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2000年(平成12年)

平成12年函審第31号
    件名
漁船第五白龍丸漁船漁運丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年8月23日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

酒井直樹、大石義朗、大山繁樹
    理事官
東晴二

    受審人
A 職名:第五白龍丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:漁運丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
白龍丸・・・球状船首に亀裂を伴う凹損
漁運丸・・・右舷側前部外板の水線下に大破口、えい航されている途中、沈没

    原因
白龍丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
漁運丸・・・見張り不十分、警告信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第五白龍丸が、見張り不十分で、前路で漂泊中の漁運丸を避けなかったことによって発生したが、漁運丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年9月18日17時05分
北海道松前郡小島南西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五白龍丸 漁船漁運丸
総トン数 19.89トン 9.50トン
登録長 17.20メートル 12.82メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 253キロワット
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
第五白龍丸(以下「白龍丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、船首0.60メートル船尾2.40メートルの喫水をもって、平成11年9月18日14時00分青森県北津軽郡小泊漁港を発し、16時30分北海道松前郡の小島の南方2海里ばかりの漁場に至り、魚群を探索しながら操業する通称かんどりと呼ばれる漁法でいか釣りを開始した。
A受審人は、16時50分松前小島灯台から207度(真方位、以下同じ。)2.0海里の地点に達し、いか約30キログラムを獲たとき、松前郡の小島の南西方2海里ばかりの漁場に移動することとし、針路を315度に定め、機関を微速力前進にかけて発進し、4.0ノットの対地速力で進行した。

定針後A受審人は、甲板員2人をそれぞれ前部上甲板と船尾甲板に配置して漁獲したいかの整理作業と自動いか釣り機の釣り糸の絡み解き作業に当たらせ、自らは操舵室内右舷側に立って同室前面左舷側の魚群探知器と同室左舷側後部のソナーを監視しながら手動操舵に当たっていたところ、16時55分、松前小島灯台から218度1.9海里の地点に達したとき、正船首1,235メートルに漂泊していか一本釣りを開始した漁運丸を視認できる状況で、その後同船と衝突のおそれのある態勢で接近した。しかし、同人は、定針したとき前方に他船を認めなかったことから、前路に他船はいないものと思い、魚群探知器とソナーの監視に気を取られ、船首方の漁運丸を見落とすことのないよう、前方の見張りを十分に行わなかったので、同船と衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船を避けることなく続航中、17時05分わずか前、船首至近に迫った漁運丸を初めて認めたが、何をする暇もなく17時05分松前小島灯台から238度1.9海里の地点において、白龍丸は、その船首が、原針路、微速力のまま漁運丸の右舷側前部に前方から85度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、潮候は上げ潮の初期にあたり、視界は良好であった。
また、漁運丸は、いか一本釣り漁業に従事する木造漁船で、B受審人が父のC甲板員と乗り組み、船首0.80メートル船尾1.50メートルの喫水をもって、同日14時00分北海道松前郡静浦漁港を発し、15時30分松前郡の小島の南西方2海里ばかりの漁場に至り、魚群を探索しながら操業する通称かんどりと呼ばれる漁法でいか釣りを開始し、いか約50キログラムを獲たのち16時55分、前示衝突地点付近に移動して機関を中立運転とし、船首を050度に向けて漂泊し、いか釣りを再開した。

B受審人は、いか釣りを再開したとき甲板員を船尾甲板に配置して操舵室及び船尾甲板両舷側ブルワークに設置された4基の自動いか釣り機の漁獲模様の監視に当たらせ、自らは操舵室内右舷側に立ったまま前部上甲板両舷側ブルワークの4基の自動いか釣り機の漁獲模様の監視を始めたが、このころ右舷船首85度1,235メートルのところに自船に向首接近中の白龍丸を視認できる状況で、その後同船が衝突のおそれのある態勢で接近した。しかし、同人は、自動いか釣り機の漁獲模様の監視に気をとられて周囲の見張りを十分に行わなかったので、同船が衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船に対して手動サイレンによる警告信号を行わず、同船が更に接近しても機関を後進にかけるなどの衝突を避けるための措置をとることなく漂泊中、17時05分少し前、右舷方40メートルに自船の右舷側中央付近に向首接近中の白龍丸を初めて認め、機関を全速力後進にかけたが間に合わず、漁運丸は、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、白龍丸は球状船首に亀裂を伴う凹損を生じ、漁運丸は、右舷側前部外板の水線下に大破口を生じて魚倉及び機関室内に浸水し、僚船により小島漁港向けえい航されている途中、17時25分松前小島灯台から183度1.0海里の地点において沈没した。


(原因)
本件衝突は、北海道松前郡の小島の南西方沖合において、白龍丸が、同島南方のいか釣り漁場から魚群探索しながら同島南西方漁場に向け航行中、見張り不十分で、前路で漂泊していか一本釣り中の漁運丸を避けなかったことによって発生したが、漁運丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、機関を使用するなどの衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、北海道松前郡の小島の南西方沖合において、同島南方のいか釣り漁場から魚群探索しながら同島南西方漁場に向け航行する場合、前路で漂泊していか一本釣り中の漁運丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、発進時に前方に他船が認められなかったことから、船首方に他船はいないものと思い、魚群探知器及びソナーの監視に気を取られ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、漁運丸に衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、自船の球状船首に亀裂を伴う凹損を生じさせ、漁運丸の右舷側前部外板に大破口を生じさせ、同船の魚倉及び機関室に浸水、沈没させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

B受審人は、北海道松前郡の小島の南西方において、漂泊していか一本釣りを行う場合、自船に向首接近する白龍丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、自船が漂泊していか一本釣り中であるから、航行船が自船を避けてくれるものと思い、自船の前部上甲板両舷側ブルワークに設置された自動いか釣り機の漁獲模様の監視に気を取られ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、白龍丸が自船に向首接近していることに気付かず、機関を後進にかけるなどの衝突を避けるための措置をとることなく漂泊を続けて衝突を招き、前示のとおり両船に損傷を生じさせ、自船を沈没させるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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