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2000年(平成12年)

平成11年広審第51号
    件名
油送船第十八長栄丸漁船照丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年1月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

横須賀勇一、黒岩貢、織戸孝治
    理事官
田邉行夫

    受審人
A 職名:第十八長栄丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)
B 職名:照丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
長栄丸・・・左舷ハンドレールを破損
照丸・・・船首を破損、機関室に浸水

    原因
照丸・・・居眠り運航防止措置不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
長栄丸・・・動静監視不十分、警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、照丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路を左方に横切る第十八長栄丸を避けなかったことによって発生したが、第十八長栄丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Bを戒告する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年3月4日20時40分
豊後水道
2 船舶の要目
船種船名 油送船第十八長栄丸 漁船照丸
総トン数 142トン 3.2トン
全長 37.42メートル 10.86メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 441キロワット
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
第十八長栄丸(以下「長栄丸」という。)は、船尾船橋型の油送船で、A受審人ほか2人が乗り組み、A重油300キロリットルを積み、船首2.3メートル船尾3.4メートルの喫水をもって、平成10年3月4日14時50分愛媛県松山港を発し、速吸瀬戸を経由して、同県八幡浜港に向かった。
A受審人は、佐田岬灯台の手前から単独で操舵操船にあたり、航行中の動力船の灯火を表示し、同日20時30分佐田岬灯台から094度(真方位、以下同じ。)8.0海里の地点に達したとき、八幡浜港西方海域に向け針路を050度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、9.5ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。

定針したころA受審人は、左舷船首7度3.3海里のところに、前路を右方に横切る照丸の白、緑2灯を初めて視認したが、いちべつしただけで無難に航過するものと思い、同船に対する格別の注意を払うことなく続航した。
20時37分A受審人は、佐田岬灯台から089度8.9海里に達したとき、同船が同一方位のまま1.0海里に接近し、その後衝突のおそれのある態勢で接近する状況となったが、動静監視を十分に行っていなかったので、このことに気付かず、そのころ自船の存在を示すつもりで同船に向けしばらく探照灯を照射したものの、警告信号を行わないまま進行した。
20時39分A受審人は、佐田岬灯台から088度9.0海里の地点に達したとき、照丸が、依然、方位の変化のないまま、600メートルのところに接近したが、右転するなど衝突を避けるための協力動作をとることなく進行中、同時40分わずか前左舷船首至近に迫った照丸を認め、あわてて汽笛を吹鳴し、機関停止としたが効なく、長栄丸は、20時40分佐田岬灯台から087度9.2海里の地点において、原針路、原速力のまま、同船の左舷後部に照丸の船首が前方から15度の角度で衝突した。

当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期であった。
また、照丸は、一本つり漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が単独で乗り組み、船首0.45メートル船尾1.20メートルの喫水をもって、鯛釣り用の餌とりの目的で、同日16時ごろ大分県保戸島を発し、佐田岬東方沖合の漁場に向かった。
ところで、B受審人は、盛漁期には毎月1回第2土曜日が休漁日となっており、時化や小潮で漁のない時以外は、毎日16時から21時ごろまで、餌取りのため操業し、早朝から午前中にかけて鯛釣り漁に従事し、21時ごろから翌朝の04時ごろまでの間、自宅で数時間休息することの繰り返しで、ひどく疲労を覚えるといった状況ではなかった。
こうして、B受審人は、同日20時20分ころ餌とりを終え帰途につくこととし、同時30分佐田岬灯台から080度10.4海里の地点に達したとき、航行中の動力船の灯火を表示し、保戸島北方に向け針路を215度に定め手動操舵により、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの速力で進行した。

発進後、20時33分B受審人は、佐田岬灯台から082度10.0海里の地点に達したとき、操舵室床から機関室の点検を終え一通りの作業が終了したころ、ひと安心して操舵室後部の出入口の敷居に座ったところ眠気を覚えるようになってきたが、まさか居眠りに陥ることはないと思い、立ち上がり外気に当たって眠気を払うなど居眠り運航の防止措置をとることなく、同敷居に腰をかけて続航中、間もなく居眠りに陥り、同時37分佐田岬灯台から085度9.5海里の地点に達したとき、右舷船首8度1.0海里のところに前路を左方に横切る長栄丸の灯火を視認でき、その後衝突のおそれのある態勢で接近する状況となったが、居眠りをしていて、同船に気付かなかった。
20時39分照丸は、長栄丸と600メートルに接近したが、同船の進路を避けないまま進行し、前示のとおり衝突した。

衝突の結果、長栄丸は、左舷ハンドレールを破損し、照丸は、船首を破損し、船首隔壁の電線の貫通部から機関室に浸水した。

(原因)
本件衝突は、夜間、豊後水道北東方において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、照丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路を左方に横切る長栄丸の進路を避けなかったことによって発生したが、長栄丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
B受審人は、夜間、単独で船橋当直にあたり佐田岬東方海域を南西進中、一通りの作業を終えひと安心して操舵室出入口の敷居に座り眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか居眠りすることはないと思い、立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、長栄丸の進路を避けることなく進行して同船と衝突を招き、照丸の船首部外板に凹損、機関室浸水及び長栄丸の左舷ハンドレールに曲損を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、夜間、佐田岬東方海域を北東進中、自船の前路を右方に横切る態勢で接近する照丸の灯火を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、十分な動静監視を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、いちべつしただけで無難に航過するものと思い、十分な動静監視を行わなかった職務上の過失により、照丸が衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、警告信号を行うことも、さらに接近して衝突を避けるための協力動作をとることもなく進行して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。

以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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