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2000年(平成12年)

平成12年横審第3号
    件名
プレジャーボートサー ジュニアIIプレジャーボート369衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年7月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

猪俣貞稔、西村敏和、向山裕則
    理事官
伊東由人

    受審人
A 職名:サー ジュニアII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:369船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
サ号・・・・右舷中央部に亀裂等、船長が右肋骨骨折及び右肘挫傷
369号・・・・左舷船首部に破孔等

    原因
サ号・・・・見張り不十分、船員の常務(新たな危険)不遵守(主因)
369号・・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、サー ジュニアIIが、見張り不十分で、新たな衝突の危険を生じさせたことによって発生したが、369が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年7月20日14時50分00秒
愛知県内海港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートサー ジュニアII プレジャーボート369
全長 2.99メートル 2.76メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力 36キロワット 88キロワット
3 事実の経過
サー ジュニアII(以下「サ号」という。)は、3人乗りFRP製水上オートバイで、A受審人が同船と共に賃借りした曳(えい)航用モーターボートセピア19(以下「セピア」という。)に友人1人と乗り組み、遊走の目的で、平成9年7月20日08時00分セピアに引かれて名古屋港堀川沿いの定係地を発し、愛知県知多市新舞子沖合に至って、約1時間の遊走ののち、09時40分ごろ再び引かれて同沖合を発進し、同県内海海水浴場沖合に向かった。
ところで、内海海水浴場は、伊勢湾に面する知多半島南西岸に位置し、内海川河口を境に南北に分かれ、同河口の北側は内海港北防波堤と内海港5号突堤によって挟まれた約750メートルにわたる三日月状の砂浜で、その沖合には遊泳区域を示すため、同北防波堤先端付近から311度(真方位、以下同じ。)方向に、また同突堤先端付近から131度方向に、それぞれオレンジ色のブイが適宜な間隔で投入され、それらは互いにフロート付きの連結索で繋がれて境界線とされ、その中間部が互い違いとなって通行路が設けられていた。

10時30分ごろA受審人は、内海港南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)の北西方約120メートルのところに至ってセピアを錨泊させ、境界線の外側海域において、祭日でもあり多数のプレジャーボートが縦横に遊走している状況のもと、船首尾共0.2メートルの等喫水となったサ号に友人とともに乗って遊走した。
14時45分ごろA受審人は、帰途に就く時刻が近づいていたので、最後の遊走を単独で短時間行うこととし、友人を残したセピアの周囲をしばらく回ったのち、同時49分42秒南防波堤灯台から298度175メートルの地点において、境界線に直角となる041度に針路を定め、スロットルレバーをほぼ全開とし、16.2ノット(時速30キロメートル。以下「キロ」という。)の速力で、境界線に近づき、その手前でUターンするつもりで進行した。
14時49分49秒A受審人は、南防波堤灯台から318度175メートルの境界線まで約70メートルの地点に達したとき、Uターンを始める時機となったが、回頭しても新たな衝突の危険を生じさせる船舶はいないと思い、周囲の見張りを十分に行わなかったので、左舷正横75メートルのところを境界線に沿って無難に航過する態勢で369(以下「369号」という。)が遊走していることに気付かないまま、少し減速して13.5ノット(25キロ)の速力とし、同分52秒境界線まで約50メートルとなったとき、左に体を傾けてハンドルを切って左転を始め、自船が左傾斜した状態で、同分54秒境界線と平行となる311度に向首したとき、ほぼ正船首方に停留中の他の水上オートバイに気付いたものの、左方の見張り不十分で、依然として左舷船首41度50メートルのところに近づいていた369号に気付かず、そのまま回頭を続けて同船と新たな衝突の危険を生じさせたが、この状況に気付かず、スロットルを戻すなどして衝突を避けるための措置をとることなく左転を続けた。
14時49分57秒A受審人は、船体がほぼ水平となってUターンが終わり、201度に向首したとき、右舷船首至近に369号を初めて認め衝突の危険を感じ、スロットルを戻して左ハンドル一杯としたが及ばず、14時50分00秒南防波堤灯台から318度188メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その右舷中央部に369号の左舷船首部が後方から70度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、視界は良好であった。
また、369号は、2人乗りFRP製水上オートバイで、B受審人が単独で乗り、遊走の目的で、船首尾共0.2メートルの等喫水をもって、同日07時00分愛知県冨具崎港を発し、同港の南方1,500メートルの、内海海水浴場の北方にあたる小野浦海水浴場に向かった。

07時10分ごろB受審人は、小野浦海水浴場沖合に到着して遊走し、砂浜で昼食をとったのち、内海海水浴場沖合に向かうこととし、友人1人を乗せ、14時40分小野浦海水浴場北部の砂浜を発進して陸岸に沿って南下し、内海海水浴場沖合に至って、多数のプレジャーボートが遊走しているのを認め、機関を微速力にかけて16.2ノット(30キロ)の速力で進行した。
14時49分24秒B受審人は、南防波堤灯台から314度390メートルの地点に達したとき、針路を内海港南防波堤に向かって境界線と平行となる131度に定め、10.8ノット(20キロ)の極微速力として続航し、同分49秒正船首75メートルのところに、前路を左方に横断して無難に航過する態勢のサ号を認め得る状況であったが、右方の水上オートバイ等の動静に気を奪われ、減速しているから大丈夫と思い、前路の見張りを十分に行わなかったので、その後自船に向けてUターンを始めたサ号に気付かなかった。

14時49分54秒B受審人は、左舷船首41度50メートルのところに、境界線とほぼ平行となったサ号を一瞬見たものの、互いに左舷を対して無難に航過する態勢と思い、すぐに同船から目を離して右舷前方のセピア等を注視し、左方の見張り不十分で、サ号が左転を続けて新たな衝突の危険がある状況が生じたことに気付かず、スロットルを戻すなどして衝突を避けるための措置をとらないまま進行中、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、サ号は右舷中央部に亀裂等を、369号は左舷船首部に破孔等をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理され、A受審人が右肋骨骨折及び右肘挫傷を負った。


(原因)
本件衝突は、多数のプレジャーボートが遊走している愛知県内海海水浴場沖合において、遊走中のサ号が、見張り不十分で、無難に航過する態勢の369号に対し、Uターンして新たな衝突の危険を生じさせたばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、遊走中の369号が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、多数のプレジャーボートが遊走している愛知県内海海水浴場沖合において、遊走中、Uターンしようとする場合、Uターンすることによって新たな衝突の危険を生じさせることのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、Uターン後に接近する船舶はいないと思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、Uターンして、無難に替わる態勢の369号と新たな衝突の危険を生じさせたことに気付かず、スロットルを戻すなどして衝突を避けるための措置をとることなく進行して衝突を招き、サ号の右舷中央部に亀裂等を、369号の左舷船首部に破孔等をそれぞれ生じさせ、自身が右肋骨骨折及び右肘挫傷を負うに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

B受審人は、多数のプレジャーボートが遊走している愛知県内海海水浴場沖合において、遊走する場合、自船に接近する船舶を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、極微速力に減速しているから大丈夫と思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、自船の前路を横断したのちUターンして新たな衝突の危険を生じさせたサ号に気付かず、スロットルを戻すなどして衝突を避けるための措置をとることなく進行して衝突を招き、前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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