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2000年(平成12年)

平成11年門審第83号
    件名
プレジャーボートマウント ムーン突堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年1月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

清水正男、阿部能正、供田仁男
    理事官
今泉豊光

    受審人
A 職名:マウント ムーン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部を圧壊

    原因
船位確認不十分

    主文
本件突堤衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月8日20時43分
博多港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートマウント ムーン
登録長 5.70メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 66キロワット
3 事実の経過
マウント ムーン(以下「マ号」という。)は、船外機を装備したFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人3人を乗せ、花火大会見物の目的で、船首、船尾とも0.1メートルの喫水をもって、平成10年8月8日19時15分福岡県福岡市の名柄川に面した同市西区小戸1丁目の係留地を発し、今津湾の同区今宿沖合に向かった。
A受審人は、19時40分今宿沖合に至って漂泊したところ、花火大会開催日の勘違いに気付き、博多港周遊の目的に切り替え、20時15分今津湾を発進し、博多港第3区に向かい、福岡市早良区百道浜の沖合に達して福岡タワー、福岡ドームなどの夜景を見物したのち、更に同ドームに近づいて見るために樋井川に入ることとし、同川の河口から上流に向かい、同時32分福岡ドームの西方に当たる地点で漂泊した。

ところで、樋井川の河口は、百道浜の北東端から333.5度(真方位、以下同じ。)方向に延びる長さ200メートルの百道地区東突堤(以下「東突堤」という。)と、同市中央区地行浜の北西端から337度方向に延びる同長さの地行地区西突堤(以下「西突堤」という。)とにより形成され、幅は両突堤の先端で約140メートル、両突堤の付け根付近で約130メートルであった。また、東突堤の先端には河口の西側を示す赤色標識灯が、西突堤の先端には同東側を示す緑色標識灯がそれぞれ設置されていた。
A受審人は、見物を終え、次に樋井川から福岡湾に出て博多漁港の入口に架かる荒津大橋付近に向かうこととし、発進して右転したのち、20時42分福岡タワーの基部から075度580メートルの地点において、針路を河口の中央に向く332度に定め、機関を半速力前進にかけ、7.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。

A受審人は、20時42分半わずか過ぎ福岡タワーの基部から062度570メートルの地点に達したとき、左舷船首21度200メートルのところに東突堤の先端の赤色標識灯及び右舷船首21度同距離に西突堤の先端の緑色標識灯をそれぞれ認めることができる状況であったが、右舷前方1,780メートルのところに博多港鵜来島北灯浮標の灯火が見えたことから既に樋井川の河口から福岡湾に出たものと思い、両標識灯を確かめるなどして船位を十分に確認することなく、針路を同灯浮標に向く024度に転じた。
転針したのちA受審人は、潮汐によって海面上の高さ1.6メートルとなっていた西突堤に向かって続航したが、これに気付かないまま進行中、20時43分わずか前、船首部に座っていた同乗者の叫び声を聞き、異状を知って機関を中立としたが効なく、20時43分マ号は、原針路、原速力のまま、福岡タワーの基部から056度640メートルの地点に当たる西突堤先端から120メートルの突堤西側側面に47度の角度で衝突した。

当時、天候は晴で風力1の西南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
突堤衝突の結果、マ号は船首部を圧壊したが、のち修理された。


(原因)
本件突堤衝突は、夜間、博多港第3区の樋井川において、同川の河口から福岡湾に出る際、船位の確認が不十分で、西突堤に向かって転針して進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、博多港第3区の樋井川において、東突堤と西突堤とにより形成される同川の河口から福岡湾に出る場合、突堤に衝突することのないよう、河口を示す両突堤先端の標識灯を確かめるなどして船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、右舷前方に博多港鵜来島北灯浮標の灯火が見えたところから既に樋井川の河口から福岡湾に出たものと思い、船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、西突堤に向かって転針して進行し、同突堤との衝突を招き、マ号の船首部を圧壊させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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