日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年門審第135号
    件名
引船第十一利丸引船列導流堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年7月13日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

供田仁男、米原健一、西山烝一
    理事官
坂爪靖

    受審人
A 職名:第十一利丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
利丸・・・曳航索を切断
台船・・・船首左舷側角の外板に破口を伴う凹損

    原因
針路選定不適切

    主文
本件導流堤衝突は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月22日20時00分
平戸瀬戸
2 船舶の要目
船種船名 引船第十一利丸 台船DB豊後
総トン数 100.18トン
全長 27.6メートル 60メートル
幅 22メートル
深さ 3.6メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,176キロワット
3 事実の経過
第十一利丸(以下「利丸」という。)は、船体の前部に操舵室を設けた鋼製引船で、A受審人ほか3人が乗り組み、船首2.2メートル船尾3.6メートルの喫水をもって、空倉で船首尾0.4メートルの等喫水となった箱形の鋼製台船DB豊後(以下「台船」という。)を無人のまま引き、平成10年8月22日04時00分熊本県八代港を発し、関門港に向かった。
A受審人は、利丸の後部甲板上に装備された曳航索巻取機から化学繊維製曳航索を150メートル延出して、その先端を台船の船首部両舷側付近から延出されたいずれも長さ18メートルの鋼索にY字形に連結し、発航時から船橋当直に就き、機関を全速力前進にかけて、12時00分長崎県野母埼西方沖合に至り、平戸瀬戸に近づいたころ再び昇橋する予定で、一等航海士に当直を委ね、いったん降橋した。

平戸瀬戸は、長崎県北松浦郡の九州西岸と同県平戸市の平戸島東岸とで形成された水道の最北部にあたり、北口の中央部付近に位置する広瀬と呼ばれる小島から浅礁が南西方に延び、同浅礁上に築造された導流堤を挟んで水道が東西に二分され、西側の水道が同瀬戸ほぼ中間部の南風埼付近と南北に直線状に通じ、潮流も概ね同水道に沿って流れるのに対し、東側の水道は、導流堤南西端の南方280メートルに設置された牛ケ首灯浮標付近で屈曲して北東方に通じ、この付近では同瀬戸の北流時に導流堤に向かう潮流があり、複雑な潮流模様を呈していた。
A受審人は、18時45分平戸瀬戸まで1時間ほどの航程となったころ昇橋し、あと半時間後に同瀬戸が北流4.0ノットの最強時を迎えることを事前に調べていたので、通航時には依然として強い北流があるのを予測し、減速して曳航索を60メートルに巻き縮め、利丸船尾と台船船首との距離を68メートルとしたうえで、全速力に復し、19時00分一等航海士と交代して当直に就き、手動で操舵にあたり、6.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で同瀬戸に向けて北上した。

A受審人は、19時50分田平港南防波堤灯台から196度(真方位、以下同じ。)590メートルの地点に至り、平戸瀬戸南口に架かる平戸大橋の下を通過したとき、針路を018度に定め、このころから影響を受け始めた北流に乗じて9.6ノットの速力で進行し、同時51分半針路を南風埼西方沖合に向く328度に転じ、北上を続けた。
19時56分A受審人は、平戸瀬戸北口への転針地点となる、南風埼灯台から265度120メートルの地点に達し、同北口の東側の水道では複雑な潮流が存在することを知っていたが、できるだけ東側に寄っておけば大丈夫と思い、潮流が概ね水道に沿って流れる西側の水道に向かう適切な針路を選定せず、いつものように東側の水道を通航するつもりで、針路を004度に転じ、導流堤の南西端に設置された広瀬導流堤灯台の灯火を正船首に望み、同じ速力で続航した。

19時58分半A受審人は、広瀬導流堤灯台まで370メートルのところで、右舷前方の牛ケ首灯浮標に近寄ろうとして右舵をとったものの、北方に圧流され、東側の水道に入れないまま直進して導流堤に著しく接近し、船首を南東方に向けて台船を引こうとしたが及ばず、20時00分台船は、050度を向首して導流堤とほぼ平行となったとき、その左舷船首端が広瀬導流堤灯台直下の導流堤南西端に衝突した。
当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の末期にあたり、北方に流れる3.6ノットの潮流があった。
その結果、利丸は曳航索を切断し、台船は船首左舷側角の外板に破口を伴う凹損を生じたが、のちいずれも修理された。


(原因)
本件導流堤衝突は、夜間、強い北流に乗じて平戸瀬戸北口を北上する際、針路の選定が不適切で、水路が屈曲して複雑な潮流が存在する東側の水道を通航し、同北口中央部の導流堤に向け圧流されたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、台船を曳航し、強い北流に乗じて平戸瀬戸を北上中、導流堤を挟んで水道が東西に二分された北口への転針地点に達した場合、東側の水道は水路が屈曲して複雑な潮流が存在することを知っていたのであるから、潮流が概ね水道に沿って流れる西側の水道に向かう適切な針路を選定すべき注意義務があった。しかし、同人は、できるだけ東側に寄っておけば大丈夫と思い、潮流が概ね水道に沿って流れる西側の水道に向かう適切な針路を選定しなかった職務上の過失により、東側の水道を通航し、圧流されて台船の導流堤への衝突を招き、利丸の曳航索を切断させ、台船の船首左舷側角の外板に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION