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2000年(平成12年)

平成11年長審第89号
    件名
交通船竹島丸係船柱衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年9月7日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

森田秀彦、平野浩三、河本和夫
    理事官
弓田邦雄

    受審人
A 職名:竹島丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部を圧壊

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年5月27日00時27分
長崎港
2 船舶の要目
船種船名 交通船竹島丸
総トン数 18トン
全長 16.55メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 507キロワット
3 事実の経過
竹島丸は、長崎港と長崎県西彼杵郡高島港間の旅客輸送に従事するFRP製交通船で、A受審人がほか1人と乗り組み、高島港06時35分発の始発便から長崎港18時30分発の最終便まで1日8往復の運航に連日就航していた。
A受審人は、平成10年5月26日長崎港発の最終便の運航終了後、船舶所有者との事業に関する会議のため、1人で高島港から長崎港に引き返して、20時ごろから23時30分ごろまで会議に出席したのち、朝からの運航に備えて高島港に帰ることとし、翌27日00時10分船首0.8メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、長崎港元船岸壁を発し、高島港に向かった。

A受審人は、発航時からいすに腰掛けて操舵と見張りに当たり、機関を半速力前進にかけ、13ノットの対地速力として長崎港内の係船ブイや係留船などに注意を払いながら進行し、00時24分半わずか過ぎ長崎港口防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から097度(真方位、以下同じ。)1,340メートルの地点に達したとき、針路を三菱重工業株式会社長崎造船所香焼工場に接航する246度に定めて機関をほぼ全速力前進にかけ、20.0ノットの対地速力で、手動操舵によって続航した。
定針後間もなくA受審人は、前夜の長時間の会議で疲れ気味であったことと、穏やかな天候で周囲に他船を見かけなくなったことから気がゆるみ、眠気を催すようになったが、まさか居眠りに陥ることはないものと思い、いすから立ち上がって身体を動かすなど居眠り運航の防止措置をとることなく、依然いすに腰掛けて操舵に当たっているうちいつしか居眠りに陥り、その後保針を行わず、わずかに左転しながら進行中、00時27分竹島丸は船首が235度に向いたとき、防波堤灯台から178度870メートルの地点において、その右舷船首が同造船所香焼工場北側岸壁西端の係船柱の南東面に原速力で衝突した。

当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
衝突の結果、竹島丸は船首部を圧壊したが、のち修理され、係船柱に損傷はなかった。


(原因)
本件衝突は、夜間、長崎港内を航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、造船所の係船柱に向かって進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、いすに腰掛けて長崎港内を航行中、前夜の長時間の会議で疲れ気味であったことと、穏やかな天候で周囲に他船を見かけなくなったことから気がゆるみ、眠気を催すようになった場合、いすから立ち上がって身体を動かすなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに同人は、まさか居眠りに陥ることはないものと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥って造船所の係船柱との衝突を招き、船首部を圧壊させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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