日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年長審第41号
    件名
作業船第六十三大港丸引船列防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年2月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

坂爪靖、安部雅生、保田稔
    理事官
畑中美秀

    受審人
A 職名:第六十三大港丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
102号・・・・右舷船首に凹損
南防波堤・・・突端部のコンクリート製壁面などに損傷

    原因
港内の給油突堤付近の状況確認不十分

    主文
本件防波堤衝突は、第六十三大港丸が、土運船を港外から港内の給油突堤に曳航するにあたり、同突堤付近の状況確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年12月8日19時30分
長崎県館浦漁港
2 船舶の要目
船種船名 作業船第六十三大港丸 土運船第102大港号
総トン数 19トン 826トン
全長 13.50メートル 45.00メートル
幅 5.60メートル 13.00メートル
深さ 1.96メートル 4.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 625キロワット
3 事実の経過
第六十三大港丸(以下「大港丸」という。)は、航行区域を限定沿海区域とする鋼製引船で、A受審人が1人で乗り組み、第102大港号(以下「102号」という。)ほか3隻とともに船団を組み、平成9年12月初めから長崎県北松浦郡館浦漁港を基地とし、同県平戸市白石漁港の浚渫工事に伴って同漁港から同市飯盛漁港への土砂運搬に従事していたところ、同月8日館浦漁港内で102号に給油することになった。
ところで、館浦漁港は、生月島南東岸に位置して港口を東南東方に設け、内側の北防波堤及び南防波堤並びに外側の新北防波堤及び新南防波堤によって内外二重に囲まれ、それぞれ幅80メートル、95メートルの防波堤入口を構成し、生月港館浦南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)から245度(真方位、以下同じ。)175メートルのところを基点とし、これから055度方向に50メートル延びる給油突堤を設置し、当時、同基点から北北西方に延びる岸壁には多数の漁船が船尾係留しており、南防波堤と新南防波堤との間の奥行き140メートル幅115メートルのコの字型水域の新南防波堤基部付近の岸壁が船団の係留地として使用されていた。

また、102号は、船尾部にクレーン1基を備えた非自航型鋼製土運船で、作業員1人が乗り組み、船首0.80メートル船尾1.60メートルの喫水をもって、空倉のまま、他の引船に曳かれて19時00分館浦漁港の港外に至り、漂泊して大港丸の到着を待った。
A受審人は、強風、波浪注意報が発表されている状況下、館浦漁港の港外で漂泊中の102号を係留地近くの給油突堤まで曳航するために係留地を発することになり、同漁港内は狭く、同突堤で給油するのは初めてのうえ、同突堤付近は南防波堤の陰となって係留地から見えなかったが、同突堤付近に操船の支障となるような他船はいないものと思い、事前に関係先に問い合わせたり、自ら同突堤に赴いたりして同突堤付近が他船に占有されていないかどうかを確かめるなどの同突堤付近の状況確認を十分に行うことなく、同突堤付近が多数の漁船に占有されていることを知らないまま、船首0.75メートル船尾2.25メートルの喫水をもって、19時00分係留地を発し、102号に向かった。

19時20分A受審人は、南防波堤灯台の南東方620メートルばかりの地点で、長さ20メートルの曳航索を102号の船首に取り、館浦漁港の港内に向け、機関を3.0ノットの港内全速力前進にかけて手動操舵で進行した。
19時25分A受審人は、外側の防波堤入口を通過したとき、速力を減じて2.5ノットの平均速力とし、同時27分わずか前北防波堤突端を右舷側10メートルに通過し、その後、同防波堤西側沿いに続航して同時28分102号の船尾が同防波堤突端から10メートルばかり内側に進入し、南防波堤灯台を170度130メートルに見るようになったとき、左舵を取るとともに同船に船尾錨を投入させ、同錨鎖を80メートルばかり延出した状態で左回頭を始めたところ、給油突堤北側の水域には多数の漁船が着岸していて同突堤に着岸できない状況であることを知った。
A受審人は、102号を給油突堤へ着岸させることをあきらめ、係留地に向かうこととして左回頭中、19時29分少し過ぎ同船の船首が南方を向いたものの、回頭惰力が思いのほかなく、同船の船首が南防波堤に著しく接近する状況となったので、同船を回頭させようと急ぎ機関を全速力前進として北方に向けて曳航したが、効なく、19時30分南防波堤灯台から315度4.5メートルの地点において、150度に向首した102号の右舷船首がほぼ原速力のまま、南防波堤突端に衝突した。

当時、天候は晴で風力4の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、強風、波浪注意報が発表されていた。
衝突の結果、102号は、右舷船首に凹損を生じ、南防波堤は、突端部のコンクリート製壁面などに損傷を生じた。


(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、強風、波浪注意報が発表されている状況下、長崎県館浦漁港において、大港丸が、102号を港外から港内の給油突堤に曳航するにあたり、同突堤付近の状況確認が不十分で、同船を曳航して狭い港内に入り、同突堤付近が漁船で占有されていたため、係留地に引き返そうとして、南防波堤突端付近の狭いところで回頭したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、強風、波浪注意報が発表されている状況下、長崎県館浦漁港において、港外で漂泊中の102号を港内の係留地近くの給油突堤まで曳航するために係留地を発する場合、同漁港内は狭く、同突堤で給油するのは初めてのうえ、同突堤付近は南防波堤の陰となって係留地から見えなかったから、同船を同突堤に安全に着けることができるよう、事前に関係先に問い合わせたり、自ら同突堤に赴いたりして同突堤付近が他船に占有されていないかどうかを確かめるなどの同突堤付近の状況確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、給油突堤付近に操船の支障となるような他船はいないものと思い、同突堤付近の状況確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同突堤付近が漁船に占有されていることを知らないまま港外に向かい、102号を曳航して港内に入ったのち、同突堤に着けられないことを知り、係留地に引き返そうとして南防波堤突端付近の狭いところで回頭して同船と南防波堤との衝突を招き、102号の右舷船首に凹損を、南防波堤突端のコンクリート製壁面などに損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION