地点に到着しようと思いシモーサ礁の東方沖合を迂回するなど適切な針路を選定することなく、漁船群を右舷側に替わすよう、同時11分針路を118度に転じたところ、シモーサ礁に存在する暗岩に著しく接近する針路となって続航した。 A受審人は、08時13分少し前漁船群の一部を替わし終えたので右舵20度をとって右転中、突然衝撃を感じ、08時13分船首が170度を向いたとき、菅島灯台から027度3.2海里の地点においてシモーサ礁の暗岩に乗り揚げ、これを擦過した。 当時、天候は曇りで風力3の北西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。 乗揚の結果、船底前部外板のソナードームに凹損を生じたが、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、伊勢湾から菅島水道東口の作業地点に向け小築海島北東方沖合を航行中、予定針路線上の水域に漁船が多数存在して操業しているのを認めた際、針路の選定が不適切で、小築海島東方沖合に存在するシモーサ礁の暗岩に著しく接近する針路で進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、伊勢湾から菅島水道東口の作業地点に向け小築海島北東方沖合を航行中、予定針路線上の水域に自船の進路を遮る状況で漁船が多数存在して操業しているのを認めた場合、小築海島東方沖合にはシモーサ礁などに暗岩が存在していることを知っていたのだから、シモーサ礁に著しく接近することのないよう、その東方沖合を迂回するなど針路の選定を適切に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は作業の進行が遅れていたことから、早めに作業地点に到着しようと思い、シモーサ礁の東方沖合を迂回するなど針路の選定を適切に行わなかった職務上の過失により、同礁に存在する暗岩に著しく接近する針路で進行してこれに乗り揚げ、船底のソナードームに凹損を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |