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2000年(平成12年)

平成12年函審第12号
    件名
漁船第五十六清宝丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年8月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

織戸孝治、酒井直樹、大山繁樹
    理事官
熊谷孝徳

    受審人
A 職名:第五十六清宝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部に破口、船首空所及び氷倉に浸水

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年8月20日12時30分
北海道利尻郡利尻島鴛泊(おしどまり)港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十六清宝丸
総トン数 19.44トン
全長 22.15メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 478キロワット
3 事実の経過
第五十六清宝丸(以下「清宝丸」という。)は、いか一本つり漁業に従事し、磁気コンパスを装備するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首1.2メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成11年8月20日10時ごろ北海道稚内港を発し、同港南西方80海里ばかりの武蔵堆付近漁場に向かった。
A受審人は、発航時から単独で船橋当直に就き、野寒布(のしゃっぷ)岬をつけ回し、10時25分半稚内灯台から026度(真方位、以下同じ。)1.5海里の地点に達したとき、GPSに入力してある利尻島北端沖合への方位線が、GPSプロッター上に239度と表示されていたので、自船の自動操舵の針路設定ノブを磁気コンパスの同度数に設定したところ、偏差及び自差により針路が利尻島鴛泊港に向首する229度に定められ、機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で進行した。

ところで、A受審人は、同月13日から15日までお盆休みをとって休漁し、同16日から発航前日までの4日間は正午ごろ稚内港を発し、15時ごろ礼文島北方漁場に至り、操業ののち翌朝帰港して水揚を行う夜間操業を続けて、漁場往復航海も1人で船橋当直に就いていたので、疲労が蓄積し、睡眠不足の状態となっていた。また、武蔵堆付近漁場への往復航海は、航程が長いことから他の乗組員と船橋当直を交替して航行することとしていた。
こうしてA受審人は、操舵室内後部右舷側に設置した腰掛板に腰掛けて船橋当直に当たり、10時34分稚内灯台から315度0.6海里の地点で、針路を233度に転じて続航していたところ、11時ごろ連日の夜間操業による疲労と睡眠不足から眠気を催すようになったが、まさか居眠りに陥ることはあるまいと思い、礼文水道を通過するまでは他の乗組員を休息させようと考え、休息中の乗組員を起こして船橋での見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとらないでいるうち、いつしか腰を掛けたまま居眠りに陥り、その後利尻島鴛泊港の東外防波堤に向首進行していることに気付かず進行中、清宝丸は、12時30分鴛泊港東外防波堤東灯台から288度135メートルの東外防波堤基部の消波ブロックに原針路、原速力のまま衝突した。

当時、天候は雨で風力3の東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
防波堤衝突の結果、船首部に破口を生じて船首空所及び氷倉に浸水したが、自力で防波堤を離れて利尻島鴛泊港に入航し、のち修理された。


(原因)
本件防波堤衝突は、北海道稚内港から利尻島南西方沖合漁場に向け、同島鴛泊港沖合を航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同港の東外防波堤に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、単独で船橋当直に就き、北海道稚内港から利尻島南西方沖合漁場に向け、同島鴛泊港沖合を航行中、連日の夜間操業による疲労と睡眠不足から眠気を催した場合、居眠り運航となるおそれがあったから、休息中の乗組員を起こして船橋での見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに同受審人は、まさか居眠りに陥ることはあるまいと思い、休息中の乗組員を起こして船橋での見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、鴛泊港の東外防波堤に向首進行して同防波堤基部の消波ブロックとの衝突を招き、船首部に破口を生じて船首空所及び氷倉に浸水させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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