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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年12月9日17時10分 北海道久遠郡久遠漁港 2 船舶の要目 船種船名
貨物船第五しんよう 総トン数 498トン 全長 65.824メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
735キロワット 3 事実の経過 第五しんよう(以下「しんよう」という。)は、バウスラスタを備え、北海道西岸及び南岸の各港間に砕石を輸送している船尾船橋型の土、砂利及び石材運搬船で、A受審人ほか4人が乗り組み、船首1.7メートル船尾2.6メートルの喫水をもって、空倉のまま、平成11年12月9日15時ごろ北海道奥尻島の青苗港を発し、北海道久遠郡の久遠漁港漁具保管修理岸壁に向かった。 ところで、漁具保管修理岸壁は、久遠漁港北部の東西に延びる約400メートルの岸壁で、その西端から南方に約150メートルに延びる北波除堤とこれに接続して東方に約200メートル延びたのち南東方に屈曲して約150メートル延びる外北防波堤により西寄りの風波を防ぎ、外北防波堤の突端の東方約250メートルの陸岸から西北西方に約120メートルに延びる南防波堤とその基部付近外側から南西方に約150メートル延びたのち西方に屈曲して約350メートル延びる外南防波堤により南寄りの風波を防いでおり、同防波堤の突端には久遠港外南防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)が設置され、外北防波堤の突端付近には捨石による浅所があり、同浅所と外南防波堤との間の可航幅は約70メートルに狭められているうえ、外南防波堤の屈曲部の少し西方から南防波堤突端にかけてこんぶ養殖施設の設置区域となっているため、同漁港防波堤入口水路は東方から北東方に向け屈曲していた。 このこんぶ養殖施設は、1連の長さ200メートル直径22ミリメートル(以下「ミリ」という。)の幹縄に、多数の種糸を取り付けた長さ約6メートル直径14ミリの枝縄を、その中央に沈子を、両端に浮玉を取り付けて4メートル間隔に吊り下げたもので、前示設置区域に2連の同施設が設置され、A受審人は当日午前中同漁港に入出港しており、この水路状況を知っていた。 A受審人は、発航時から単独の船橋当直に就き、17時06分防波堤灯台から335度(真方位、以下同じ。)50メートルの地点で、針路を久遠漁港入口に向かう088度に定め、以後機関操縦盤のクラッチを適宜中立、前進と繰り返し、約3ノットの対地速力で手動操舵により進行した。 A受審人は、17時09分少し前防波堤灯台から075度230メートルの地点で、前示のこんぶ養殖施設に接近しないように、大角度の転舵を行いバウスラスタを使用するなど適切な操船を行うことなく、小転舵するだけでなんとか同施設をかわせるものと思い、外北防波堤先端をつけ回すつもりで、左舵10度をとり徐々に回頭を始めた。 その後、A受審人は、回頭を速めようと思い左舵一杯をとり回頭中、17時10分防波堤灯台から078度360メートルの地点で、しんようは、ほぼ000度を向首し、その船尾が原速力のまま、こんぶ養殖施設に衝突した。 当時、天候は曇で風力6の西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。 A受審人は、こんぶ養殖施設に衝突したことに気付かず続航し、久遠漁港内に着岸後、船尾に浮玉が絡んでいるのを認め、同施設に衝突したことを知り事後の措置に当たった。 衝突の結果、しんようは、推進器翼に曲損を生じ、こんぶ養殖施設は、幹縄及び枝縄等に切損を生じたが、のちいずれも修理された。
(原因) 本件こんぶ養殖施設衝突は、北海道久遠漁港において、同施設により操船水域が狭められ屈曲した同漁港防波堤入口に回頭入航する際、操船不適切で、同施設に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、北海道久遠漁港において、こんぶ養殖施設により操船水域が狭められ屈曲した同漁港防波堤入口に回頭入航する場合、その水路状況を知っていたのであるから、同施設を十分に離す進路をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、同漁港に2回ばかり入出航して慣れていることから、転舵だけでなんとか同施設をかわせるものと思い、バウスラスタを使用するなどして同施設を十分に離す進路をとらなかった職務上の過失により、同施設に向かって進行して衝突を招き、しんようの推進器翼に曲損を生じさせ、こんぶ養殖施設の幹縄及び枝縄等に切損を生じさせるに至った。 |