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2000年(平成12年)

平成11年門審第117号
    件名
押船白鴎被押はしけ鵬貨物船セレンダ カーサ衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年3月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

供田仁男、清水正男、平井透
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:白鴎船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
白鴎・・・・・・損傷なし
鵬・・・・・・・左舷側後部海砂採取装置のダビットに曲損、同部甲板室側壁に亀裂を伴う凹損
セ号・・・・・・右舷船首部ブルワークに曲損、同部外板に擦過傷

    原因
セ号・・・・・・見張り不十分、船員の常務(新たな危険)不遵守(主因)
白鴎押船列・・・灯火・形象物表示不適切、動静監視不十分、警告信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文

受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年11月22日03時29分
周防灘下関南東水道
2 船舶の要目

3 事実の経過

A受審人は、下関南東水道と関門海峡中央水道(以下「中央水道」という。)の両推薦航路線の転針地点に位置する下関南東水道第1号灯浮標(以下「第1号灯浮標」という。)付近で同航路線の北側に出るつもりで、02時40分苅田港北防波堤灯台から068度(真方位、以下同じ。)2.7海里の地点において、針路を同灯浮標に向かう353度に定め、機関を全速力前進にかけて9.6ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で周防灘を北上した。

03時19分少し前A受審人は、部埼灯台から152度2.7海里の地点に達したとき、左舷船首13度2.8海里に中央水道を東行するセレンダ カーサ(以下「セ号」という。)のレーダー映像を初めて探知するとともに、その緑灯を視認し、同号が下関南東水道に向かっていることを知った。
このころA受審人は、右舷前方に前路を左方に横切る第三船を視認したことから、これを避航することに気をとられ、第1号灯浮標付近で転針するセ号と衝突のおそれが生じることがないかどうか判断できるよう、同号に対する動静監視を十分に行うことなく、第三船の船尾を替わすこととして直ちにわずかな右舵をとり、その後舵中央とわずかな右舵とを繰り返して緩やかに右転しながら北上を続けた。
03時26分少し前A受審人は、部埼灯台から134度1.7海里の地点に至り、船首が013度を向いていたとき、左舷船首39度1,300メートルに接近したセ号が第1号灯浮標に並航して転針を開始し、緩やかに右転を続ける自船の前路に向首する態勢となって新たな衝突のおそれを生じさせたのを認め得る状況となった。

しかし、A受審人は、依然としてセ号に対する動静監視を行っていなかったので、このことに気付かないまま、警告信号を行わず、03時27分少し前部埼灯台から129度1.7海里の地点に達し、セ号が左舷前方750メートルに接近したが、なおも同号の動静を監視せず、直ちに行きあしを止めるなど衝突を避けるための措置をとることなく続航した。

当時、天候は雨で風力2の西風が吹き、潮候はほぼ転流時にあたり、視界は良好であった。

また、セ号は、船尾船橋型の貨物船で、オーストラリア人船長Bほか中国人船員27人が乗り組み、空倉のまま、船首3.6メートル船尾7.0メートルの喫水をもって、同月16日20時25分大韓民国仁川港を発し、大分県津久見港に向かった。
B船長は、越えて22日01時48分関門海峡西口で水先人を乗せ、同海峡を通航し、03時12分部埼灯台から330度1,175メートルの地点において、水先人を下ろしたのち、自ら操船の指揮をとり、二等航海士及び見習い航海士を見張りに就け、甲板手を手動操舵にあたらせて、針路を115度に定め、機関をそれまでの極微速力前進から全速力前進にかけ、法定灯火を表示して中央水道を東行した。
間もなくB船長は、速力が全速力の10.0ノットに整定し、03時20分わずか前部埼灯台から066度900メートルの地点に至ったところで、針路を下関南東水道に向かう推薦航路線にほぼ沿うよう146度に転じ、第1号灯浮標を左舷前方に見て南下した。



(原因)


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、周防灘において、第1号灯浮標に向かう針路で北上中、左舷前方の中央水道にセ号を視認し、同号が下関南東水道に向かっていることを知った場合、同灯浮標が両水道の推薦航路線の転針地点に位置していたのだから、その付近で転針するセ号と衝突のおそれが生じることがないかどうか判断できるよう、同号に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、セ号を視認したころ右舷前方に前路を左方に横切る第三船を視認したことから、これを避航することに気をとられ、セ号に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同号が第1号灯浮標付近で自船の前路に向けて転針して新たな衝突のおそれが生じたことに気付かないまま、警告信号を行わず、更に接近しても直ちに行きあしを止めるなど衝突を

避けるための措置をとらずに進行して衝突を招き、鵬の左舷側後部海砂採取装置のダビットに曲損と同部甲板室側壁に亀裂を伴う凹損を、セ号の右舷船首部ブルワークに曲損と同部外板に擦過傷をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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