日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年仙審第64
    件名
漁船第11福龍丸プレジャーボート第三公洋丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年2月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

長谷川峯清、上野延之、内山欽郎
    理事官
黒田均

    受審人
A 職名:第11福龍丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第三公洋丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
福龍丸・・・右舷船首部外板に破口
公洋丸・・・船首部を圧壊、船長が2箇月の入院加療を要する右股関節脱臼骨折

    原因
福龍丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
公洋丸・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第11福龍丸が、見張り不十分で、前路で停留する第三公洋丸を避けなかったことによって発生したが、第三公洋丸が、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年2月17日07時40分
青森県大畑港北方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第11福龍丸 プレジャーボート第三公洋丸
総トン数 4.6トン 2.7トン
全長 7.58メートル
登録長 9.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 102キロワット
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
第11福龍丸(以下「福龍丸」という。)は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、ます引き釣り漁の目的で、船首0.3メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成11年2月17日06時20分青森県大間港を発し、同県尻屋埼沖合の漁場に向かった。
発航後A受審人は、操舵室中央の舵輪の後方に立って操舵と見張りに当たり、大間埼と弁天島間の水道を通航したのち、06時38分少し前大間埼灯台から096度(真方位、以下同じ。)2.3海里の地点で、針路を120度に定め、機関を全速力前進の回転数毎分2,500より少し落とした同毎分2,200にかけ、11.8ノットの対地速力(以下「速力」という。)で自動操舵により進行した。

ところで、福龍丸は、操舵室外の船首側下部に機関室があり、同室天井に設けられた煙突やベンチレータなどの構造物が、操舵室前面に設けられた3枚の角窓のうち、中央の同窓の前方の見通しを妨げており、舵輪の後方に立って操船すると、正船首から左右それぞれ約20度に死角が生じていた。A受審人は、平素、この死角を補う見張りを行うため、船首を左右に振ったり、身体を動かして操舵室前面の左右各角窓に取り付けられている旋回窓越しに前方の見張りに当たっていた。
07時35分A受審人は、大畑港第1東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)から002度2.9海里の地点に差し掛かったとき、右舷船首25度1,300メートルに陸岸に沿って操業中の同業種漁船5ないし6隻を認め、この漁船群を大きく右方に替わすよう、自動操舵のまま針路を110度に転じ、同じ速力で続航した。

07時36分半A受審人は、東防波堤灯台から007度2.8海里の地点に達したとき、正船首1,300メートルのところに、遊漁のために停留している第三公洋丸(以下「公洋丸」という。)を視認することができる状況となり、その後同船に向けて衝突のおそれがある態勢で接近したが、漁船群を約900メートル離して替わせるようになり、周囲を一瞥しただけでこれより前路に他船はいないものと思い、船首を左右に振るなどして船首死角を補う見張りを十分に行うことなく、このことに気づかず、漁具の仕掛け作りを始め、公洋丸を避けないまま続航中、07時40分東防波堤灯台から022度2.7海里の地点において、福龍丸は、原針路、原速力のまま、その右舷船首が公洋丸の船首部に前方から25度の角度で衝突した。
当時、天候は曇で風力4の南西風が吹き、潮侯は下げ潮の中央期で、視界は良好であった。

また、公洋丸は、出力36キロワットの予備の船外機を装備する中央操舵室型FRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、ます引き釣り遊漁の目的で、船首0.3メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、同日06時30分青森県大畑港を発し、同港沖合2ないし3海里の釣場に向かった。
ところで、公洋丸は、有効な音響による信号を行うことができる笛を操舵室に備え、いつでも使用できるようになっていた。また、B受審人は、港から釣場の往復には操舵室で遠隔操縦する船外機を使用し、釣場に着けば船尾で直接操作する予備の船外機に切り替え、遊漁中には同機を常時運転状態にしており、引き釣り中には約2.5ノットの速力で仕掛けを引き、同仕掛けの取り込みから再投入までに要する約15分間は機関を中立にして停留するが、いつでも機関を使用できる状況であった。

07時25分少し前B受審人は、引き釣りをしながら周囲を見回したところ、陸岸寄りに数隻の操業中の漁船を認めたが、自船に接近する他船を認めなかったので、釣りの仕掛けと釣獲物の取り込み作業を始めることとし、同時25分前示衝突地点で、風を左舷に受けて船首を315度に向け、機関を中立にして停留したのち、船尾甲板左舷舷側に立って同作業を始めた。
07時36分半B受審人は、同地点で、釣りの仕掛けの取り込みを終えて引き続き投入作業を行っているとき、左舷船首25度1,300メートルのところに自船に船首を向けた福龍丸を視認できる状況となり、その後衝突のおそれがある態勢で接近したが、同作業を始める前に周囲を一瞥しただけで、自船に接近する他船はいないものと思い、周囲の見張りを十分に行うことなく、このことに気づかず、笛を吹くなど有効な音響による注意喚起信号を行うことも、機関を使用して同船との衝突を避けるための措置をとることもしないまま、同じ船首方位で停留を続け、投入する仕掛けに注目して同作業を続行中、同時40分少し前船首至近に福龍丸を初めて認めたものの、何するいとまもなく、前示のとおり衝突した。

衝突の結果、福龍丸は右舷船首部外板に破口を生じ、公洋丸は船首部を圧壊したが、のちそれぞれ修理された。また、B受審人は甲板上に投げ出されて2箇月の入院加療を要する右股関節脱臼骨折を負った。

(原因)
本件衝突は、青森県大畑港北方沖合において、漁場に向けて東行する福龍丸が、見張り不十分で、前路で遊漁のために停留中の公洋丸を避けなかったことによって発生したが、公洋丸が、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、大畑港北方沖合を漁場に向けて東行する場合、船首死角で前方が見づらい状況であったから、前路で遊漁のために停留中の公洋丸を見落とさないよう、船首を左右に振るなどして船首死角を補う見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、周囲を一瞥して前路に他船はいないものと思い、船首死角を補う見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路で停留中の公洋丸に気づかず、同船を避けないまま進行して公洋丸との衝突を招き、福龍丸の右舷船首部外板に破口及び公洋丸の船首部に圧壊をそれぞれ生じさせ、B受審人に右股関節脱臼骨折を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

B受審人は、大畑港北方沖合において、遊漁のために機関を中立として停留する場合、接近する福龍丸を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、周囲を一瞥して自船に接近する他船はいないものと思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、自船に向けて接近する福龍丸に気づかず、笛を吹くなど有効な音響による注意喚起信号を行うことも、機関を使用して同船との衝突を避けるための措置をとることもしないまま停留を続けて衝突を招き、前示のとおり両船に損傷を生じさせ、自ら負傷するに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION