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2000年(平成12年)

平成11年広審第14号
    件名
油送船さんこう丸貨物船徳鳳丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年3月23日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

黒岩貢、杉忠志、中谷啓二
    理事官
田邉行夫

    受審人
A 職名:さんこう丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
B 職名:徳鳳丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
さんこう丸・・・右舷船首部外板に凹損
徳鳳丸・・・・・左舷船尾部外板に凹損
交通艇・・・・・数箇所の損傷

    原因
さんこう丸・・・狭視界時の航法(速力、レーダー)不遵守
徳鳳丸・・・・・狭視界時の航法(速力、信号、レーダー)不遵守

    主文
本件衝突は、さんこう丸が、視界制限状態における運航が適切でなかったことと、徳鳳丸が、視界制限状態における運航が適切でなかったこととによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年2月13日14時51分
徳山下松港
2 船舶の要目
船種船名 油送船さんこう丸 貨物船徳鳳丸
総トン数 2,939トン 498トン
全長 103.20メートル 66.82メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 2,942キロワット 735キロワット
3 事実の経過
さんこう丸は、油製品の輸送に従事する船尾船橋型油送船で、A受審人ほか11人が乗り組み、灯油1,000キロリットル、軽油1,030キロリットル及びガソリン3,040キロリットルを積載し、船首4.8メートル船尾6.8メートルの喫水をもって、平成10年2月13日14時15分徳山下松港を発し、金沢港に向かった。
A受審人は、同日10時45分荷役終了したものの、霧により視界不良となったためそのまま3時間半ほど待機していたところ、ようやく視界が回復して出港したもので、二等航海士をレーダー監視に、甲板手を手動操舵にそれぞれ就かせて操船の指揮に当たり、自らもときどきレーダーを見ながら徳山湾を南下し、14時31分岩島灯台から049度(真方位、以下同じ。)3.1海里の地点に達して蛇島に並航したとき、針路を徳山湾口に向く235度に定め、機関を港内全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。

14時45分A受審人は、岩島灯台から027度1,500メートルの地点に達したとき、再び視程100メートルの視界制限状態となったため、自動吹鳴により霧中信号を開始したが、速力を9.0ノットに落としただけで安全な速力まで減じず、レーダーに映る前後の同航船4隻に注意しながら続航した。
14時46分A受審人は、岩島灯台から023度1,270メートルの地点に達したとき、右舷船首53度1,100メートルのところに針路が交差して湾口に向首する態勢の徳鳳丸のレーダー映像を認めることができ、その後方位がほとんど変わらず、著しく接近することを避けることができない状況となったが、ときどきレーダーを見ていたものの、前示同航船にのみ気を取られ、レーダーによる見張りを十分に行っていなかったので、徳鳳丸の接近に気付かず、針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも、必要に応じて行きあしを止めることもなく進行した。

14時50分A受審人は、レーダー監視中の二等航海士から右舷船首70度200メートルに船らしき映像を認めたとの報告を受け、直ちに機関停止とし、ちょうど湾外へ向ける転針点に達していたことから左舵10度をとって左転を開始したところ、まもなく徳鳳丸の船体を右舷船首至近に認め、左舵一杯としたが及ばず、14時51分さんこう丸は、岩島灯台から300度730メートルの地点において、208度に向首して8.0ノットの速力となったとき、その右舷船首部が、徳鳳丸の左舷船尾部に後方から10度の角度で衝突した。
当時、天候は霧で風はほとんどなく、視程は100メートルで、潮候は下げ潮の末期であった。
また、徳鳳丸は、化学薬品の輸送に従事する船尾船橋型ケミカルタンカーで、B受審人ほか4人が乗り組み、液体苛性ソーダ990トンを積載し、船首3.7メートル船尾4.3メートルの喫水をもって、同日11時30分徳山下松港を発し、一旦、仙島東方で投錨して燃料油を積み込んでいたところ、霧により視界不良となったことから13時ごろ同作業終了後そのまま待機し、視界が回復した14時25分抜錨して大阪港に向かった。

B受審人は、一等航海士を見張りに、甲板手を手動操舵にそれぞれ就かせ、自らはレーダーを監視しながら操船の指揮に当たり、14時44分少し過ぎ岩島灯台から343度1.1海里の地点に達したとき、針路を徳山湾口に向く179度に定め、機関を微速力前進にかけ、7.5ノットの速力で進行したところ、同時45分再び視程100メートルの視界制限状態となったが、安全な速力にすることも霧中信号を行うこともなく、3海里レンジとしたレーダーにより探知した前路の同航船4隻と湾外からの反航船1隻に注意しながら続航した。
14時46分B受審人は、岩島灯台から339度1,640メートルの地点に達したとき、左舷船首70度1,100メートルのところに針路が交差して湾口に向かう態勢のさんこう丸のレーダー映像を認めることができ、その後方位がほとんど変わらず、著しく接近することを避けることができない状況となったが、レーダーを見ていたものの、前路の同航船や反航船にのみ気を取られ、レーダーによる見張りを十分に行っていなかったので、さんこう丸の接近に気付かず、針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも、必要に応じて行きあしを止めることもなく進行した。

14時49分少し前B受審人は、岩島灯台から327度1,050メートルの地点で針路を188度に転じ、依然、さんこう丸の接近に気付かないまま続航中、同時51分少し前左舷ウイングで見張りをしていた一等航海士の「船がぶつかる。」の声であわてて右舵一杯としたが及ばず、徳鳳丸は、船首が198度を向首したとき原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、さんこう丸は右舷船首部外板に凹損を生じ、徳鳳丸は左舷船尾部外板に凹損を生じたほか、交通艇に数箇所の損傷を生じたが、それぞれのち修理された。


(原因)
本件衝突は、両船が、霧により視界制限状態となった徳山湾口付近を南下中、さんこう丸が、安全な速力に減じず、かつ、レーダーによる見張り不十分で、徳鳳丸と著しく接近することを避けることができない状況となった際、針路を保つことができる最小限度の速力に減じず、必要に応じて行きあしを止めなかったことと、徳鳳丸が、安全な速力に減ずることも霧中信号を行うこともなく、かつ、レーダーによる見張り不十分で、さんこう丸と著しく接近することを避けることができない状況となった際、針路を保つことができる最小限度の速力に減じず、必要に応じて行きあしを止めなかったこととによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、霧により視界制限状態となった徳山湾口付近を南下する場合、右舷方を同航する徳鳳丸を見落とさないよう、レーダーによる見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、ときどきレーダーを見ていたものの、前後の同航船にのみ気を取られ、レーダーによる見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、徳鳳丸の接近に気付かず、著しく接近することを避けることができない状況となった際、針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも、必要に応じて行きあしを止めることもなく徳鳳丸との衝突を招き、自船の右舷船首部及び徳鳳丸の左舷船尾部にそれぞれ凹損を生じさせ、同船の交通艇を損傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

B受審人は、霧により視界制限状態となった徳山湾口付近を南下する場合、左舷方を同航するさんこう丸を見落とさないよう、レーダーによる見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、レーダーを見ていたものの、前路の同航船や反航船にのみ気を取られ、レーダーによる見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、さんこう丸の接近に気付かず、著しく接近することを避けることができない状況となった際、針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも、必要に応じて行きあしを止めることもなくさんこう丸との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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