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2000年(平成12年)

平成11年門審第111号
    件名
漁船第二清丸漁船若丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年7月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

供田仁男、佐和明、西山烝一
    理事官
今泉豊光

    受審人
A 職名:第二清丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:若丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
清丸・・・左舷側船底外板に擦過傷
若丸・・・右舷側中央部ブルワークの損壊及びマストの曲損

    原因
清丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
若丸・・・動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第二清丸が、見張り不十分で、漂泊中の若丸を避けなかったことによって発生したが、若丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年4月4日19時25分
鹿児島県羽島漁港南東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二清丸 漁船若丸
総トン数 2.2トン 1.01トン
全長 10.12メートル
登録長 4.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 86キロワット 7キロワット
3 事実の経過
第二清丸(以下「清丸」という。)は、船体のほぼ中央部に操舵室を設けたFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、あじ刺網漁の目的で、船首0.1メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成11年4月4日19時15分羽島漁港を発し、同漁港南東方沖合の漁場に向かった。
A受審人は、マストに白色全周灯及びその下方に両色灯を掲げ、羽島漁港港外の離岸堤に近づいたころ、操舵室の前面から船首方にわずかに張り出した機関室屋根の前端部右舷側寄りに腰掛け、遠隔操舵及び機関遠隔操縦の各装置を用いて操船にあたり、19時19分半薩摩沖ノ島灯台から057度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点で、針路を沖合に設置された定置網の北側に向かう112度に定め、機関を微速力前進にかけ、6.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で進行した。

19時23分少し過ぎA受審人は、薩摩沖ノ島灯台から068度1.7海里の地点に達し、定置網北端の標識灯を右舷側に替わしたところで、前方の街明かりを見ながら、針路を漁場に向く138度に転じ、寝過ごして出港が大幅に遅れていたことから、機関を平素は使うことのない全速力前進にかけ、16.0ノットに増速した。
転針したとき、A受審人は、正船首900メートルに漂泊中の若丸が表示する白灯を視認することができ、その後衝突のおそれがある態勢で同船に接近するのを認め得る状況となったが、出港が遅れて気が急き、漁場の目安としている左舷前方の街明かりに注意を奪われ、見張りを十分に行っていなかったので、若丸の灯火を見落とし、この状況に気付かず、同船を避けることなく続航中、19時25分薩摩沖ノ島灯台から082度1.9海里の地点において、清丸は、原針路、原速力のまま、その船首が若丸の右舷側前部に後方から60度の角度で衝突し、同船を乗り切った。

当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、日没は18時41分であった。
A受審人は、機関の振動と騒音が大きかったこともあって、衝突したことに気付かないまま漁場に着き、操業を終えて帰港し、後日海上保安部の調査により、衝突したことを知った。
また、若丸は、船外機付のFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、いか曳縄漁の目的で、船首尾0.1メートルの等喫水をもって、同日17時00分羽島漁港を発し、同時30分衝突地点南東方の漁場に着き、直ちに操業を開始した。
B受審人は、長さ24メートルの釣り糸の先端に付いた擬餌針を海底付近に垂らし、北西方に向かって低速力で航走しながら、日没後はマストに白色全周灯及びその下方に両色灯を掲げて操業を続け、19時22分少し過ぎ釣果がないまま衝突地点に至り、擬餌針を交換するため、左舵をとるとともに機関を中立運転として漂泊し、同時22分半船首が270度を向き、右舷船尾端で釣り糸を揚げ終えたころ、右舷船首45度1,000メートルに清丸の表示する白、緑2灯を初めて視認した。

19時23分少し過ぎB受審人は、船首が198度を向いたとき、清丸が右舷船尾60度900メートルのところで転針し、紅灯も見せて自船の方に向かって接近してくるのを認めたが、近くにいかの産卵場を保護する禁漁区が設けられているからそのことを知らせに接近してくる船であろうと思い、清丸に対する動静監視を十分に行わなかったので、その後同船が衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず、避航の気配を見せずに更に接近しても機関を使用して移動するなど、衝突を避けるための措置をとることなく漂泊を続け、19時25分少し前清丸が右舷側至近に迫ったのを知り、衝突の危険を感じたものの、どうすることもできず、若丸は、船首が198度を向いて、前示のとおり衝突した。
B受審人は、清丸が衝突に気付いた様子もなく走り去ったことから、急ぎ羽島漁港に帰港し、海上保安部に通報した。

衝突の結果、清丸は左舷側船底外板に擦過傷を、若丸は右舷側中央部ブルワークの損壊及びマストの曲損をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、夜間、羽島漁港南東方沖合において、南下中の清丸が、見張り不十分で、漂泊中の若丸を避けなかったことによって発生したが、若丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、羽島漁港を出港して同漁港南東方沖合を漁場に向け南下する場合、前路で漂泊している他船を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、寝過ごして出港が遅れたことから気が急き、漁場の目安としている左舷前方の街明かりに注意を奪われ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路で漂泊している若丸に気付かず、これを避けることなく進行して衝突を招き、清丸に左舷側船底外板の擦過傷を、若丸に右舷側中央部ブルワークの損壊及びマストの曲損をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
B受審人は、夜間、羽島漁港南東方沖合において、曳縄漁の擬餌針を交換するため機関を中立運転として漂泊中、清丸が自船の方に向かって接近してくるのを認めた場合、衝突のおそれがあるかどうか判断できるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、近くにいかの産卵場を保護する禁漁区が設けられているからそのことを知らせに接近してくる船であろうと思い、清丸に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、その後同船が衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず、避航の気配を見せずに更に接近しても機関を使用して移動するなど、衝突を避けるための措置をとることなく漂泊を続けて衝突を招き、前示のとおり両船に損傷を生じさせるに至った。

以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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