日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年那審第50号
    件名
漁船第一幸丸漁船海修丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年7月5日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
長浜義昭

    受審人
A 職名:第一幸丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第一幸丸甲板員 海技免状:一級小型船舶操縦士
C 職名:海修丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
幸丸・・・・左舷側中央部外板及び船橋左舷側を大破
海修丸・・・・船首部右舷側外板に亀裂

    原因
海修丸・・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
第一幸丸・・・見張り不十分、警告信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、海修丸が、見張り不十分で、前路で漂泊中の第一幸丸を避けなかったことによって発生したが、第一幸丸が、見張り不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Cを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年5月31日06時05分
沖縄島南方沖
2 船舶の要目
船種船名 漁船第一幸丸 漁船海修丸
総トン数 15.32トン 9.7トン
登録長 14.30メートル 11.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 161キロワット 205キロワット

3 事実の経過
第一幸丸(以下「幸丸」という。)は、まぐろ延縄漁業に従事するFRP製漁船で、A、B両受審人ほか3人が乗り組み、操業の目的で、船首0.5メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成11年5月15日13時00分和歌山県勝浦港を発し、沖縄島南方の漁場に向かった。
A受審人は、20日05時00分北緯23度55分東経126度32分の漁場に至って操業を開始し、その後漁場を移動して1日1回の操業を行い、24日05時00分5回目の操業を開始し、07時10分北緯25度36分東経128度20分の地点において投縄中、機関が故障して航行不能となり、洋上で修理することにして漂泊を始めた。
A受審人は、船橋当直を31日00時から03時までを甲板長に、03時から船長経験もある弟のB受審人に行うよう指示し、00時ごろ休息した。
B受審人は、03時から船橋当直に就き、05時48分船首を290度に向けて漂泊していたところ、左舷正横後20度2.0海里のところに来航する海修丸を認め得る状況で、その後、衝突のおそれのある態勢で接近したが、同人が降橋して用便の後、船尾甲板で甲板長と雑談していて十分に見張りを行っていなかったので、このことに気付かず、警告信号を行わないまま漂泊を続けた。

06時04分半B受審人は、左舷側100メートルばかりに自船に向首して接近する海修丸に気付き、衝突の危険を感じ、A受審人に報告したが、どうすることもできず、06時05分北緯25度20分東経127度59分の地点において、幸丸の左舷側中央部に海修丸の船首が後方から70度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力1の東風が吹き、付近の日出は05時37分であった。
また、海修丸は、まぐろ延縄漁業に従事するFRP製漁船で、C受審人ほか甲板員2人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、5月27日11時00分那覇港を発し、沖縄島南方の漁場に向かった。
C受審人は、28日05時00分北緯25度17分東経127度59分の漁場に至って操業を開始し、その後漁場を移動して1日1回の操業を行い、31日05時22分北緯25度15分東経127度59分の地点で4回目の操業を開始し、針路を000度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて7.0ノットの速力で進行した。

05時48分C受審人は、正船首2.0海里のところに幸丸が存在し、やがて同船が漂泊していてこれに衝突のおそれのある態勢で接近しているのを認め得る状況にあったが、甲板員2人とともに船尾で投縄作業に当たっていて周囲の見張りを行っていなかったので、このことに気付かず、幸丸を避けないで進行し、海修丸は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、幸丸は、左舷側中央部外板及び船橋左舷側を大破し、海修丸は、船首部右舷側外板に亀裂を生じたが、のちいずれも修理された。


(原因)
本件衝突は、沖縄島南方沖において、海修丸が、投縄しながら航行する際、見張り不十分で、前路で漂泊中の幸丸を避けなかったことによって発生したが、幸丸が、見張り不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
C受審人は、沖縄島南方沖において、投縄しながら航行する場合、前路の他船を見落とさないよう、周囲の見張りを行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、船尾甲板で投縄作業に当たっていて、周囲の見張りを行わなかった職務上の過失により、前路で漂泊中の幸丸に気付かず、同船を避けないまま進行して同船との衝突を招き、幸丸の左舷側中央部外板及び船橋左舷側を大破させ、海修丸の船首部右舷側外板に亀裂を生じさせるに至った。
以上のC受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、沖縄島南方沖において、機関が故障して航行不能となって漂泊中、船橋当直に従事する場合、接近する他船を見落とさないよう、周囲の見張りを行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、船尾甲板で甲板長と雑談していて、周囲の見張りを行わなかった職務上の過失により、海修丸が自船を避航せずに接近していることに気付かず、警告信号を行えないまま漂泊を続けて海修丸との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。

以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION