日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年広審第47号
    件名
プレジャーボートミャンボープレジャーボートスーパードルフィン衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年7月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

竹内伸二
    理事官
岩渕三穂

    受審人
A 職名:ミャンボー船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:スーパードルフィン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
ミ号・・・船首部に亀裂
ス号・・・左舷中央部船底に亀裂、船長が、右距骨脱臼骨折等

    原因
ミ号・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守
ス号・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守

    主文
本件衝突は、砂浜に向け北上するミャンボーが、右方の見張りが不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、針路を反転して西方に進行を開始したスーパードルフィンが、左方の見張りが不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年7月5日14時00分
瀬戸内海 横島南岸沖合
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートミャンボー プレジャーボートスーパードルフィン
全長 2.86メートル 2.24メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力 89キロワット 48キロワット
3 事実の経過
ミャンボー(以下「ミ号」という。)は、定員2人のウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで、A受審人が1人で乗り組み、海上航走を楽しむ目的で、平成10年7月5日13時ごろ広島県御調郡向島町犬ノ鼻の海岸を発し、友人が乗った2隻の水上オートバイ及びプレジャーボート1隻とともに、同県沼隈郡内海町の横島に向かった。
13時15分ごろA受審人は、友人とともに横島南西部の横山海岸に到着し、海岸で昼食をとった後、同時57分ごろ水しぶきが目に入るのを防ぐためのゴーグルを着けないまま、救命胴衣を着用して同海岸の砂浜を発進し、沖合で航走を始めた。

そのころ横山海岸沖合には数十隻の水上オートバイが、旋回したり直進したりしてそれぞれ思い思いに航走しており、A受審人は、同海岸砂浜から沖合に向けて南下したのち、2人乗りで航走しようと思い、砂浜にいる友人のところに向かうため、13時58分ごろ砂浜から約700メートル沖合で反転し、その後左右に少し蛇行しながら砂浜に向け北上し、14時00分少し前横島の城山三角点から193度(真方位、以下同じ。)1,620メートルの地点で、針路を327度に定め、機関を全速力より少し低い回転数とし、21.6ノットの対地速力で約120メートル前方の砂浜に向け進行した。
そのときA受審人は、右舷船首52度160メートルのところに、針路を反転し西方に向け進行を開始したスーパードルフィン(以下「ス号」という。)を視認することができ、その後衝突のおそれのある態勢となって接近したが、前方の砂浜に気を奪われ、右方の見張りを十分行わなかったので、このことに気付かず、直ちに行きあしを止めるなど衝突を避けるための措置をとることなく続航し、14時00分わずか前ほぼ同方位のまま60メートルに迫ったス号を初認して危険を感じ、直ちにスロットルレバーを戻して機関をアイドリング状態としたが及ばず、14時00分城山三角点から196度1,550メートルの地点で、ミ号の船首が、ス号の左舷側に後方から80度の角度で衝突した。

当時、天候は晴で、風力1の南東風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
また、ス号は、定員1人のウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで、B受審人が乗り組み、海上航走を楽しむ目的で、同日10時ごろ友人が乗った水上オートバイとともに広島県福山市藤江町の海岸を発し、横島に向かった。
B受審人は、ゴーグルを着けないまま、ウエットスーツと救命胴衣を着用してス号の操縦にあたり、10時30分ごろ横山海岸に着き、その後ときどき休憩しながら、同海岸沖合で航走を行っていた。
13時50分ごろB受審人は、横山海岸の砂浜から数十メートル沖合の、東西約300メートルの海域を海岸沿いに往復して航走していたところ、13時59分半城山三角点から200度1,800メートルの地点で針路を057度に定め、機関を前進にかけ、27.0ノットの対地速力で同海岸に沿って進行した。

14時00分少し前B受審人は、城山三角点から192度1,460メートルの地点で左転して針路を237度に反転したところ、左舷船首38度160メートルに、砂浜に向けて航走を始めたミ号を視認することができ、その後同船と衝突のおそれのある態勢となって接近したが、沖から海岸に向かう水上オートバイはいないと思い、左方の見張りを十分行わなかったので、同船に気付かず、直ちに行きあしを止めるなど衝突を避けるための措置をとることなく続航した。
14時00分わずか前B受審人は、至近に迫ったミ号に気付き、危険を感じてハンドルを右一杯にとったが及ばず、右舷に少し傾斜しほぼ247度を向首したとき、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、ミ号は船首部に亀裂を生じたが、その後修理され、ス号は左舷中央部船底に亀裂を生じ、また、B受審人が、右距骨脱臼骨折などを負った。


(原因)
本件衝突は、広島県沼隈郡横島の横山海岸沖合において、沖合から砂浜に向け北上するミ号が、右方の見張りが不十分で、ス号との衝突を避けるための措置をとらなかったことと、針路を反転して西方に向け進行を開始したス号が、左方の見張りが不十分で、ミ号との衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、広島県沼隈郡横島の横山海岸沖合において、沖合から砂浜に向け北上する場合、針路を反転して西方に向け進行を開始したス号を見落とさないよう、右方の見張りを十分行うべき注意義務があった。しかし同人は、前方の砂浜に気を奪われ、右方の見張りを十分行わなかった職務上の過失により、ス号に気付かないまま進行して同船との衝突を招き、ミ号の船首部及びス号の左舷中央部船底にそれぞれ亀裂を生じさせるとともに、B受審人に右距骨脱臼骨折などを負わせるに至った。
B受審人は、広島県沼隈郡横島の横山海岸沖合において、海岸に沿って東方に航走中、針路を反転して西方に向け航走を開始した場合、砂浜に向け北上するス号を見落とさないよう、左方の見張りを十分行うべき注意義務があった。しかし同人は、沖から海岸に向かう水上オートバイはいないと思い、左方の見張りを十分行わなかった職務上の過失により、ミ号に気付かないまま進行して同船との衝突を招き、両船に前述の損傷を生じさせるとともに、自身も右距骨脱臼骨折などを負うに至った。


参考図






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION