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2000年(平成12年)

平成11年函審第75号
    件名
漁船第五十八榮宝丸防波堤衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年2月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

酒井直樹
    理事官
堀川康基

    受審人
A 職名:第五十八榮宝丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
右舷船首外板及びブルワークを圧壊、球状船首に亀裂を伴う凹損、甲板員が下顎骨骨折

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年7月1日00時20分
北海道余市港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十八榮宝丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 154キロワット
3 事実の経過
第五十八榮宝丸は、刺網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が二男のB甲板員と乗り組み、平成11年6月30日20時50分北海道余市港魚市場船だまりを発し、同日22時ごろ高島岬の北方3海里ばかりの漁場に至り、前日に設置しておいた1連の長さ約1.3海里の底刺網を揚網したのち、投網準備していた1連の底刺網を設置し、ひらめ約100キログラムを獲て、船首0.20メートル船尾1.20メートルの喫水をもって、同日23時20分日和山灯台から350度(真方位、以下同じ。)3.4海里の地点を発進し、帰途についた。
発進後A受審人は、単独船橋当直に就いて高島岬の北岸に沿って西行し、23時36分日和山灯台から310度4.6海里の地点に達したとき、針路を余市港北防波堤灯台にほぼ向首する235度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。

ところでA受審人は、いつも23時ごろ出漁し、前示漁場で底刺網の揚網作業と設置作業を行ったのち翌日の03時ごろ帰港し、漁獲物の水揚げと出漁準備作業を終えたのち07時ごろ帰宅して出漁直前まで休息をとっており、発航当日は、荒天が予想されたことから20時30分に自宅を出て、いつもより少し早めに出漁したものの、疲労や睡眠不足は感じられなかった。
定針後A受審人は、操舵室前面中央の操舵スタンドの後方に立ったまま前方の見張りに当たっていたところ、翌7月1日00時08分余市湾に進入し、余市港北防波堤灯台が正船首少し右方2.2海里に接近したとき、前路に他船の灯火を認めなかった安心感と気の緩みから眠気を催してきた。しかしながら同人は、あと12分ばかりで余市港北防波堤突端に達するから、それまでは居眠りすることはあるまいと思い、操舵室前面窓を開けて風に当たったり操舵を手動に切り替えるなどの居眠り運航防止措置をとることなく、操舵スタンドに寄りかかって、その上面に両手をついたまま前路を見張っているうち、うとうとと居眠りを始めた。

こうして第五十八榮宝丸は、居眠り運航となり、余市港北防波堤突端付近に向首したまま続航中、00時20分余市港北防波堤灯台から164度100メートルの地点において、第五十八榮宝丸の右舷船首が原針路、全速力のまま余市港北防波堤突端付近の消波ブロックに、後方から66度の角度で衝突した。
当時、天候は雨で風力2の南東風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、視界は良好であった。
衝突の結果、右舷船首外板及びブルワークを圧壊し、球状船首に亀裂を伴う凹損を生じ、B甲板員が下顎骨骨折を負った。


(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、北海道高島岬北方漁場から余市港魚市場船だまり向け余市湾を西行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、余市港北防波堤突端付近に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独船橋当直に就いて北海道高島岬北方漁場から余市港魚市場船だまり向け余市湾を自動操舵により西行中、前路に他船の灯火を認めなかった安心感と気の緩みから眠気を催した場合、操舵室の前面窓を開けて風に当たったり操舵を手動に切り替えるなどの居眠り運航防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、あと12分ばかりで余市港北防波堤突端に達するから、それまでは居眠りすることはあるまいと思い、操舵室前面窓を開けて風に当たったり操舵を手動に切り替えるなどの居眠り運航防止措置をとらなかった職務上の過失により、操舵スタンドに寄りかかって、その上面に両手をついたまま居眠りに陥り、余市港北防波堤突端付近に向首したまま進行して衝突を招き、第五十八榮宝丸の右舷船首外板及びブルワークを圧壊させ、球状船首に亀裂を伴う凹損を生じさせ、甲板員に下顎骨骨折を負わせるに至った。






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