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2000年(平成12年)

平成11年那審第37号
    件名
引船ひびき丸引船列乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年4月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支
    理事官
長浜義昭

    受審人
A 職名:ひびき丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
後部船底に擦過傷

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年2月25日08時20分
金武中城港中城湾新港
2 船舶の要目
船種船名 引船ひびき丸 ミキサープラント船第58美恵号
総トン数 90.98トン
全長 22.50メートル 45.00メートル
幅 20.00メートル
深さ 4.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 514キロワット
3 事実の経過
ひびき丸は、専ら、防波堤工事に使用するミキサープラント船第58美恵号(以下「美恵号」という。)の曳(えい)航作業に従事する鋼製の引船で、A受審人ほか1人が乗り組み、船首1.6メートル船尾2.7メートルの喫水をもって、作業員7人を乗せ砂等190トンを積載し、船首尾とも2.7メートルの等喫水となった美恵号を引き、平成11年2月25日07時20分金武中城港中城湾新港(以下「中城湾新港」という。)の泡瀬船だまりを発し、金武中城港中城西防波堤東灯台(以下「東灯台」という。)北東方で築造中の防波堤に向かった。

ところで、A受審人は、中城湾新港内の記載がない海図第222A号は備えていたが、大尺度の海図第241号を備えていなかった。同受審人は、以前、築造中の防波堤付近を航行した際、同防波堤の北西方に拡延している浅礁を、海水色の変化で視認したことがあったものの、同防波堤付近に浮標を設置した美恵号の作業員から、特に浅い場所はないと聞いていたので大丈夫と思い、海図第241号を取り寄せて、浅礁の水深を確認するなどの水路調査を行うことなく、航行の途についた。
A受審人は、機関を全速力前進にかけて4.0ノットの曳航速力で、掘り下げ水路を東行し、07時59分東灯台から350度(真方位、以下同じ。)1,100メートルの地点で、針路を113度として進行した。
A受審人は、08時05分機関を半速力前進とし、2.0ノットの曳航速力に減じ、同時07分東灯台から039度950メートルの地点において、美恵号の右舷船尾錨を投入して200度の針路としたところ、浅礁に向首するようになったが、このことに気付かないまま、機関停止、前進を繰り返しながら続航し、美恵号を左回頭させ錨鎖が張ったとき左舷船尾錨を投入することにして、同時18分錨鎖の延出を止め、左転を始めた。

ひびき丸は、左転しながら進行中、08時20分東灯台から045度720メートルの地点において、船首を045度に向けて乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力3の北東風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
乗揚の結果、後部船底に擦過傷を生じた。


(原因)
本件乗揚は、中城湾新港において、東灯台北東方の防波堤築造工事に従事する際、水路調査が不十分で、浅礁に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、中城湾新港において、東灯台北東方の防波堤築造工事に従事する場合、同防波堤北西方には浅礁が存在していることを知っていたのであるから、大尺度の海図を取り寄せて浅礁の水深を確認するなどの水路調査を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、美恵号の作業員から、とくに浅い場所はないと聞いていたので大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、浅礁に向首進行して乗り揚げ、後部船底に擦過傷を生じせしめた。






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