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2000年(平成12年)

平成12年横審第40号
    件名
漁船第十八惣寶丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年8月4日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

猪俣貞稔、吉川進、向山裕則
    理事官
葉山忠雄

    受審人
A 職名:第十八惣寶丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
惣寶丸・・・球状船首の圧壊及び右舷船首部ブルワーク外板の凹損
防波堤・・・ケーソン破口

    原因
船位確認不十分

    主文
本件防波堤衝突は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年5月8日00時15分
千葉県銚子港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八惣寶丸
総トン数 219トン
全長 50.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 860キロワット
3 事実の経過
第十八惣寶丸(以下「惣寶丸」という。)は、網船、探索船各1隻及び運搬船3隻をもって構成するまき網漁業船団に属する船尾船橋型鋼製運搬船で、A受審人ほか8人が乗り組み、操業の目的で、船首尾とも3.6メートルの等喫水をもって、平成11年5月6日00時00分石巻港を発し、犬吠埼の東方約100海里の漁場に向かった。
16時ごろA受審人は、前示漁場に至ってパラアンカーを入れ、漂泊して夜明けを待ち、翌7日04時少し過ぎから、魚群探知及び操業を行い、びんちょう鮪約40トンの漁獲を得ていったん水揚げすることとし、19時00分北緯35度08分東経142度05分の地点を発進し、銚子港への帰途に就いた。

A受審人は、船橋当直を同人を含め5人による2時間単独当直の輪番制としており、各当直者に、犬吠埼灯台の位置を入力してあったGPSプロッターに表示される同灯台までの方位を針路として適宜修正しながら進行するよう指示し、約2時間の休息をとったのち、21時00分同灯台から121度(真方位、以下同じ。)43.0海里の地点において、昇橋して同当直に就いた。
ところで、A受審人は、銚子港へは水揚げのため度々寄港したことがあり、銚子港東防波堤(以下「東防波堤」という。)の南端が犬吠埼灯台の北方約1.5海里まで延びていることを承知しており、同港南方から水揚げ岸壁に向かうには、同灯台の北方約3海里の東防波堤の北端に当たる、銚子港東防波堤川口灯台の北方を付け回して入港する針路法を採っていた。
23時00分A受審人は、犬吠埼灯台から130度14.5海里の地点に達し、2時間の当直時間を終えて次直者と交替することとなったが、銚子港まで約1時間の残航程となったので、そのまま当直を続けることにし、同港に接近するに当たり、直接銚子港東防波堤川口灯台の北方に向けるいつもの針路法を採らず、いったん犬吠埼付近に接近してから銚子半島陸岸に沿って北上することとし、南方に向かう海潮流による影響を考慮して針路を315度に定め、機関を全速力前進にかけて12.6ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、左方に6度圧流されながら自動操舵により続航した。

翌8日00時00分A受審人は、長崎鼻沖合の岩礁域まで約1海里となる、犬吠埼灯台から136度1.7海里の地点に至り、GPSプロッターを漫然と見て、陸岸に接近しているから北方に向かって転針するころと知り、針路を340度に転じたところ、銚子港南防波堤に向首するようになったが、そのまま進行しても東防波堤の東方を無難に航過できると思い、同防波堤から十分遠ざかるよう、レーダーで陸岸までの距離を測定するなどして船位を確認することなく、海潮流に抗して12.0ノットの速力で続航した。
00時08分少し前A受審人は、犬吠埼灯台を左舷正横0.7海里に見て通過し、同灯台に接近し過ぎているのを感じ、同時08分半犬吠埼灯台から056度0.7海里の地点に達したところで、もう少し北に向けようと、000度に転針するつもりで、自動操舵用つまみを適当に右に回したものの同灯台から十分遠ざかるのを確かめないで進行中、同時15分少し前船首が354度を向いていたとき正船首方に東防波堤を認め、慌てて機関を中立ののち後進としたが及ばす、00時15分犬吠埼灯台から018度1.6海里の東防波堤南端から約120メートル北側の内側ケーソン部に、船首が354度に向いたまま、約10ノットの速力で、球状船首部が同防波堤に、後方から37度の角度で衝突した。

当時、天候は晴で風力5の南南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、付近海域には約1.5ノットの南流があった。
衝突の結果、球状船首の圧壊及び右舷船首部ブルワーク外板の凹損を生じ、東防波堤のケーソンに破口を生じたが、のちいずれも修理された。


(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、銚子港の水揚げ岸壁に向かう際、船位の確認が不十分で、東防波堤南端に向かって接近したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、犬吠埼東方沖合において、銚子港の水揚げ岸壁に向かってその南方から接近する場合、東防波堤に接近しないよう、レーダーによる船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、犬吠埼灯台の灯火やGPSプロッターで陸岸までの接近模様を漫然と認めていただけで、そのまま進行しても東防波堤の東方を無難に航過できると思い、レーダーで陸岸までの距離を測定するなどして船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、東防波堤南端に向かって接近したことによって同防波堤との衝突を招き、惣寶丸の球状船首の圧壊及び右舷船首部ブルワーク外板の凹損を生じ、東防波堤のケーソンに破口を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1号第3項を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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