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2000年(平成12年)

平成12年函審第32号
    件名
漁船第3豊龍丸プレジャーボートセイントロック衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年7月12日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

酒井直樹
    理事官
堀川康基

    受審人
A 職名:第3豊龍丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:セイントロック船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
豊龍丸・・・・・・・左舷船首外板の防舷材に亀裂
セイントロック・・・左舷側後部付近ブルワーク及び外板に亀裂を伴う凹損、釣り竿1本及び電動リール1個を流失、船長と同乗者がそれぞれ胸部及び頭部などに打撲傷

    原因
豊龍丸・・・・・・・動静監視不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
セイントロック・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第3豊龍丸が、動静監視不十分で、前路で漂泊中のセイントロックを避けなかったことによって発生したが、セイントロックが、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年9月19日12時35分
北海道志海苔漁港南西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第3豊龍丸 プレジャーボートセイントロック
総トン数 2.06トン
全長 7.52メートル
登録長 7.85メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 80キロワット 84キロワット
3 事実の経過
第3豊龍丸(以下「豊龍丸」という。)は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、船首0.10メートル船尾0.30メートルの喫水をもって、平成11年9月19日04時30分北海道函館市志海苔漁港岸壁を発し、07時ごろ函館半島大鼻岬の南西方3海里ばかりの漁場に至り、ぶり一本釣りを開始したが、漁獲がないので、12時00分大鼻岬の南西方2海里ばかりの漁場を発進して帰途についた。
発進後A受審人は、船橋当直に就いて函館半島立待岬の南東方に向け東行し、12時20分渡島住吉港東防波堤灯台から141度(真方位、以下同じ。)1.8海里の地点に達したとき、針路を志海苔港西防波堤灯台に向く060度に定め、機関を半速力前進にかけ、7.2ノットの対地速力で手動操舵により進行した。

定針したときA受審人は、正船首1.8海里に漂泊中のセイントロックを初認した。しかし、同人は、同船を一見して南東方に向け航行中で、右方に無難に替わってゆくものと思い、このころ左舷船首7度1.7海里に、前日に設置されたばかりのヨットレース用の旗竿付きの標識浮き玉を視認し、これに気を取られて同船と衝突のおそれの有無を判断できるよう、同船の動静監視を十分に行わなかったので、同船と衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、12時34分同標識浮き玉を左舷側400メートルに航過したとき、同船が船首200メートルに迫ったが、依然、同標識浮き玉に気を取られて同船を避けることなく続航中、12時35分わずか前、セイントロックの乗組員の叫び声を聴いたが、何をする暇もなく12時35分志海苔港西防波堤灯台から240度2.1海里の地点において、豊龍丸は、その左舷船首が、原針路、半速力のままセイントロックの左舷側後部付近に前方から70度の角度で衝突した。
当時、天候は曇で風力2の南東風が吹き、潮候はほぼ高潮時にあたり、視界は良好であった。
また、セイントロックは、船外機1基を備えたランナバウト型のFRP製プレジャーボートで、B受審人が友人1人を乗せ、船首0.07メートル船尾0.60メートルの喫水をもって、同日01時00分北海道函館港緑の島の係留場所を発し、01時半ごろ立待岬の南方2海里半ばかりの魚釣り場に至り、船外機を停止してえさ用のいか一本釣りを開始し、07時半ごろ、いか9匹を獲たのち立待岬の南東方半海里ばかりのところに移動してぶりの一本釣りを始めたが釣果がなかったので、09時ごろ立待岬の南東方1海里半ばかりの地点に移動して停止した船外機の推進器を引き揚げて漂泊し、ぶり釣りを再開したところ北東方に流れる弱い潮流に圧流されて12時20分前示衝突地点付近に達した。

衝突地点付近に達したとき、B受審人は、310度に向いた自船の船橋右舷側操縦席を後方に向けて、これに腰をかけ右舷側ブルワーク後部の竿受けにかけた釣り竿先端の魚信の監視を始め、このころ、左舷船首70度1.8海里に自船に向首接近中の豊龍丸を視認できる状況にあった。しかし、同人は、自船が漂泊して一本釣り中であるから、付近を航行する他船があっても航行船の方で自船を避けてくれるものと思い、釣り竿先端の魚信の監視に気を取られて周囲の見張りを十分に行わなかったので、豊龍丸を認めず、その後同船が衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船に対して救命衣の呼子笛を吹くなどの有効な音響による注意喚起信号を行わず、同船が更に接近しても船外機の推進器を降ろして前進にかけるなどの衝突を避けるための措置をとることなく漂泊中、12時35分わずか前、同船の機関音を聴いて左舷方を見たとき、至近に迫った同船を初めて認め、大声を上げたが効なく、セイントロックは、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、豊龍丸は左舷船首外板の防舷材に亀裂を生じ、セイントロックは、左舷側後部付近ブルワーク及び外板に亀裂を伴う凹損を生じ、釣り竿1本及び電動リール1個を流失したが、のち損傷部は修理され、B受審人と同乗者がそれぞれ胸部及び頭部などに打撲傷を負った。


(原因)
本件衝突は、北海道志海苔漁港南西方沖合において、豊龍丸が、北海道函館半島大鼻岬南西方漁場から志海苔漁港に向け帰航中、動静監視不十分で、前路で漂泊中のセイントロックを避けなかったことによって発生したが、セイントロックが、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、船外機を使用するなどの衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、北海道志海苔漁港南西方沖合において、北海道函館半島大鼻岬南西方漁場から志海苔漁港に向け東行中、前路で漂泊して一本釣り中のセイントロックを視認した場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、引き続きその動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同船を一見して南東方に向け航行中で、右方に無難に替わってゆくものと思い、左舷前方のヨットレース用の旗竿付きの標識浮き玉に気を取られ、同船の動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、セイントロックに衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、自船の左舷船首外板の防舷材に亀裂を生じさせ、セイントロックの左舷側後部付近ブルワーク及び外板に亀裂を伴う凹損を生じさせ、釣り竿1本及び電動リール1個を流失させ、B受審人と同乗者に打撲傷を負わせるに至った。
B受審人は、北海道志海苔漁港南西方沖合において、漂泊してぶり一本釣りを行う場合、自船に向首接近する豊龍丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、自船が漂泊して一本釣り中であるから、航行中の他船が自船を避けてくれるものと思い、船橋右舷側操縦席を後方に向けて、これに腰をかけたまま右舷側ブルワーク後部の竿受けにかけた釣り竿先端の魚信の監視に気を取られ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、豊龍丸が自船に向首接近していることに気付かず、船外機を使用するなどの衝突を避けるための措置をとることなく漂泊を続けて衝突を招き、前示のとおり両船に損傷を生じさせ、自身と同乗者に打撲傷を負わせるに至った。


参考図






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