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2000年(平成12年)

平成12年仙審第26号
    件名
漁船ほくしん丸貨物船ナムヘ パイオニアII衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年8月31日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

上野延之、長谷川峯清、藤江哲三
    理事官
大本直宏

    受審人
A 職名:ほくしん丸船長 海技免状:二級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
ほくしん丸・・・左舷中央部外板に凹損
ナ号・・・・・右舷船首部外板に凹損

    原因
ナ号・・・・・動静監視不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
ほくしん丸・・・横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、ナムヘ パイオニアIIが、動静監視不十分で、前路を左方に横切るほくしん丸の進路を避けなかったことによって発生したが、ほくしん丸が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月17日08時42分
島根県隠岐諸島北方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船ほくしん丸 貨物船ナムヘ パイオニアII
総トン数 491トン 2,310.00トン
全長 75.77メートル 91.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット 2,059キロワット
3 事実の経過
ほくしん丸は、冷凍物などの輸送に従事する船尾船橋型の鋼製漁船で、A受審人ほか8人が乗り組み、生鮮松茸42トンを載せ、揚荷の目的で、船首2.0メートル船尾3.5メートルの喫水をもって、平成10年8月16日04時45分朝鮮民主主義人民共和国チョンジン港を発し、舞鶴港に向かった。
A受審人は、発航から船橋当直(以下「当直」という。)を一等、二等両航海士及び自らの3人による単独4時間3直制に定めて航行した。
翌17日08時00分A受審人は、白島埼灯台から010.5度(真方位、以下同じ。)85海里の地点で、前直の一等航海士から引き継いで当直に就き、針路を146度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、自動操舵によって進行した。

08時22分A受審人は、白島埼灯台から012.5度82.2海里の地点に達したとき、左舷船首51度5.6海里のところに前路を右方に横切る態勢のナムヘ パイオニアII(以下「ナ号」という。)を初認し、同時35分白島埼灯台から013.5度80.5海里の地点で、同方位2海里に見るようになり、その後同船の方位がほとんど変わらず、衝突のおそれのある態勢で接近するのを認め、ナ号に避航を促すよう間をあけて汽笛の長音2回を行ったものの、同船が避航の気配を見せないまま、更に間近に接近したが、ナ号が避航するものと思い、速やかに行きあしを止めるなど衝突を避けるための協力動作をとることなく、短音5回の警告信号を行い、そのまま続航した。
08時42分わずか前、依然ナ号が避航動作をとらないで至近に接近したことから衝突の危険を感じ、右舵一杯としたが及ばず、08時42分白島埼灯台から014.5度79.5海里の地点において、ほくしん丸は、原速力のまま、船首が169度に向いたとき、その左舷中央部にナ号の右舷船首が後方から10度の角度で衝突した。

当時、天候は曇で風力3の北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
また、ナ号は、主に硫黄の輸送に従事する船尾船橋型の鋼製貨物船で、船長B及び三等航海士Cほか10人が乗り組み、溶解硫黄2,573トンを積載し、揚荷の目的で、船首6.0メートル船尾6.4メートルの喫水をもって、同月15日15時35分室蘭港を発し、大韓民国ヨス港に向かった。
B船長は、発航から当直を一等、二等及び三等各航海士の3人による単独4時間3直制に定めて航行した。
越えて17日08時00分C三等航海士は、白島埼灯台から018度87海里の地点で、前直の一等航海士から引き継いで当直に就き、針路を234度に定め、機関を全速力前進にかけ、13.0ノットの速力で、自動操舵によって進行した。
定針したとき、C三等航海士は、レーダーで右舷船首41度11.8海里にほくしん丸を探知し、08時35分白島埼灯台から015.5度80.8海里の地点で、同方位2海里に見るようになり、その後前路を左方に横切りその方位がほとんど変わらず衝突のおそれのある態勢で接近するようになったが、一見してその船の姿から同航船と思い、動静監視を十分に行うことなく、右転するなどしてほくしん丸の進路を避けないまま続航した。

08時41分C三等航海士は、船橋内に設置されたGMDSS装置の遭難信号受信警報が鳴り、それを確認して再設定を終え、同時42分少し前前方を見たとき、右舷船首至近にほくしん丸を認めるとともに同船の吹鳴する警告信号を聞き、そのころ昇橋して海図を見ていたB船長に知らせ、同船長が、機関を停止し、左舵一杯としたが及ばず、ナ号は、船首が179度に向いたとき、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、ほくしん丸は左舷中央部外板及びナ号は右舷船首部外板にそれぞれ凹損を生じたが、のちいずれも修理された。


(原因)
本件衝突は、隠岐諸島北方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、ナ号が、動静監視不十分で、前路を左方に横切るほくしん丸の進路を避けなかったことによって発生したが、ほくしん丸が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、隠岐諸島北方沖合において、単独で当直中、前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で避航の気配を見せないまま間近に接近するナ号を認めた場合、速やかに行きあしを止めるなどして衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、ナ号が避航するものと思い、そのまま進行して同船との衝突を招き、ほくしん丸の左舷中央部外板及びナ号の右舷船首部外板にそれぞれ凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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