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2000年(平成12年)

平成12年函審第42号
    件名
貨物船きたかみ丸岸壁衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年8月1日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

酒井直樹
    理事官
堀川康基

    受審人
A 職名:きたかみ丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
きたかみ丸・・・船首楼ブルワーク及び外板に凹損
岸壁・・・・・・欠損、その上部レールに曲損

    原因
着岸時の速力の確認不十分

    主文
本件岸壁衝突は、着岸時の速力の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年4月28日07時50分
北海道苫小牧港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船きたかみ丸
総トン数 490トン
全長 61.12メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 956キロワット
3 事実の経過
きたかみ丸は、船尾船橋型のケミカルタンカーで、A受審人ほか6人が乗り組み、福島県小名浜港で濃硫酸1,030トンを載せ、船首3.40メートル船尾4.40メートルの喫水をもって、平成11年4月26日13時20分同港を発し、北海道苫小牧港に向かい、同月28日04時30分同港第4区に到着して苫小牧港西防波堤灯台から147度(真方位、以下同じ。)1,620メートルの地点に投錨仮泊したのち07時00分抜錨して揚荷予定の同港第1区ケミカル岸壁西バースに向かった。
ところで前示ケミカル岸壁は、苫小牧港東防波堤と同港西防波堤との入口水路に接続して東北東方に延びる長さ約6,000メートル幅約360メートルの第1区の水路の中央部南側の中央南ふ頭の東端から東北東方に延びる長さ約320メートルのケミカルタンカー専用岸壁で、その中央から西方を西バース、東方を東バースとし、西バースの西端の20メートル沖合に赤色浮標1個が設置されており、その南方約80メートルの陸岸上に高さ104メートルの送電線の鉄塔が立てられていた。

A受審人は、抜錨時、一等航海士及び次席一等航海士を船首に配置して操船に当たり機関を7.0ノットの半速力前進にかけて防波堤入口を通過したのち第2区及び第1区の水路の中央を東行し、07時30分前示ケミカル岸壁西端角から255度1,000メートルの地点に達したとき、針路を同ケミカル岸壁を右舷側180メートルに並航する065度に定め、機関を2.0ノットの極微速力前進に減じ、同ケミカル岸壁西バースの西端を右舷側に航過したとき右回頭したのち右舷錨を投下し、同ケミカル岸壁に出船左舷付けに着岸する予定として進行した。
A受審人は、07時47分少し前前示ケミカル岸壁の西端を右舷側180メートルに航過したとき、右舵一杯をとって右回頭を開始し、同時48分原針路から45度ばかり右転したとき機関を中立運転とし、同時48分半、船首が同ケミカル岸壁中央部まで90メートルに接近し、前進行きあしが少し減じたとき右舷錨投下を令したところ、きたかみ丸は、北寄りの強い風を左舷船尾方から受ける状況になり、舵効が弱められ、前進行きあしが強まるようになった。

A受審人は、右舵一杯をとったまま錨鎖が張るのを待っていたところ、07時49分原針路から90度右転して前示ケミカル岸壁に直角に向首し、その距離60メートルとなったとき、前進行きあしが再び2.0ノットに強まった。しかし、同人は、自船が満載状態であるから追い風の影響は少ないものと思い、右舷前方の赤色浮標と鉄塔とを見通したり、船首配置の一等航海士に錨鎖の走出状況を報告させるなどして前進速力の確認を行わなかったので、前進行きあしが過大となっていることに気付かず、早期に機関の反転と延出錨鎖の保持により前進行きあしの減速を行うことなく続航中、同時50分少し前、錨鎖が4節余り延出され同ケミカル岸壁が船首15メートルに迫ったとき、船首配置の一等航海士から行きあしが強い旨の報告を受け、初めて行きあしが過大であることに気付き、機関を全速力後進にかけたが及ばず、07時50分170度を向いたきたかみ丸の左舷船首が、苫小牧港第1区ケミカル岸壁西端角から065度80メートルの同ケミカル岸壁西バースに、2.0ノットの前進行きあしのまま後方から75度の角度で衝突した。
当時、天候は雨で風力6の北風が吹き、潮候は低潮時で、視界は良好であった。
岸壁衝突の結果、きたかみ丸は、船首楼ブルワーク及び外板に凹損を生じ、前示ケミカル岸壁に欠損を生じ、その上部レールに曲損を生じたが、のち損傷部は修理された。


(原因)
本件岸壁衝突は、北寄りの風を船尾方から受ける状況で、北海道苫小牧港第1区ケミカル岸壁西バースに回頭着岸する際、前進速力の確認が不十分で、前進行きあしが減じられないまま同ケミカル岸壁に向かって進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人が、北寄りの風を船尾方から受ける状況で、北海道苫小牧港第1区ケミカル岸壁西バースに回頭着岸する場合、過大な行きあしで岸壁に接近することのないよう、右舷前方の赤色浮標と鉄塔とを見通したり、船首配置の一等航海士に錨鎖の走出状況を報告させるなどして前進速力の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、自船が満載状態であるから追い風の影響は少ないものと思い、前進速力の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、早期に機関の反転と延出錨鎖の保持により前進行きあしの減速を行うことなく、同ケミカル岸壁に向かって進行して衝突を招き、自船の船首楼ブルワーク及び外板に凹損を生じさせ、同ケミカル岸壁に欠損を生じさせ、その上部レールを曲損させるに至った。






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