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2000年(平成12年)

平成11年横審第106号
    件名
貨物船伸幸丸漁船第7いけす丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年2月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

長浜義昭、猪俣貞稔、西村敏和
    理事官
小金沢重充

    受審人
A 職名:伸幸丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
C 職名:第7いけす丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
伸幸丸・・・・左舷側中央部外板に凹損
いけす丸・・・船首部を圧壊

    原因
いけす丸・・・居眠り運航防止措置不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
伸幸丸・・・・警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守 (一因)

    主文
本件衝突は、第7いけす丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路を左方に横切る伸幸丸の進路を避けなかったことによって発生したが、伸幸丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Cを戒告する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月19日03時50分
御前埼東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 貨物船伸幸丸 漁船第7いけす丸
総トン数 199トン 19.36トン
全長 55.78メートル
登録長 16.32メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 404キロワット
漁船法馬力数 150
3 事実の経過
伸幸丸は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人、B指定海難関係人ほか1人が乗り組み、空倉のまま、船首1.5メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成10年8月18日15時50分千葉港を発し、名古屋港に向かった。
A受審人は、船橋当直体制を、自らと、一等航海士及び無資格のB指定海難関係人により、単独の4時間交替としており、21時40分ごろ伊豆大島灯台の北方11海里付近で一等航海士に船橋当直を委ね、夜半に海況が落ち着いたらバラスト調整をする予定で降橋し、自室で休息した。

B指定海難関係人は、翌19日01時20分ごろ石廊埼の南方2海里付近で昇橋して船橋当直につき、03時18分御前埼灯台から091度(真方位、以下同じ。)14.1海里の地点において、針路を260度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、9.5ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、03時35分海上模様を確認するために昇橋したが、その際、日ごろB指定海難関係人に船橋当直を行わせていたので、接近する他船があれば報告してくれるものと思い、報告するよう同人に指示することなく、海上が穏やかになったのでバラスト調整作業を行うために降橋した。
B指定海難関係人は、03時40分半左舷前方3.0海里付近に、第7いけす丸(以下「いけす丸」という。)のレーダー映像を探知し、同時44分少し前御前埼灯台から095度10.1海里の地点に達したとき、左舷船首24度2.0海里に同船の白、緑2灯を視認し、同時45分同灯火を同方位1.6海里に認め、同船が前路を右方に横切り、その方位に変化がなく衝突のおそれがある態勢で互いに接近していることを知ったが、探照灯を同船に向けて点灯すればそのうち避航するものと思い、A受審人にその旨報告せず、探照灯を約3秒間隔で3回点灯して続航し、その後自船の針路を避けないで接近する同船に対し、再度探照灯を点灯したものの、警告信号を行わず、さらに間近に接近して衝突を避けるための協力動作もとらないまま進行した。

B指定海難関係人は、03時50分わずか前左舷側至近に迫ったいけす丸の白、緑2灯を認め、ようやく衝突の危険を感じ、右舵一杯、続いて機関を全速力後進にかけたが、効なく、03時50分御前埼灯台から097度9.2海里の地点において、原針路、原速力のまま、伸幸丸の左舷側中央部に、いけす丸の船首が、前方から45度の角度で衝突した。
当時、天候は曇で風力2の東北東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
A受審人は、身支度等を終えバラスト調整作業のために自室を出たころ、衝撃を感じ、ただちに昇橋して衝突を知り、事後の措置にあたった。
また、いけす丸は、静岡県静浦漁港を基地とし、網船1隻及び探索船兼火船2隻とともに船団を構成して中型まき網漁業に従事するFRP製漁獲物運搬船で、C受審人が単独で乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、同月18日16時00分同県焼津漁港(小川地区)を発し、御前埼の南東方約8海里の漁場に至り、魚群探索を開始した。

C受審人は、前日17日午後に基地を出港して夜間操業を行った後、18日朝焼津漁港(小川地区)に入港し、出港までの間に十分な睡眠をとっていた。
こうしてC受審人は、翌19日01時30分1回目の操業を開始したものの、破網したので操業を取りやめることとし、03時ごろ探索船2隻が先に帰途につき、自船は揚網を援助した後、03時30分御前埼灯台から120度8.2海里の地点において漁場を発進し、針路を035度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて11.0ノットの対地速力とし、静浦漁港へ向け帰途についた。
C受審人は、発進時から背もたれのついた椅子に腰掛けて船橋当直にあたっていたところ、03時40分ごろ気の緩みから眠気を催したが、朝までの操業予定を途中で取りやめたので疲労はたまっていないから、まさか居眠りすることはあるまいと思い、椅子から立ち上がるなり、操舵室から室外に出て外気にあたるなりして眠気を覚ますなど、居眠り運航の防止措置をとらず、やがて居眠りに陥った。

C受審人は、03時44分少し前御前埼灯台から104度8.7海里の地点において、右舷船首21度2.0海里に伸幸丸の白、白、紅3灯を視認し得る状況で、その後同船が前路を左方に横切り、その方位に変化がなく衝突のおそれがある態勢で互いに接近したが、依然居眠りをしていて、このことにも、同船が探照灯を2度ほど点灯したことにも気付かず、同船の進路を避けることができないで、原針路、原速力のまま進行中、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、伸幸丸は、左舷側中央部外板に凹損を生じ、いけす丸は、船首部を圧壊し、のちいずれも修理された。


(原因)
本件衝突は、夜間、御前埼東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、いけす丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路を左方に横切る伸幸丸の進路を避けなかったことによって発生したが、伸幸丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
伸幸丸の運航が適切でなかったのは、船長が、接近する他船があるときの報告について無資格の船橋当直者に指示しなかったことと、同当直者が、接近する他船があることを船長に報告しなかったこととによるものである。


(受審人等の所為)
C受審人は、夜間、操業を中止して御前埼東方沖合を北上中、眠気を催した場合、操舵室から室外に出て外気にあたるなりして眠気を覚ますなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、朝までの操業予定を途中で取りやめたので、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、伸幸丸と衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、前路を左方に横切る態勢の同船の進路を避けることができないまま進行して衝突を招き、伸幸丸の左舷側中央部外板に凹損を生じさせ、いけす丸の船首部を圧壊させるに至った。
以上のC受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

A受審人は、夜間、無資格者に船橋当直を行わせる場合、接近する他船があれば報告するよう指示すべき注意義務があった。しかるに、同人は、日ごろ船橋当直を行わせていたので報告するものと思い、その旨指示しなかった職務上の過失により、接近する他船があることの報告を得られず、自船を避けずに前路を右方に横切る態勢で接近するいけす丸に対して警告信号を行うことも、さらに間近に接近して衝突を避けるための協力動作をとることもできずに進行して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人が、夜間、御前埼東方沖合を西航中、前路を右方に横切る態勢のいけす丸が接近するのを認めた際、船長にその旨報告しなかったことは本件発生の原因となる。

B指定海難関係人に対しては、勧告するまでもない。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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