|
(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年6月4日04時40分 男女群島東方沖合 2 船舶の要目 船種船名
漁船利香丸 貨物船エムエスシー レベッカ 総トン数 7.9トン 37,579トン 全長 16.10メートル
242.81メートル 機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関 出力 220キロワット
28,750キロワット 3 事実の経過 利香丸は、FRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、船びき網漁の目的で、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成11年6月4日00時00分熊本県牛深漁港を発し、男女群島東方沖合の漁場に向かった。 A受審人は、出港時から操船にあたり、01時40分牛深大島灯台から265度(真方位、以下同じ。)16.0海里の地点において針路を263度に定め、13.0ノットの対地速力で自動操舵によって進行した。 04時10分A受審人は、女島灯台から080度35.0海里の地点に達したとき、舵輪後方のいすに腰掛けて操船中、出航前の睡眠時間が短かったこともあって眠気を催すようになったが、あと2時間ほどで目的の漁場に着くので、それまでは居眠りに陥ることはないものと思い、いすから立ち上がって手動操舵に切り替える等居眠り運航の防止措置をとることなく続航し、その後間もなくいすに腰掛けたまま居眠りに陥った。 04時36分A受審人は、女島灯台から079度29.4海里の地点に達したとき、右舷船首39度2海里にエムエスシー
レベッカ(以下「レベッカ」という。)の白、白、紅3灯を視認することができ、その後同船が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近するのを認めることができる状況となったが、居眠りに陥っていたのでこのことに気付かなかった。 04時38分A受審人は、レベッカと1海里に接近したが、依然として同船の存在に気付かず、右転するなどして同船の進路を避けることなく進行し、04時40分女島灯台から079度28.5海里の地点において、利香丸の船首部が、同針路、同速力のままレベッカの左舷中央部に前方から62度の角度で衝突した。 当時、天候は晴で風はほとんどなく、視界は良好であった。 また、レベッカは、船尾船橋型コンテナ船で、B船長及びC一等航海士ほか21人が乗り組み、雑貨入りコンテナを積載し、船首10.35メートル船尾11.65メートルの喫水をもって、同月3日18時30分(現地時間)大韓民国釜山港を発し、京浜港横浜区に向かった。 C一等航海士は、翌4日04時00分女島灯台から050度26.3海里の地点で操舵手と共に船橋当直につき、02時45分にB船長が大瀬埼灯台から282度8.1海里の地点で145度に定めた針路線上を、同針路及び21.2ノットの対地速力で自動操舵によって進行した。 04時36分C一等航海士は、女島灯台から076度28.2海里の地点に達したとき、左舷船首23度2海里に利香丸の白、緑2灯を視認することができ、その後同船が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近するのを認めることができる状況となったが、見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かないまま続航した。 04時38分C一等航海士は、利香丸が避航の様子を見せないまま1海里に接近したが、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとることなく進行し、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。 衝突の結果、利香丸は船首部を大破したが、のち修理され、レベッカは左舷外板に擦過傷を生じた。
(原因) 本件衝突は、夜間、男女群島東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、利香丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路を左方に横切るレベッカの進路を避けなかったことによって発生したが、レベッカが、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、単独で船橋当直中、眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、腰掛けていたいすから立ち上がって手動操舵に切り替える等居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、あと2時間ほどで目的の漁場に着くので、それまでは居眠りすることはないものと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いすに腰掛けたまま居眠りに陥り、前路を左方に横切るレベッカに気付かず、同船の進路を避けないまま進行して衝突を招き、利香丸の船首部を大破させ、レベッカの左舷外板に擦過傷を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。
参考図
|