日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年函審第65号
    件名
漁船第15盛漁丸防波堤衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年1月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

酒井直樹
    理事官
堀川康基

    受審人
A 職名:第15盛漁丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
左舷船首外板に大破口、船首魚倉内に浸水

    原因
船位確認不十分

    主文
本件防波堤衝突は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年11月26日04時50分
北海道釧路港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第15盛漁丸
総トン数 19.36トン
登録長 14.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 130
3 事実の経過
第15盛漁丸は、刺し網漁業に従事する木造漁船で、A受審人ほか3人が乗り組み、平成10年11月25日21時00分北海道釧路港東区の入船町岸壁を発し、同日23時ごろ同港の南方10海里ばかりの漁場に至り、操業ののち、かれい約60キログラムを獲て、船首0.80メートル船尾2.50メートルの喫水をもって、翌26日03時20分同漁場を発進し、帰途についた。
発進後A受審人は、単独船橋当直に就いて釧路港に向け北上し、04時42分釧路埼灯台から234度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点に達したとき、針路を釧路港東区南副防波堤灯台の少し西方に向く003度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、8.0ノットの対地速力で進行した。

ところで釧路港東区の入口は、同区北防波堤の南端、同区南防波堤の北端及び同北端付近から293度の方向に延びる長さ約170メートルの同区南副防波堤に囲まれており、同防波堤の西端には釧路港東区南副防波堤灯台が設けられ、これより293度490メートルの方位線を航路南側とする幅約230メートルの釧路港東区入口航路が設けられ、当時、同航路南側の西端から同灯台の方向に長さ約110メートル幅約14メートルの沖防波堤が築造中で、その工事区域の各所には赤旗及び黄色点滅灯を備えた数個の仮設灯浮標が設置され、この沖防波堤の東端と釧路港東区南副防波堤灯台との間の距離は390メートルであった。
A受審人は、釧路港南方漁場から同港東区に帰航する際は、釧路港東区南副防波堤の突端と前示築造中の沖防波堤の東端との間から釧路港東区入口航路に入航する近回りの進路をとっており、夜間は陸上灯火に紛れて築造中の沖防波堤の工事区域を示す仮設灯浮標が見えにくくなる状況であることを知っていたので、レーダーを最小レンジとして船位を確認し、釧路港東区南副防波堤灯台を右舷側に60メートルばかり離して釧路港東区入口航路に入航していた。

A受審人は、04時45分、釧路港東区南副防波堤灯台から187度1,130メートルの地点に達したとき、左舷船首方900メートルばかりに、釧路港東区入口航路を出航して南下中の1隻の漁船を認め、これと右舷を対して航過することとし、針路を347度に転じたところ、前示築造中の沖防波堤の西端付近に向首した。しかし、同人は、釧路港東区南副防波堤灯台を目測しただけで同沖防波堤の東端が替わるものと思い、右舷方に替わってゆく前示漁船に気を取られ、レーダーにより船位を確認しなかったので、このことに気付かず、同時49分半、釧路港東区南副防波堤灯台から269度380メートルの地点に達し、同沖防波堤東端付近が右舷船首方150メートルに接近したとき、自動操舵装置の針路設定つまみで同沖防波堤の東方に向け小きざみに右転中、04時50分釧路港東区南副防波堤灯台から293度395メートルの地点において、058度に向いた第15盛漁丸の左舷船首が全速力のまま同沖防波堤の東端付近に後方から55度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期で、視界は良好であった。
衝突の結果、左舷船首外板に大破口を生じ、船首魚倉内に浸水した。


(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、北海道釧路港南方漁場から同港東区向け帰航中、同港東区南副防波堤の西端と同港東区入口航路南側西端付近に築造中の沖防波堤の東端との間から同区入口航路に入航する際、船位の確認が不十分で、同沖防波堤の東端付近に転針進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、北海道釧路港南方漁場から同港東区向け帰航中、同港東区南副防波堤の西端と同港東区入口航路南側の西端付近に築造中の沖防波堤の東端との間から同区入口航路に入航する場合、陸上灯火に紛れて同沖防波堤の工事区域を示す仮設灯浮標が見えにくくなる状況であることを知っていたのであるから、同沖防波堤に向首進行することのないよう、レーダーを最小レンジとして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、釧路港東区南副防波堤灯台を目測しただけで同沖防波堤の東端が替わるものと思い、右舷方に替わってゆく1隻の漁船に気を取られ、レーダーを最小レンジとするなどして船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、築造中の沖防波堤東端付近に転針進行して衝突を招き、第15盛漁丸の左舷船首外板に大破口を生じさせ、船首魚倉内に浸水させるに至った。






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION