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2000年(平成12年)

平成11年広審第101号
    件名
漁船新福丸プレジャーボート彰丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年8月8日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

横須賀勇一、釜谷獎一、中谷啓二
    理事官
前久保勝己

    受審人
A 職名:新福丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:彰丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
新福丸・・・バルバスバウ及び右舷船首部を破損
彰丸・・・右舷船首部に破口

    原因
新福丸・・・無灯火

    主文
本件衝突は、新福丸が、操業するに当たり、無灯火として進行したことによって発生したものである。
受審人Aの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年11月25日18時20分
瀬戸内海三原瀬戸
2 船舶の要目
船種船名 漁船新福丸 プレジャーボート彰丸
総トン数 4.8トン
登録長 11.20メートル 10.51メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 401キロワット
漁船法馬力数 15
3 事実の経過
新福丸は、船体中央部に操舵室を備え、その前方のマストには上から紅色全周灯、白色全周灯及び両色灯が、また船尾部の櫓の上部には、黄色回転灯及び作業灯が設置され、汽笛及び有効な音響による信号設備を有しない小型機船底引き網漁業に従事する木製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、かさご漁を行う目的で、船首0.1メートル船尾0.2メートルの喫水をもって、平成10年11月25日17時40分広島県吉和漁港を発し、三原湾小佐木島北側海域の漁場に向かった。

発航後、A受審人は、航行中の動力船の灯火を表示して三原湾を南西進し、18時10分小佐木島灯台から329度(真方位、以下同じ。)200メートルの地点に至り、機関を中立として漂泊を始め、えい網準備をすることとしたが、この海域では操業を許可されていなかったことから、操業していることが発覚することをおそれ、当時、暗夜であり無灯火にすると他船から存在を認識できない状況であったが、他船が接近してきたときは灯火を点灯すれば大丈夫と思い、それまで点灯していた両色灯及びマスト灯を含む全てを消灯し、灯火を表示することなく船尾甲板上で投網作業の準備にとりかかった。
18時19分A受審人は、船尾甲板上でクレーンを操作して投網作業を開始し、このとき、右舷船首6度960メートルのところに、彰丸が白灯及び両舷灯を表示して接近したが、同作業に専念して、同船に気付かず、同時19分半船尾端から長さ約100メートルのワイヤーロープをつないだ袋網を出し終えて、針路を055度に定め、機関を半速力前進にかけ1.3ノットの対地速力でえい網を開始した。

このとき、ふと船首方向を見たA受審人は、右舷船首6度480メートルのところに、自船に向けて来航する彰丸の船首波及び両舷灯を認め、18時20分少し前、あわてて、両色灯及び紅色全周灯を点灯したが効なく、18時20分小佐木島灯台から335度200メートルの地点において、新福丸は、原針路、原速力のまま、その右舷船首部が、彰丸の右舷船首部に前方から6度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、視界は良好で、日没は16時58分で潮候は下げ潮の中央期であった。
また、彰丸は、船体中央部に操舵室を備えるFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、同乗者2人を乗せ、船首0.2メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、同日18時ごろ広島県尾道糸崎港第1区を発し、愛媛県松山港に向かった。
発航後、B受審人は、航行中の動力船の灯火を表示して三原湾を南西進し、18時18分小佐木島灯台から055度1.0海里の地点に達したとき、同灯台の北方沖に向け、針路を241度に定め、機関を全速力前進にかけ30.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。

18時19分B受審人は、小佐木島灯台から049度960メートルの地点に達したとき、ほぼ正船首方向960メートルのところにえい網準備をする新福丸が漂泊していたが、無灯火の同船を視認することができず、その後も、接近する同船に気付くことができないまま進行中、同時20分わずか前船首至近に紅色灯が点灯したのを認めて左舵一杯としたが効なく、彰丸は、ほぼ原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、新福丸はバルバスバウ及び右舷船首部を破損し、彰丸は右舷船首部に破口を生じたが、のちいずれも修理された。


(原因)
本件衝突は、夜間、三原湾小佐木島北方海域において、新福丸が、操業するに当たり、無灯火として進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、三原湾で操業する場合、他船から自船の存在を認識できるよう灯火を表示すべき注意義務があった。しかるに、同人は、無許可で操業していることが発覚することをおそれ、他船が接近してきたときは灯火を点灯すれば大丈夫と思い、灯火を表示しなかった職務上の過失により、船首方から接近する彰丸に自船の存在を認識させることができずに彰丸との衝突を招き、自船のバルバスバウ及び右舷船首部を破損させ、彰丸の右舷船首部に破口を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
B受審人の所為は、本件発生の原因とならない。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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