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2000年(平成12年)

平成11年神審第51号
    件名
貨物船第三喜代丸プレジャーボートシーメイツ衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年8月31日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

阿部能正
    理事官
蓮池力

    受審人
A 職名:第三喜代丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:シーメイツ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
喜代丸・・・・・損傷なし
シーメイツ・・・左舷船首部外板及び同甲板に長さ3.5メートルの破損、同乗者1人が、14日間の加療を要する頚椎捻挫等

    原因
喜代丸・・・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
シーメイツ・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第三喜代丸が、見張り不十分で、漂泊中のシーメイツを避けなかったことによって発生したが、シーメイツが、見張り不十分で、注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年11月10日14時00分
兵庫県東播磨港南沖合
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第三喜代丸 プレジャーボートシーメイツ
総トン数 193トン
全長 54.00メートル 7.00メートル
登録長 6.27メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 514キロワット 84キロワット
3 事実の経過
第三喜代丸(以下「喜代丸」という。)は、船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか1人が乗り組み、空倉のまま、船首1.0メートル船尾2.7メートルの喫水をもって、平成10年11月10日11時40分兵庫県尼崎西宮芦屋港を発し、同県東播磨港に向かった。
ところで、喜代丸は、空倉状態で航行すると船首が浮き上がって高くなり、操舵室中央部の操舵輪後方にあるいすに座った状態から正船首方各舷5度にそれぞれ死角を生じ、船首方向の見通しが悪い状況にあった。

こうして、A受審人は、単独で船橋当直に当たり、明石海峡を西行し、13時18分半少し過ぎ明石港西外港西防波堤灯台から218度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点において、針路を285度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、操舵室中央部の操舵輪後方にあるいすに座った状態で見張りに当たり、13時54分半わずか前東播磨港二見南防波堤灯台(以下、灯台の名称については「東播磨港」を省略する。)から217度2.8海里の地点で、針路を313度に転じて続航中、同時57分少し前同灯台から224.5度2.8海里の地点に達したとき、正船首方向1,000メートルのところに左舷側を見せて漂泊中のシーメイツを視認し得る状況であったが、航行の妨げになる他船はいないものと思い、身体を移動するなどの死角を補う見張りを十分に行うことなく、シーメイツの存在に気付かないまま播磨灘を西行した。

A受審人は、その後シーメイツに向首したまま衝突のおそれがある態勢で接近したが、依然見張り不十分で、これに気付かず、同船を避けることなく、続航中、14時00分別府東防波堤灯台から177度2.1海里の地点において、喜代丸は、原針路、原速力のまま、その左舷船首が、シーメイツの左舷船首部に前方から40度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の北北西風が吹き、視界良好であった。
また、シーメイツは、モーターホーンを備えたFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人2人を同乗させ、いいだこ釣りの目的で、船首0.1メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、同日08時00分東播磨港本荘の船揚場を発し、同港新島南沖合の釣場に向かった。
B受審人は、08時10分釣場に至り、漂泊したうえ、釣りを開始し、150匹ほど釣れたのでべら釣りを行うことに決め、13時30分新島南沖合の釣場を発進し、同時35分衝突地点付近に至り、機関を停止し、長さ7メートルのチェーンに長さ20メートルの合成繊維索を結んだ簡易シーアンカーを船尾から投じて、船首を173度に向けて漂泊したのち、自らは右舷船尾甲板で同舷を向いて台に腰を下ろし、友人2人を上甲板の船首側両舷に座らせ、釣りを開始した。

13時57分少し前B受審人は、左舷船首40度1,000メートルのところに自船に向かって接近する喜代丸を視認できる状況であったが、釣りをすることに気を取られ、周囲の見張りを十分に行うことなく、同船の存在に気付かないまま漂泊を続けた。
B受審人は、その後喜代丸が自船に向首したまま衝突のおそれがある態勢で接近し、13時59分同船が避航動作を取らないまま310メートルに近づいたけれども、依然見張り不十分で、これに気付かず、注意喚起信号を行うことも、機関を使用して衝突を避けるための措置をとることもしないまま漂泊中、14時00分少し前同乗者の1人から他船が接近することを知らされ、立ち上がったところ、至近に迫った喜代丸を視認したが、どうすることもできず、シーメイツは、173度を向いたまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、喜代丸は損傷がなく、シーメイツは左舷船首部外板及び同甲板に長さ3.5メートルの破損を生じたが、のち修理された。また、シーメイツの同乗者1人は、14日間の加療を要する頚椎捻挫などを負った。


(原因)
本件衝突は、東播磨港南沖合において、西行中の喜代丸が、見張り不十分で、漂泊中のシーメイツを避けなかったことによって発生したが、シーメイツが、見張り不十分で、注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、東播磨港南沖合を西行する場合、船首方向の見通しが悪い状況にあったから、前路で漂泊している他船を見落とさないよう、身体を移動するなどの死角を補う見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、航行の妨げになる他船はいないものと思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、シーメイツの存在と接近に気付かず、同船を避けないまま進行してシーメイツとの衝突を招き、同船の左舷船首部外板及び同甲板に破損を生じさせ、シーメイツの同乗者1人に頚椎捻挫などを負わせるに至った。
B受審人は、東播磨港南沖合において、漂泊して釣りを行う場合、接近する他船を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、釣りをすることに気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、喜代丸の存在と接近に気付かず、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとらないまま漂泊を続けて同船との衝突を招き、前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。


参考図






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