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2000年(平成12年)

平成11年広審第54号
    件名
遊漁船ひかり標識灯筏衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年6月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

中谷啓二
    理事官
小寺俊秋

    受審人
    指定海難関係人

    損害
ひかり・・・・船底部を破損して浸水
標識灯筏・・・枠部及び灯柱部に曲損、標識灯を損傷

    原因
見張り不十分

    主文
本件標識灯筏衝突は、見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年11月22日14時30分
広島湾大黒神島沿岸
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船ひかり
総トン数 4.8トン
全長 12.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 169キロワット
3 事実の経過
ひかりは、中央部後ろ側に操舵室を備えたFRP製遊漁船で、あじ及びめばる釣りの目的で、船長A(昭和20年7月2日生、一級小型船舶操縦士免状受有、平成12年4月4日死亡により受審人指定が取り消された。)ほか1人が乗り組み、釣り客9人を乗せ、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成10年11月22日07時00分広島市草津漁港を発し、広島湾南部の柱島沿岸に至って釣りを開始し、その後大黒神島北方沖のかき養殖漁場区域に移動して釣りを続行した。
14時15分ごろA船長は、釣果を求めさらに東方の江田島沿岸に向かうこととし、釣り客のうち3人が、船首近くに設けられている踏み台に後方を向いて横並びに腰掛けた状態で、かき筏群の間を縫ってゆっくり移動を始め、同時28分かき養殖漁場区域の東側に出て、砲台山山頂(69メートル)(以下「砲台山」という。)から282度(真方位、以下同じ。)1,870メートルの地点で、針路を牛石鼻東方沖に向け161度に定め、機関を半速力前進にかけ、20.0ノットの対地速力で、同漁場区域東端に沿い、操舵席に座って手動操舵により進行した。

14時29分A船長は、砲台山から263度1,640メートルの地点に達したとき、正船首620メートルのところに、かき養殖漁場区域の東南端付近であることを示す、海図に記載のないH鋼で枠組みした約4メートル四方の大きさで、中央部に高さ約2メートルの標識灯を備え、底部にドラム型の大型フロート6個が取り付けられた筏(以下「標識灯筏」という。)が存在し、これを視認できる状況であったが、船首が若干浮上して航走中で、釣り客3人が船首部に腰掛けており、正船首方が見通しにくかったものの、前方に支障物はないものと思い、操舵位置を少し移動するなどして同方向の見張りを十分に行うことなく、標識灯筏に気付かず続航中、ひかりは、14時30分砲台山から242度1,620メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その船首が標識灯筏に衝突し、そのまま同筏を乗り切った。
当時、天候は曇で風力3の西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
衝突の結果、ひかりは、船底部を破損して浸水し、標識灯筏は、枠部及び灯柱部に曲損を生じ標識灯を損傷したが、のちいずれも修理された。


(原因)
本件標識灯筏衝突は、広島湾大黒神島沿岸において、かき養殖漁場付近を南下中、正船首方の見張りが不十分で、同漁場区域を示す海図に記載のない標識灯筏に向け進行したことによって発生したものである。






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