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2000年(平成12年)

平成11年神審第37号
    件名
貨物船第十二八幡丸貨物船マクタン ブリッジ衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年2月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

西田克史、佐和明、工藤民雄
    理事官
竹内伸二

    受審人
A 職名:第十二八幡丸一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)(履歴限定)
    指定海難関係人

    損害
八幡丸・・・左舷船首外板に凹損
マ号・・・右舷前部外板に凹損

    原因
マ号・・・見張り不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
八幡丸・・・警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、マクタン ブリッジが、見張り不十分で、前路を左方に横切る第十二八幡丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第十二八幡丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年12月26日00時17分
和歌山県日ノ御埼西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十二八幡丸 貨物船マクタン ブリッジ
総トン数 499トン 5,354トン
全長 78.15メートル 119.43メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 735キロワット 4,413キロワット
3 事実の経過
第十二八幡丸(以下「八幡丸」という。)は、国内諸港間において鋼材等の輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、船長B及びA受審人ほか3人が乗り組み、鋼管996トンを積載し、船首2.3メートル船尾4.0メートルの喫水をもって、平成9年12月25日01時10分千葉港を発し、広島港に向かった。
A受審人は、翌26日00時00分紀伊日ノ御埼灯台から203度(真方位、以下同じ。)2.9海里の地点において、前直者と交替して単独の船橋当直に就き、引き続き針路を320度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、13.0ノットの対地速力で、航行中の動力船の灯火を表示のうえ、鳴門海峡に向けて進行した。

定針したとき、A受審人は、左舷正横後5度1.5海里のところに、マクタン ブリッジ(以下「マ号」という。)の白、白、緑3灯を初めて視認し、同船が進路をやや交差させているものの、自船より少しばかり速力が速いことから、そのうち左舷側を無難に航過していくものと思い、しばらくマ号の動静監視を続けていたところ、同船がわずかに右転しながら次第に自船に接近する状況であることを知った。
00時12分A受審人は、紀伊日ノ御埼灯台から257度2.9海里の地点に達したとき、マ号を左舷船首81度1,500メートルに見るようになり、その後同船が前路を右方に横切り、その方位が変わらず衝突のおそれがある態勢で接近してくることを認め、同時14分半同船との距離が750メートルとなったとき、避航を促すつもりで、同船に向けて探照灯で5秒程度の照射を2度繰り返した。

しかし、マ号が避航の動作をとらなかったが、A受審人は、探照灯を照射したので自船に気付いているはずで、そのうち自船の進路を避けるものと思い、警告信号を行うことも、更に間近に接近したとき大きく右転するなど衝突を避けるための協力動作もとらないまま続航し、00時16分マ号との距離が300メートルとなったとき、ようやく衝突の危険を感じて機関を半速力前進に減じた。
このとき、自室にいたB船長は、機関音の変化に気付いて急ぎ昇橋し、左舷側至近にマ号を見て驚き、手動操舵に切り替えて右舵一杯とし、続いて機関を中立としたが及ばず、00時17分紀伊日ノ御埼灯台から273度3.5海里の地点において、八幡丸は、右回頭中の船首が350度を向いたとき、10.0ノットの行き脚をもって、その左舷船首が、マ号の右舷前部に後方から10度の角度で衝突した。

当時、天候は晴で風力1の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期にあたり、視界は良好であった。
また、マ号は、中華人民共和国と本邦間においてコンテナ輸送に従事する船首船橋型貨物船で、船長C及び二等航海士Dほかフィリピン共和国人18人が乗り組み、コンテナ117個968トンを積載し、船首3.81メートル船尾4.19メートルの喫水をもって、同月25日12時00分名古屋港を発し、神戸港に向かった。
D二等航海士は、翌26日00時03分紀伊日ノ御埼灯台から220度4.0海里の地点で、前直者と交替して操舵手1人とともに船橋当直に就き、引き続き326度の針路で、航行中の動力船の灯火を表示のうえ北上した。
当直に就いたころ、D二等航海士は、左舷船首方に南下中の反航船数隻を視認し、その後これらの動静に注目していたところ、00時10分ごろ反航船が1ないし2海里に近づいたことから、左舷側に余裕を持って替わすつもりで、少し右舵をとって徐々に右転を始めた。

00時12分D二等航海士は、紀伊日ノ御埼灯台から253度3.7海里の地点で、反航船を十分に替わし終えたとき、通航する予定の友ケ島水道に向け、針路を000度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、15.0ノットの対地速力で進行した。
定針したとき、D二等航海士は、右舷船首59度1,500メートルのところに、前路を左方に横切る八幡丸を視認でき、その後その方位が変わらず衝突のおそれがある態勢で接近したが、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、八幡丸の存在に気付かず、早期に同船の進路を避けないまま続航した。
そして、D二等航海士は、友ケ島水道に向かったことをC船長に報告するため、操舵手を船長室に赴かせ、自らは海図室に入って水先人乗船地点に到着する時刻の計算に取りかかり、八幡丸の探照灯照射や同船の接近に依然気付かずにいるうち、マ号は、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。

衝突の結果、八幡丸は、左舷船首外板に凹損を、マ号は、右舷前部外板に凹損などを生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、夜間、和歌山県日ノ御埼西方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、北上中のマ号が、見張り不十分で、前路を左方に横切る八幡丸の進路を避けなかったことによって発生したが、八幡丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独で船橋当直に就いて和歌山県日ノ御埼西方沖合を北上中、前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近するマ号が、避航動作をとらないまま間近に接近するのを認めた場合、大きく右転するなど衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、探照灯を2度照射したので自船に気付いているはずで、そのうちマ号が自船の進路を避けるものと思い、間近に接近したとき衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、マ号との衝突を招き、八幡丸の左舷船首外板及びマ号の右舷前部外板にそれぞれ凹損などを生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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