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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年6月26日12時53分 備後灘東部 2 船舶の要目 船種船名
油送船旭光丸 貨物船第八興安丸 総トン数 485トン 177トン 登録長 58.37メートル 47.33メートル 機関の種類
ディーゼル機関 デイーゼル機関 出力 882キロワット
478キロワット 3 事実の経過 旭光丸は、専ら瀬戸内海及び九州沿岸の各港間でガソリン等の輸送に従事する可変ピッチプロペラを装備した船尾船橋型油タンカーで、A受審人ほか4人が乗り組み、ガソリン等800キロリットルを積載し、船首2.8メートル船尾3.9メートルの喫水をもって、平成9年6月26日11時15分水島港を発し、博多港に向かった。 A受審人は、発航操船に引き続いて船橋当直に就き、12時19分半少し前六島灯台から048度(真方位,以下同じ。)4.88海里の地点で、針路を218度に定め、機関を全速力前進にかけ10.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、自動操舵により航行中、同時41分少し過ぎ左舷船首53度600メートルばかりのところに第八興安丸(以下「興安丸」という。)を初認した。 12時46分A受審人は、六島灯台から105度1,700メートルの地点に達し、興安丸に後続して西行するつもりで、針路を253度に転じたとき、同船を右舷船首31度260メートルのところに視認し、わずかな交角を持って両船の針路が交差していて、衝突のおそれがある態勢で接近していたが、一瞥(いちべつ)して同船に無難に後続するものと思い、その後興安丸の動静監視を十分に行わず、同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかるまでその進路を避けないまま進行した。 こうしてA受審人は、椅子に腰をかけて続航中、右舷方の六島西側海域から、自船に向け来航する第三船の漁船を視認し、椅子から立ち上がって手動操舵に切り替えて同船の動向を見守るうち、同船が更に接近するので、12時52分半ごろ自船の船首至近を左舷側に替わった興安丸に気付かないまま、左舵10度をとった後、船首方を見たところ同船を船首至近に認め、慌てて舵中央、機関を後進にするも及ばず、旭光丸は、12時53分六島灯台から201度1,150メートルの地点で、ほぼ原速力のまま223.5度を向首したその左舷船首が興安丸の右舷船尾に後方から25度の角度で衝突した。 当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、付近には微弱な西流があった。 また、興安丸は、専ら瀬戸内海及び九州沿岸の各港間で鋼材の輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、B受審人ほか1人が乗り組み、鋼材約510トンを積載し、船首2.6メートル船尾3.3メートルの喫水をもって、同日05時20分東播磨港を発し、関門港に向かった。 B受審人は、11時ごろ瀬戸大橋付近の備讃瀬戸東航路内で船橋当直に就き、同航路から備讃瀬戸北航路に入りこれに沿って航行中、12時08分少し前板持鼻灯台から319度900メートルの地点で、針路を248.5度に定め、機関を全速力前進にかけ9.0ノットの速力で進行した。 B受審人は、12時39分わずか前右舷船尾80度1,000メートルばかりのところに南西進する旭光丸を初認したが、同船を右舷正横より後方に見たことから、旭光丸が自船を避航するものと思い、その後同船に対する動静監視を行うことなく、船首方の見張りを行いながら続行した。 12時46分B受審人は、六島灯台から106度1,440メートルの地点に達したとき、旭光丸が左舷船尾36度260メートルばかりのところで右転して、わずかな交角を持って針路を交差させ、その後衝突のおそれのある態勢で接近するのを認め得る状況にあったが、依然、動静監視が不十分で、このことに気付かず、警告信号を行わず、更に接近するに及んで転舵するなどの衝突を避けるための協力動作をとることなく進行中、興安丸は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。 衝突の結果、旭光丸は左舷船首部に凹損を生じ、興安丸は右舷船尾部に凹損を生じたが、のち修理された。
(原因) 本件衝突は、備後灘東部海域において、興安丸を追い越す旭光丸が、動静監視不十分で、興安丸の進路を避けなかったことによって発生したが、興安丸が、動静監視不十分で、旭光丸に対し警告信号を行わず、更に接近するに及んで転舵するなどの衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為) A受審人は、単独で船橋当直に就き、備後灘東部海域を西行中,右舷船首方に同航する興安丸を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、一瞥して同船に無難に後続するものと思い、その動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、興安丸の進路を避けないまま進行して衝突を招き、旭光丸の左舷船首部に凹損及び興安丸の右舷船尾部に凹損を生じさせるに至った。 B受審人は、単独で船橋当直に就き、備後灘東部海域を西行する場合、後方に旭光丸の存在を知っていたのであるから、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、旭光丸が自船を避航するものと思い、その動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、旭光丸に対し警告信号を行わず、更に接近するに及んで転舵するなどの衝突を避けるための協力動作をとらないまま進行して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
参考図
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