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2000年(平成12年)

平成11年門審第125号
    件名
漁船仁勝丸プレジャーボートニッセン衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年3月9日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

清水正男
    理事官
新川政明

    受審人
A 職名:仁勝丸船長 海技免状:二級小型船舶操縦士(5トン限定)
B 職名:ニッセン船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
仁勝丸・・・・船首のペイントを剥離
ニッセン・・・右舷側前部外板及びキャビン右舷側前部を損傷、修理費の関係から廃船処理

    原因
仁勝丸・・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
ニッセン・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、仁勝丸が、見張り不十分で、前路で錨泊中のニッセンを避けなかったことによって発生したが、ニッセンが、見張り不十分で、注意喚起信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年6月12日21時05分
山口県萩港北西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船仁勝丸 プレジャーボートニッセン
総トン数 1.93トン
全長 10.73メートル
登録長 8.89メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 110キロワット
漁船法馬力数 40
3 事実の経過
仁勝丸は、船体中央部に機関室囲壁を有し、船尾部に舵柄を装備したいか一本つり漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.25メートル船尾0.70メートルの喫水をもって、平成10年6月12日16時30分山口県萩市の萩漁港(越ケ浜)を発し、同市羽島北方沿岸の漁場に向かった。
A受審人は、17時00分羽島北方の漁場に至って操業を行い、漁獲が得られなかったことから萩市尾島南西方沿岸の漁場に移動することとし、白色全周灯及び両色灯各1個を掲げ、20時55分萩大島港赤穂瀬南防波堤灯台から234度(真方位、以下同じ。)2.4海里の地点を発進し、尾島の南西端に向けて針路を315度に定め、機関を全速力前進にかけて8.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。

ところで、仁勝丸は、機関室囲壁後部の後部甲板において、船尾部に装備した舵柄を持って操舵するようになっており、また、後部甲板には甲板上の高さが50センチメートルのいすが置かれていたが、同いすに腰を掛けると同囲壁に視界が妨げられて前方が見えにくいことから、平素、A受審人は、立ち上がったり、同囲壁の左右から前方をのぞくなどして周囲の見張りを行っていた。
定針したのちA受審人は、後部甲板上に置かれたいすに腰を掛けて操舵に当たり、左舷前方に数隻のいか釣り漁船の灯火を認め、21時02分虎ケ埼灯台から300度2.1海里の地点に達したとき、正船首740メートルのところに、錨泊しているニッセンの白1灯並びに作業灯及び集魚灯を視認でき、その後同船に向首したまま衝突のおそれがある態勢で接近するのを認め得る状況であったが、既に認めた左舷前方の漁船群以外に他船はいないものと思い、いすから立ち上がったり、機関室囲壁の左右から前方をのぞくなどして前路の見張りを十分に行うことなく、このことに気付かず、ニッセンを避けないまま続航中、21時05分虎ケ埼灯台から303度2.5海里の地点において、仁勝丸は、原針路、原速力のまま、その船首がニッセンの右舷側前部に直角に衝突した。

当時、天候は曇で風力1の北東風が吹き、視界は良好であった。
また、ニッセンは、船体中央部にキャビンを有し、モーターホーン及び船内外機を装備したFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人3人を乗せ、遊漁の目的で、船首、船尾とも0.3メートルの喫水をもって、同日19時00分萩漁港(中小畑)を発し、萩港の北西方約3海里に位置する羽島礁付近の釣り場に向かった。
B受審人は、19時15分前示衝突地点付近に至り、機関を中立運転とし、重さ10キログラムの四爪錨を水深約28メートルの海中に投じ、直径13ミリメートルの合成繊維製錨索を45メートル延ばして錨泊し、船首を北東方に向けて魚釣りを開始した。
20時00分ごろB受審人は、日没後の薄明となったので、キャビン上部のマストに白色全周灯1個を掲げ、更に甲板を照射する作業灯1個及び集魚用の油灯1個を点灯した。また、同受審人は、付近海域はいか釣りなどの漁船や遊漁船が多く通航する海域であることを知っており、自船の西南方向に視認した数隻の漁船の明かりが、いか釣り漁船の灯火であることを認めた。

B受審人は、前部甲板の各舷及び後部甲板の右舷側に同乗者を配し、自らは後部甲板左舷側のハッチ上に左舷方を向いて座り、竿を用いて魚釣りを行い、21時02分前示衝突地点において船首を045度に向けていたとき、右舷正横740メートルのところに、自船に向かって来航する仁勝丸の白、紅、緑3灯を視認でき、その後自船に向首したまま衝突のおそれがある態勢で接近するのを認め得る状況であったが、魚釣りに夢中になって周囲の見張りを十分に行うことなく、このことに気付かず、接近する仁勝丸に対し、注意喚起信号を行わないまま錨泊を続けた。
21時05分少し前B受審人は、同乗者の知らせで右舷正横至近に迫った仁勝丸を初めて認めたが、どうすることもできず、ニッセンは、船首を045度に向けたまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、仁勝丸は船首のペイントを剥離し、ニッセンは右舷側前部外板及びキャビン右舷側前部を損傷したが、修理費の関係から廃船処理された。


(原因)
本件衝突は、夜間、山口県萩港沖合において、仁勝丸が、漁場に向けて北上中、見張り不十分で、前路で錨泊中のニッセンを避けなかったことによって発生したが、ニッセンが、見張り不十分で、注意喚起信号を行わなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、山口県萩港沖合において、漁場に向けて北上する場合、前路の他船を見落とすことのないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、既に認めた左舷前方の漁船群以外に他船はいないものと思い、いすから立ち上がったり、機関室囲壁の左右から前方をのぞくなどして前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路で錨泊中のニッセンを見落とし、同船を避けることなく進行して同船との衝突を招き、仁勝丸の船首ペイント剥離を、ニッセンの右舷側前部外板及びキャビン右舷側前部に損傷を生じさせるに至った。
B受審人は、夜間、山口県萩港沖合において、魚釣りのため、漁船や遊漁船が多く通航する海域で錨泊する場合、接近する他船を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、魚釣りに夢中になり、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、接近する仁勝丸に気付かず、注意喚起信号を行うことなく錨泊を続けて同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。


参考図






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