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2000年(平成12年)

平成11年広審第30号
    件名
旅客船マリーンシャトル漁船第2清丸衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年3月9日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

織戸孝治
    理事官
尾崎安則

    受審人
A 職名:マリーンシャトル船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第2清丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
マ号・・・右舷前部に破口、船長人及び乗客の2人が打撲、骨折、捻挫及び擦過傷
清丸・・・船首船底部に破口、船長及び乗組員の2人が打撲、骨折、捻挫及び擦過傷

    原因
清丸・・・見張り不十分、海交法の航法(避航動作)不遵守(主因)
マ号・・・見張り不十分、警告信号不履行、海交法の航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、航路外から航路に入る第2清丸が、見張り不十分で、航路をこれに沿って航行しているマリーンシャトルの進路を避けなかったことによって発生したが、マリーンシャトルが、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Bを戒告する。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年9月4日21時05分
瀬戸内海 来島海峡航路
2 船舶の要目
船種船名 旅客船マリーンシャトル 漁船第2清丸
総トン数 14トン 3.1トン
全長 13.86メートル
登録長 9.07メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 529キロワット
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
マリーンシャトル(以下「マ号」という。)は、海上タクシーと通称され、主に来島海峡周辺で旅客の運送に従事する旅客定員43人のFRP製旅客船で、A受審人が1人で乗り組み、乗客2人を乗せ、船首0.35メートル船尾1.25メートルの喫水をもって、平成10年9月4日21時ごろ来島海峡のほぼ中央部にある愛媛県馬島漁港を発し、同県今治港に向かった。
A受審人は、発航時から法定の灯火を表示し、21時04分少し前来島海峡航路西水道内のウズ鼻灯台から288度(真方位、以下同じ。)500メートルの地点で、針路を156度に定め、折からの南流に乗じて26.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、舵輪後方に設けられた椅子に腰を掛けて、手動操舵により進行した。

A受審人は、21時04分来島白石灯標から037度620メートルの地点に達し、来島海峡航路をこれに沿って航行中、右舷船首29度930メートルのところに第2清丸(以下「清丸」という。)の表示する白、紅の2灯を視認でき、その後同船と衝突のおそれのある態勢で互いに接近していたが、側に居た乗客と談話しながら操船していたので、見張りが不十分となり、清丸に気付かず、警告信号を行わず、更に接近しても減速するなど衝突を避けるための協力動作をとることなく続航中、21時05分来島白石灯標から109度725メートルの地点で、マ号は、原針路、原速力のまま、その右舷前部が清丸の右舷船首部に後方から35度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の末期で付近には約3ノットの南流があった。
また、清丸は、来島海峡周辺で刺網漁業に従事するFRP製漁船で、操業のため、B受審人ほか2人が乗り組み、船首0.4メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、同日21時02分ごろ今治市大浜漁港を発し、馬島沖の漁場に向かった。

B受審人は、発航時から法定の灯火を表示して操舵操船に当たり、21時03分来島白石灯標から178度560メートルの地点で、針路を来島海峡航路に向く064度に定め、10.1ノットの速力で、手動操舵により進行した。
21時04分B受審人は、来島白石灯標から146度520メートルの地点で、左舷船首59度930メートルのところにマ号の表示する白、緑の2灯を視認でき、来島海峡航路外から航路に入りその後同船と衝突のおそれのある態勢で互いに接近していたが、当時馬島に発生していた山火事に気を奪われ、見張りが不十分となり、マ号に気付かず、転舵するなどして同船の進路を避けることなく、同時05分少し前増速して折からの南流の影響により29.8ノットの速力で、わずかに左舵を取り続航中、舵輪左斜め下方のレーダー画面を見たとき左舷船首方近距離に迫ったマ号に気付き、急いで左舵一杯とするも及ばず、清丸は、原速力のまま011度を向首して前示のとおり衝突した。

衝突の結果、マ号は右舷前部に破口等を生じ、清丸は船首船底部に破口等を生じ、A受審人及び乗客のC及びD並びにB受審人及び乗組員のE及びFがそれぞれ打撲、骨折、捻挫及び擦過傷を負った。

(原因)
本件衝突は、夜間、来島海峡航路で、航路外から航路に入る清丸が、見張り不十分で、航路をこれに沿って航行しているマ号の進路を避けなかったことによって発生したが、マ号が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
B受審人は、夜間、来島海峡航路外から同航路に入る場合、航路をこれに沿って航行しているマ号を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、当時馬島に発生していた山火事に気を奪われ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、マ号に気付かず、同船の進路を避けることなく進行して、マ号との衝突を招き、同船の右舷前部に破口等及び清丸の船首船底部に破口等を生じさせ、A受審人及びマ号乗客2人並びにB受審人及び清丸乗組員2人を負傷させるに至った。
A受審人は、夜間、来島海峡航路をこれに沿って航行する場合、同航路外から航路に入る清丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、乗客との談話に気を奪われ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、清丸に気付かず、警告信号を行わず、減速するなど衝突を避けるための協力動作をとることなく進行して、同船との衝突を招き、両船に前示の損傷及び乗客、乗組員に負傷をそれぞれ生じさせるに至った。


参考図






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