日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年那審第31号
    件名
貨物船なは漁船浦崎丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年1月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

清重隆彦、金城隆支、花原敏朗
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:なは船長 海技免状:三級海技士(航海)
B 職名:浦崎丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
なは・・・損傷なし
浦崎丸・・・船首部を大破

    原因
浦崎丸・・・見張り不十分、船員の常務(新たな危険、衝突回避措置)不遵守(主因)
なは・・・警告信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、浦崎丸が、見張り不十分のまま発進し、無難に航過する態勢のなはに対し、新たな衝突の危険のある関係を生じさせたばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、なはが、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Bを戒告する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年4月15日17時40分
沖縄県辺戸岬西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 貨物船なは 漁船浦崎丸
総トン数 990トン 3.5トン
全長 99.45メートル 10.55メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 2,942キロワット 128キロワット
3 事実の経過
なはは、専ら大阪港と沖縄県那覇港との間でコンテナの輸送に従事する船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか8人が乗り組み、空コンテナ50個を載せ、船首2.9メートル船尾4.8メートルの喫水をもって、平成11年4月15日14時20分那覇港を発し、大阪港に向かった。
A受審人は、16時00分残波岬西方で二等航海士から船橋当直を引継ぎ、同時30分備瀬埼灯台から270度(真方位、以下同じ。)1.2海里の地点で、針路を038度に定め、引き続き機関を全速力前進に掛け、17.0ノットの対地速力で自動操舵により進行し、17時20分辺戸岬灯台から277度12.8海里の地点に達したとき左舷船首方5.7海里のところに、停留中の浦崎丸を認め、その動静を監視して北上を続けた。

そして、A受審人は、17時39分辺戸岬灯台から302度1.0海里の地点に達したとき、それまで停留していた浦崎丸が、左舷船首41度680メートルのところから発進したのを認め、その後、自船の前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近することに気付いたが、自船の前方に漁具を入れていて注意を促すために接近してくるものと思い、警告信号を吹鳴することなく、同じ針路及び速力で続航し、同時39分半少し過ぎ浦崎丸が避航の気配を示さないまま接近するので衝突の危険を感じ、右舵一杯とした。
しかし、なははその効なく、17時40分辺戸岬灯台から304度11.0海里の地点において、右回頭中、船首が080度を向いたとき、その左舷後部に浦崎丸の右舷船首が、後方から47度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の東南東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。

また、浦崎丸は、一本釣り漁等に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、そでいか旗流し漁に従事する目的で、船首0.3メートル船尾1.3メートルの喫水で、同日05時00分沖縄県宜名真漁港を発し、同県伊平屋島東方の漁場に至って操業を開始した。
17時39分B受審人は、そでいか90キログラムを獲って帰途につくことにし、辺戸岬灯台から304度11.2海里の地点で針路を127度に定めて発進しようとしたとき、右舷船首50度680メートルのところに北上するなはを視認できる状況であったが、操業中、僚船も先に帰港し、周囲に他船を認めていなかったので大丈夫と思い、周囲の見張りを十分に行うことなく、同船の存在に気付かないまま発進した。発進後、B受審人は、機関を全速力前進に掛け、14.5ノットの対地速力で自動操舵とし、操舵室右舷側の椅子に腰を掛けて顔を洗い始めたので、なはに依然気付かず、同船と新たな衝突の危険のある関係を生じさせたうえ、右転するなどして衝突を避けるための措置を取らなかった。

浦崎丸は、同じ針路及び速力で続航し、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、なはには損傷がなく、浦崎丸は船首部を大破したが、のち、修理された。


(原因)
本件衝突は、辺戸岬西方沖合において、浦崎丸が発進する際、見張り不十分のまま発進し、無難に航過する態勢のなはに対し、新たな衝突の危険のある関係を生じさせたばかりか、右転するなど衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、なはが、停留していた浦崎丸が発進し、新たな衝突の危険のある関係を生じさせて接近する際、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである


(受審人の所為)
B受審人は、辺戸岬西方沖合において、発進する場合、無難に航過する態勢のなはを見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、操業中、僚船も先に帰港し、周囲に他船を認めなかったので大丈夫と思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、なはの存在に気付かないまま発進し、新たな衝突の危険のある関係を生じさせたばかりか、右転するなどして衝突を避けるための措置をとることなく進行して同船との衝突を招き、浦崎丸の船首部を大破させるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、辺戸岬西方沖合を北上中、左舷前方で停留していた浦崎丸が発進し、新たな衝突の危険のある関係を生じさせて接近するのを認めた場合、自船の存在を認めさせるよう、警告信号を行うべき注意義務があった。ところが、同人は、浦崎丸が自船の前方に漁具を入れていて、注意を促すために接近してくるものと思い、警告信号を行わなかった職務上の過失により、浦崎丸との衝突を招き、前示のとおり損傷を生じさせるに至った。

以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION