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2000年(平成12年)

平成12年横審第24号
    件名
貨物船第八祐徳丸漁船大浦丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年8月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

猪俣貞稔、勝又三郎、平井透
    理事官
葉山忠雄

    受審人
A 職名:第八祐徳丸船長 海技免状:二級海技士(航海)
B 職名:大浦丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
祐徳丸・・・トランサム型船尾の右舷後部外板に擦過傷
大浦丸・・・左舷船首部外板を損傷

    原因
祐徳丸・・・見張り不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
大浦丸・・・居眠り運航防止措置不十分、警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第八祐徳丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る大浦丸の進路を避けなかったことによって発生したが、大浦丸が、居眠り運航防止の措置が不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年10月14日00時20分
伊豆大島南東方
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八祐徳丸 漁船大浦丸
総トン数 199トン 4.95トン
全長 57.79メートル
登録長 54.27メートル 9.99メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 735キロワット
漁船法馬力数 90
3 事実の経過
第八祐徳丸(以下「祐徳丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、鋼材約350トンを積載し、船首1.60メートル船尾3.00メートルの喫水をもって、平成11年10月12日17時30分神戸港を発し、石巻港に向かった。
翌13日23時45分A受審人は、伊豆大島の南側沖合で船橋当直に就き、同時48分竜王埼灯台から180度(真方位、以下同じ。)4.5海里の地点において、針路を060度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、13.0ノットの対地速力で進行した。

越えて14日00時05分A受審人は、竜王埼灯台から130度4.2海里の地点に達したとき、右舷船首70度2.2海里のところに大浦丸の白、紅2灯及び黄色回転灯を視認できる状況にあり、その後同船が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したが、ほぼ正船首方に認めていた反航態勢にある大型船の灯火に気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかったので、右舷側方から接近する大浦丸に気付かず、同船の進路を避けずに続航中、同時20分少し前右舷側至近に迫った大浦丸に初めて気付き、あわてて左舵をとるとともに機関を中立としたが、及ばず、00時20分竜王埼灯台から099度6.2海里の地点において、祐徳丸は、ほぼ原針路、原速力のまま、その右舷船尾部に、大浦丸の船首が、後方から39度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の西南西風が吹き、海上は穏やかであった。

また、大浦丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.30メートル船尾1.30メートルの喫水をもって、同月12日01時00分神奈川県間口漁港を発し、伊豆諸島新島東方沖の漁場に向かい、05時ごろ漁場に至って操業に掛かり、同日は神津島御幸湾内で一泊し、翌13日神津島南東方沖合で再度操業に掛かった後、漁獲不良のまま、同日21時00分神津島灯台から150度13.2海里の地点を発し、帰途に就いた。
B受審人は、法定の灯火のほか後部マストに黄色回転灯を点灯し、操舵室後部左側にある椅子(いす)に腰掛けて見張りを続けながら北上し、23時20分利島灯台から090度11.0海里の地点に至って同灯台の明弧の範囲に入り、その灯火を認めたところで、針路を021度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、13.0ノットの対地速力で進行した。

23時48分B受審人は、竜王埼灯台から155度8.4海里の地点に達したとき、左舷船首71度4.6海里のところに、祐徳丸の白、白、緑3灯を認めたものの、かなり遠かったことに加え、その他の航行船が目に入らなかったこともあって、気の緩みから眠気を感じるようになったが、居眠りすることはあるまいと思い、椅子から立ち上がって外気にあたるなど居眠り運航防止の措置をとらずに同じ姿勢で当直を続けた。
こうして、B受審人は、いつしか居眠りに陥り、越えて14日00時05分竜王埼灯台から130度6.4海里の地点に達したころには、祐徳丸を方位が変わらないまま2.2海里に見る状況になり、その後前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、祐徳丸に対して警告信号を行うことも、更に間近に接近したとき衝突を避けるための協力動作をとることもできないまま続航中、同時20分少し前ふと船首至近に迫った祐徳丸に気付き、右舵をとろうとしたがどうにもならず、前示のとおり衝突した。

衝突の結果、祐徳丸はトランサム型船尾の右舷後部外板に擦過傷を生じたのみであったが、大浦丸は左舷船首部外板を損傷し、のち修理された。

(原因)
本件衝突は、夜間、伊豆大島南東方海域において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、東航する祐徳丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る大浦丸の進路を避けなかったことによって発生したが、北上する大浦丸が、居眠り運航防止の措置が不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、伊豆大島南東方海域において、伊豆大島南側から房総沖合に向けて航行する場合、同海域を南北に往来する他船を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、ほぼ正船首方に認めていた反航態勢にある大型船の灯火に気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、右舷側方から前路を左方に横切る態勢で接近する大浦丸と衝突のおそれが生じていることに気付かず、同船の進路を避けずにそのまま進行して大浦丸との衝突を招き、祐徳丸のトランサム型船尾の右舷後部外板に擦過傷を生じ、大浦丸の左舷船首部外板を損傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

B受審人は、1人で出漁し、2日にわたる操業を終えて、夜間、伊豆諸島東方沖合を北上して三浦半島南端にある間口漁港に向けて帰航するに当たり、椅子に腰掛けて操船中、眠気を感じた場合、椅子から立ち上がって外気にあたるなど居眠り運航防止の措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同人は、居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航防止の措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近する祐徳丸に気付かず、警告信号を行うことも、間近に接近したとき衝突を避けるための協力動作をとることもせずに進行して同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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