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2000年(平成12年)

平成12年仙審第36号
    件名
漁船妙生丸防波堤衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年8月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

上野延之
    理事官
宮川尚一

    受審人
A 職名:妙生丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部が圧壊

    原因
船橋を無人

    主文
本件防波堤衝突は、船橋を無人にする際の安全措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年7月9日06時00分
秋田県能代港
2 船舶の要目
船種船名 漁船妙生丸
総トン数 14トン
全長 18.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 77キロワット
3 事実の経過
妙生丸は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が単独で乗り組み、操業の目的で、船首0.55メートル船尾2.10メートルの喫水をもって、平成11年7月8日16時00分基地にしていた秋田県能代港を発し、同港北西方21海里沖合の漁場に至って操業を始め、翌9日03時30分するめいか104キログラムを漁獲して操業をやめ、同漁場を発して能代港に向かった。
05時30分A受審人は、能代港外港南防波堤灯台(以下「南灯台」という。)から313度(真方位、以下同じ。)3.7海里の地点で、針路を能代港入口付近に向く128度に定め、機関を全速力前進にかけ、7.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。

定針したとき、A受審人は、操舵室計器盤の水温計で主機冷却水温度の上昇を認め、その後機関の点検をするため船橋を無人にすることとしたが、短時間なら大丈夫と思い、機関を中立にして漂泊するなど船橋を無人にする際の安全措置を十分に行うことなく、降橋して甲板上のハウス右舷側入口から機関室に降り、冷却海水ポンプケーシングからの漏水など機関の点検を行いながら船橋を無人にしたまま続航した。
05時58分A受審人は、南灯台から348度1,040メートルの地点で、機関の点検を終えたものの、船員室で干していた洗濯物が船体の動揺で散らかっていたので、それらを片付けていたとき、能代港外港北防波堤(以下「北防波堤」という。)に向首進行して同防波堤と衝突のおそれがあったが、依然船橋を無人にしていたことから、このことに気付かないで続航した。

06時00分少し前A受審人は、船橋に戻ろうとして船員室後方の入口から甲板上に出てハウス左舷側に回って前方を見たとき、船首至近に北防波堤を認めたものの、どうすることもできず、06時00分南灯台から010度780メートルの地点において、原針路、原速力のまま北防波堤に衝突した。
当時、天候は曇で風力3の東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
衝突の結果、北防波堤は、損傷がなく、妙生丸は、船首部が圧壊を生じ、のち修理された。


(原因)
本件防波堤衝突は、能代港北西方沖合の漁場から同港に向けて航行中、冷却水温度の上昇した機関を点検するに当たり、船橋を無人にする際の安全措置が不十分で、北防波堤に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、能代港北西方沖合の漁場から同港に向けて航行中、冷却水温度の上昇した機関を点検するに当たり、船橋を無人にする場合、北防波堤に向首進行しないよう、機関を中立にして漂泊するなど安全措置を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、短時間なら大丈夫と思い、安全措置を十分に行わなかった職務上の過失により、北防波堤に向首進行して同堤との衝突を招き、妙生丸の船首部圧壊を生じさせるに至った。






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