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2000年(平成12年)

平成12年仙審第11号
    件名
プレジャーボート第三涼風丸乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年4月13日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

上野延之
    理事官
宮川尚一

    受審人
A 職名:第三涼風丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底外板に破口を伴う凹損

    原因
針路保持不十分

    主文
本件乗揚は、針路の保持が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年5月1日04時50分
新潟県直江津港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート第三涼風丸
全長 6.99メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 70キロワット
3 事実の経過
第三涼風丸は、船内外機関を有するFRP製プレジャーモーターボートで、A受審人が1人で乗り組み、同乗者1人を乗せ、釣りの目的で、船首0.25メートル船尾0.30メートルの喫水をもって、平成11年5月1日04時45分新潟県上越市港町の保倉川河岸の係留地を発し、直江津港北方沖合の釣り場に向かった。
ところで、保倉川は、直江津港の港湾施設の南側を西方に流れ、直江津港導流堤灯台(以下「導流堤灯台」という。)南南東方1,100メートルの関川右岸に保倉川河口があり、その付近の同川に上越市川原町と同市港町を連絡する港橋及び古城橋がそれぞれ架かり、港橋より上流両岸にプレジャーモーターボートなどが多数係船されていた。A受審人は、毎年4月初めから10月末まで1箇月4回程度日曜日ごとに係留地と直江津港沖合の釣り場間の往復を繰り返していたので保倉川河口付近の水路状況及びその針路を良く知っており、また、同川を航走中、常に同川のどの辺りを航走しているか良く分かっていた。

A受審人は、発航からコックピット右舷側操縦席に座って操船に当たり、同乗者をコックピット左舷側後方に立たせ、04時47分導流堤灯台から138度(真方位、以下同じ。)1,360メートルの地点で、針路を保倉川河岸に沿う273度に定め、機関を微速力前進にかけ、4.3ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
04時49分半A受審人は、導流堤灯台から150度1,160メートルの地点に達し、保倉川右岸沿いに古城橋下を航過して少し過ぎたとき、同乗者から弁当の置き場所についてどうするかと声を掛けられ、右手に操縦ハンドルを握ったまま上半身をねじって身体を後方に向けたところ、同ハンドルが少し左にとられて左回頭を始めたが、弁当の置き場所を指示するのに気を奪われ、針路の保持を十分にすることなく、これに気付かず、徐々に左回頭しながら保倉川河口左岸に接近中、同時50分わずか前船首に迫った同岸の消波ブロックを認め、クラッチを操作したが及ばず、04時50分導流堤灯台から153度1,150メートルの地点において、船首が220度に向いたとき、原速力のまま同消波ブロックに乗り揚げた。

当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船底外板に破口を伴う凹損を生じたが、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、日出前の薄明時、保倉川を下航する際、針路の保持が不十分で、徐々に左回頭しながら保倉川河口左岸に接近したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、日出前の薄明時、保倉川を手動操舵で下航する場合、予定針路から逸脱しないよう、針路の保持を十分にすべき注意義務があった。しかるに、同人は、弁当の置き場所を指示するのに気を奪われ、針路の保持を十分にしなかった職務上の過失により、徐々に左回頭しながら保倉川河口左岸に接近して同岸の消波ブロックへの乗揚を招き、船底外板に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。






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