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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年8月3日16時52分 北海道浦河港南方沖合 2 船舶の要目 船種船名
漁船第十八隆輝丸 漁船第十一吉昭丸 総トン数 19トン 8.18トン 登録長 18.58メートル 12.64メートル 機関の種類
ディーゼル機関 ディーゼル機関 漁船法馬力数 190
90 3 事実の経過 第十八隆輝丸(以下「隆輝丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首1.2メートル船尾2.6メートルの喫水をもって、平成11年8月3日08時30分青森県大畑港を発し、16時半ごろ北海道浦河港の南方10海里ばかり沖合の漁場に至り、操業を開始した。 A受審人は、ソナーと魚群探知器により魚群を探索しながら進行し、魚影を探知したらその真上で船を止めたのち、シーアンカーを使用せずに、舵及び機関を適宜使用し、船体が常に魚影の真上にくるように操船しながらいかを釣るという、通称かんどりと呼ばれている漁法で操業したが、最初の漁場では漁獲が少なかったことから漁場を移動することとした。 A受審人は、16時42分半浦河灯台から181度(真方位、以下同じ。)9.7海里の地点において船首が315度に向首しているとき、釣り糸を巻き上げ、機関を全速力前進にかけ、旋回径1海里ばかりとなるよう、手動操舵により左方に少し当て舵をとりながら、10.0ノットの対地速力で、ソナーと魚群探知器を監視して進行した。 16時51分A受審人は、浦河灯台から185度10.3海里の地点において船首が135度に向首したとき、前方に魚影を探知したので、針路を135度に定め、機関を半速力に減じ、6.0ノットの対地速力で続航した。 定針したときA受審人は、右舷船首39度190メートルに第十一吉昭丸(以下「吉昭丸」という。)を視認することができ、その後同船と衝突のおそれがある態勢で接近したが、近くに航行船はいないものと思い、ソナーと魚群探知器により前方の魚影の監視に気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかったので、同船の接近に気付かず、速やかに行きあしを止めるなどの衝突を避けるための措置をとることなく続航中、16時52分浦河灯台から185度10.4海里の地点において、隆輝丸は、同針路、同速力のまま、その船首が吉昭丸の左舷側後部に後方から70度の角度で衝突した。 当時、天候は晴で風力2の南東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。 また、吉昭丸は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が甲板員1人と乗り組み、操業の目的で、船首0.4メートル船尾2.2メートルの喫水をもって、同日14時00分浦河港を発し、15時ごろ同港の南方10海里ばかり沖合の漁場に至り、かんどりによる操業を開始した。 B受審人は、16時50分浦河灯台から186度10.5海里の地点において、400キログラムのいかを獲たとき北西方の漁場に向け魚群探索航行することとし、針路を065度に定め、機関を微速力前進にかけ、ソナーと魚群探知器の監視をしながら、4.0ノットの対地速力で進行した。 16時51分B受審人は、隆輝丸を左舷船首69度190メートルに視認することができ、その後同船と衝突のおそれがある態勢で接近したが、近くに航行船はいないものと思い、ソナーと魚群探知器を監視することに気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかったので、同船の接近に気付かず、速やかに右転するなどの衝突を避けるための措置をとることなく続航中、吉昭丸は、同針路、同速力のまま、前示のとおり衝突した。 衝突の結果、隆輝丸は球状船首部を破損脱落したが、のち修理され、吉昭丸は左舷側後部外板に大破口を生じて機関室及び後部魚倉に浸水沈没した。
(原因) 本件衝突は、北海道浦河港南方沖合の漁場において、魚群探索航行中の両船が、互いに接近して衝突のおそれを生じた際、隆輝丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、吉昭丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、北海道浦河港南方沖合の漁場において、魚群探索を行いながら航行する場合、接近する吉昭丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、近くに航行船はいないものと思い、ソナーと魚群探知器により前方の魚影の監視に気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれのある態勢で接近する吉昭丸に気付かず、速やかに行きあしを停止するなどの衝突を避けるための措置をとることなく進行して同船との衝突を招き、隆輝丸の球状船首部を破損脱落させ、吉昭丸の左舷側後部外板に大破口を生じさせ、浸水沈没させるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。 B受審人は、北海道浦河港南方沖合の漁場において、魚群探索を行いながら航行する場合、接近する隆輝丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、近くに航行船はいないものと思い、ソナーと魚群探知器を監視することに気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれのある態勢で接近する隆輝丸に気付かず、速やかに右転するなどの衝突を避けるための措置をとることなく進行して同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。
参考図
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