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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年7月19日14時40分 大阪府せんなん里海公園沖合 2 船舶の種類 船種船名
プレジャーボートレッツ 全長 2.53メートル 機関の出力 電気点火機関 出力
55キロワット 3 事実の経過 レッツは、川崎重工業株式会社製のJH750Fと称するFRP製2人乗り水上オートバイで、A受審人が知人の船舶所有者から借り、レジャーの目的で、単独で乗り組み、平成10年7月19日09時00分大阪府阪南市貝掛海岸を発し、同海岸の南西方約2,500メートルのせんなん里海公園箱作海水浴場沖合に向かった。 ところで、箱作海水浴場の沖合約100メートルには、下荘港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から249.5度(真方位、以下同じ。)1,040メートルの地点を南西端として、ほぼ海岸と平行の055度方向に、消波ブロックを積み重ねた高さ2メートル幅10メートルを有する長さ100メートルの離岸堤(以下「離岸堤(A)」という。)、長さ150メートルの離岸堤(以下「離岸堤(B)」という。)及び長さ100メートルの離岸堤が、約40メートルの開口を挟んで一列に設置されていた。 レッツは、ステアリングハンドルバー(以下「ハンドル」という。)の右グリップにスロットルレバーが備えられ、同レバーを握ると増速するようになっており、ガソリンの消費量を押さえるために、アイドリング回転数が低目に調整されていた。 A受審人は、09時05分箱作海水浴場沖合に到着したのち、レッツに乗って航走し、時折前示公園淡輪海水浴場に寄せて休憩をとるなどしているうち、13時30分ごろ離岸堤(B)上にいたB指定海難関係人を含む数人の女性遊泳者グループと知り合った。そして、同受審人は、無資格の同遊泳者を1人ずつ順にレッツのシート前部に座らせてハンドルを持たせ、自らその背後に立ってハンドルに手を添えて操縦を行い、航走を楽しんでいた。 A受審人は、折からB指定海難関係人をシート前部に同乗させて航走中、14時38分半西防波堤灯台から248.5度1,780メートルの地点において、針路を離岸堤(A)の南西端付近に向かう067度に定め、スロットルレバーを調整して16.2ノットの対地速力で進行した。 14時39分わずか過ぎA受審人は、西防波堤灯台から249度1,420メートルの地点に達したとき、B指定海難関係人が無資格であり、操縦に不慣れなことから、スロットルレバーを強く握るなど同レバー操作が不適切となるおそれがあったが、何かあれば直ちに同指定海難関係人の背後から手を伸ばして操縦することができるので大丈夫と思い、ハンドルから手を放し、自ら操縦することなく、B指定海難関係人に操縦を行わせて続航した。 こうして、B指定海難関係人は、慣れないレッツを操縦し、14時39分半わずか過ぎ離岸堤(A)の南西端から120メートルの地点に至ったとき、前路に左舷側近距離を航過する態勢で接近する水上オートバイ4隻を認め、これを無難にやり過ごそうとしてハンドルを右に切り、一気にスロットルレバーを放したところ、急激な同レバー操作と低いアイドリング回転数から機関を停止させることとなった。 A受審人は、14時40分少し前西防波堤灯台から249.5度1,070メートルにあたる離岸堤(A)の南西端まで30メートルの地点において、同堤に向首したままレッツの行き脚が止まったことから、3隻の水上オートバイが航過したところで再始動させ、離岸堤(A)の沖合に向けハンドルを左に切り、B指定海難関係人に発進と操縦の続行を促した。 B指定海難関係人は、14時40分わずか前スロットルレバーを握って発進しようとしたところ、左舷前方に接近する水上オートバイ1隻を認め、これを避けるためにハンドルを戻した際、思わずスロットルレバーを強く握ったことから、離岸堤(A)に向かって急発進し、14時40分西防波堤灯台から249.5度1,030メートルの地点において、レッツは、100度を向いたその船首が、離岸堤(A)南西端部に、同堤と45度の角度で衝突した。 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期にあたり、海面は穏やかであった。 A受審人は、急発進により海中に転落し、その後消波ブロックにつかまっているB指定海難関係人を認め、泳ぎ寄って同人を離岸堤上に引き上げるとともに箱作海水浴場の監視艇に救助を要請するなど事後の措置に当たった。 衝突の結果、レッツは、船体右舷側に破口を生じ、のち廃棄処分とされ、B指定海難関係人は、右頭頂部及び右肩などに打撲傷を負った。
(原因) 本件離岸堤衝突は、大阪府せんなん里海公園沖合において、水上オートバイを航走させる際、有資格者が自ら操縦せず、無資格の同乗者に操縦を行わせてスロットルレバー操作が不適切となり、離岸堤に向かって急発進したことによって発生したものである。
(受審人等の所為) A受審人は、大阪府せんなん里海公園沖合において、無資格者を同乗させて水上オートバイを航走させる場合、自ら操縦すべき注意義務があった。しかるに、同人は、何かあれば直ちに同乗者の背後から手を伸ばして操縦することができるので大丈夫と思い、無資格者に操縦を行わせて自ら操縦しなかった職務上の過失により、スロットルレバー操作が不適切となり、離岸堤に向かって急発進して衝突を招き、船体右舷側に破口を生じ、同乗者の右頭頂部及び右肩などに打撲傷を負わせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。 B指定海難関係人の所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。 |