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2000年(平成12年)

平成11年門審第35号
    件名
貨物船日福丸貨物船ナンハイ衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年9月1日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

佐和明、原清澄、相田尚武
    理事官
坂爪靖

    受審人
A 職名:日福丸一等航海士 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
日福丸・・・・船首材に小凹損
ナンハイ・・・船尾右舷側ブルワークに曲損

    原因
日福丸・・・・動静監視不十分、追い越しの航法(避航動作)不遵守(主因)
ナンハイ・・・見張り不十分、警告信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、ナンハイを追い越す日福丸が、動静監視不十分で、その進路を避けなかったことによって発生したが、ナンハイが、見張り不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月21日18時02分
鹿児島湾
2 船舶の要目
船種船名 貨物船日福丸 貨物船ナンハイ
総トン数 471トン 929トン
全長 68.95メートル
登録長 56.14メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 735キロワット 919キロワット
3 事実の経過
日福丸は、船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか7人が乗り組み、雑貨145トンを積載し、船首2.60メートル船尾4.08メートルの喫水をもって、平成10年8月21日16時20分鹿児島県鹿児島港を発し、同県奄美大島名瀬港に向かった。
16時45分ごろ出航配置を終えて昇橋したA受審人は、船長から引き継いで単独の船橋当直に就き、17時30分ごろ知林島灯台の北方3.6海里ばかりのところで左舷前方約2.5海里にナンハイを初めて視認し、同船に後方から接近する状況にあることを知ったものの、同船も自船と同様、知林ケ島の東方で針路をおよそ180度(真方位、以下同じ。)として鹿児島湾口に向かう態勢となるので、いずれ同船を左舷側に追い越すことができるものと思い、その後の動静に留意しなかった。

こうしてA受審人は、17時47分半知林島灯台から065度1.1海里の地点に達したとき、針路を180度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて12.1ノットの対地速力で進行した。
定針時A受審人は、左舷船首35度1.2海里のところにナンハイを視認でき、その後、互いの進路が交差しているうえ、同船の方位が明確に変わらないまま追い越す態勢で接近したが、動静監視を十分に行わないで同船がすでに左舷側正横付近に替わっているものと思い、定針地点をレーダーで求めて操舵室左舷側後部にある海図台で後方を向いて海図に記入し、引き続いて航海日誌の記載を始めた。
17時57分A受審人は、知林島灯台から142度1.7海里の地点に達したとき、ナンハイが左舷船首34度約800メートルに接近していたが、依然同船の動静監視を行わないまま海図台に向かっていて、このことに気付かず、同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかるまでその進路を避けることなく続航した。

18時02分少し前A受審人は、GPSプロッターにより18時00分の船位を求めて海図に記入し終え、ふと振り向いたところ、前方至近にナンハイを認め、あわてて右舵20度をとって機関を停止したが効なく、18時02分知林島灯台から156度2.6海里の地点において、190度を向首した日福丸の船首部が、ナンハイの右舷船尾付近に後方から30度の角度をもって衝突した。
当時、天候は曇で風力3の南西風が吹き、視界は良好であった。
また、ナンハイは、船尾船橋型の貨物船で、船長B、一等航海士Cほか6人が乗り組み、くず鉄1,000トンを載せ、船首3.60メートル船尾4.70メートルの喫水をもって、同日15時50分鹿児島港を発し、大韓民国浦項港に向かった。
C一等航海士は、16時00分から船橋当直に就いて鹿児島湾を南下し、17時45分知林島灯台から093度1.9海里の地点に達したとき、針路を200度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて8.5ノットの対地速力で進行した。

17時47分半C一等航海士は、知林島灯台から105度1.8海里の地点に達したとき、日福丸が右舷正横後35度1.2海里のところで針路を右に転じ、その後同船が自船を追い越す態勢で接近したが、後方の見張り不十分でこのことに気付かないまま続航した。
17時59分C一等航海士は、日福丸が衝突のおそれがある態勢で右舷正横後33度500メートルに接近していたが、依然後方の見張りが不十分で、このことに気付かないまま、警告信号を行わないで進行するうち、18時00分レーダーで右舷後方400メートルばかりに同船の映像を初めて認め、後方を振り向いて同船の様子を伺ったところ、自船を追い越す同船に避航の気配が見られず衝突の危険を感じ、18時01分半左舵15度をとって回頭中、船首が160度を向いたとき、原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、日福丸は、船首材に小凹損を、ナンハイは、船尾右舷側ブルワークに曲損をそれぞれ生じ、のちナンハイは修理された。


(原因)
本件衝突は、両船が鹿児島湾を南下中、ナンハイを追い越す日福丸が、動静監視不十分で、その進路を避けなかったことによって発生したが、ナンハイが、見張り不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、鹿児島湾内を湾口部に向けて南下中、前路に同じく湾口部に向けて南下するナンハイを視認し、これに接近する状況であることを知った場合、同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかるまでその進路を避けることができるよう、その後の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、ナンハイが自船の左舷側を無難に替わるものと思い、その後の動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同船の進路を避けることなく進行して同船との衝突を招き、ナンハイの船尾右舷側ブルワークに曲損を、日福丸の船首材に小凹損を、それぞれ生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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