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2000年(平成12年)

平成11年広審第83号
    件名
油送船三都丸漁船信栄丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年6月8日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

中谷啓二、工藤民雄、内山欽郎
    理事官
岩渕三穂

    受審人
A 職名:三都丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:信栄丸船長 海技免状:二級小型船舶操縦士(5トン限定)
    指定海難関係人

    損害
三都丸・・・左舷船首部外板に擦過傷
信栄丸・・・船首部及びバルバスバウ部を破損

    原因
信栄丸・・・見張り不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
三都丸・・・横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、信栄丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る三都丸の進路を避けなかったことによって発生したが、三都丸が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Bを戒告する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年10月22日08時25分
瀬戸内海備讃瀬戸
2 船舶の要目
船種船名 油送船三都丸 漁船信栄丸
総トン数 181トン 4.9トン
全長 41.60メートル
登録長 12.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 441キロワット
漁船法馬力数 15
3 事実の経過
三都丸は、主に瀬戸内海において油類の輸送に従事する船尾船橋型タンカーで、A受審人ほか2人が乗り組み、灯油等約232トンを積載し、船首2.4メートル船尾3.0メートルの喫水をもって、平成10年10月21日09時40分大阪港を発し、岡山港に向かい、同日午後入港時間調整のため小豆島南岸の池田港に寄せ、翌22日07時55分同港を出航した。
A受審人は、出航操船に引き続き1人で船橋当直に就き、池田湾を西進し、08時20分半鹿島南端の黒埼沖で同島大深(おおみ)山山頂(227メートル)から189度(真方位、以下同じ。)1.3海里の地点に達したとき、針路を305度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの西北西流の影響を受けて302度の進路及び10.0ノットの対地速力で、鹿島西岸沿いに手動操舵により進行した。

定針したころA受審人は、左舷前方約1.2海里のところに、南方に向首している信栄丸を初認し、08時22分大深山山頂から199度2,270メートルの地点に達したとき、左舷船首8度1,450メートルのところで同船が前路を右方に横切る態勢になり、その後方位に変化がなく衝突のおそれのある態勢で接近することを認めた。
08時24分少し前A受審人は、信栄丸と600メートルの距離になったころ、汽笛により警告信号を行ったものの、同船に避航の気配が認められず、さらに間近に接近したが、汽笛を鳴らしたのでそのうち自船を避けるものと思い、速やかに減速するなど衝突を避けるための協力動作をとることなく続航中、同時25分少し前依然同船に避航動作が見られないことから衝突の危険を感じ、急ぎ機関を後進にかけたが及ばず、三都丸は、08時25分大深山山頂から223度2,250メートルの地点において、原針路のまま、その左舷船首部に信栄丸の船首が前方から17度の角度で衝突した。

当時、天候は晴で風はほとんどなく、付近には290度の方向に1.9ノットで流れる潮流があった。
また、信栄丸は、小型機船底引網漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、船首0.2メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、同日03時00分香川県庵治港を発し、備讃瀬戸東航路中央第6号灯浮標付近に至って操業を開始し、07時45分ごろ黒埼南方沖で2度目の曳網を終え、西方に向首して漂泊し、潮流により西北西方に流されながら揚網作業を行った。
08時20分B受審人は、鹿島西岸の百尋磯灯浮標から南西400メートルばかりのところで揚網作業を終え、次の曳網開始地点に向かうため徐々に左転を始め、同時22分大深山山頂から234度2,500メートルの地点で、針路を黒埼に向けて108度に定め、機関を全速力前進にかけ、潮流に抗して6.1ノットの対地速力で、船尾甲板に立って手動操舵により進行した。

定針したときB受審人は、右舷船首9度1,450メートルのところに、前路を左方に横切る態勢の三都丸を視認し得る状況で、その後方位に変化がなく接近して衝突のおそれがあったが、周囲を一瞥して他船はいないものと思い、十分な見張りを行わなかったので同船に気付かず、まもなく船尾甲板で後方に向いてしゃがみ、漁獲物の選別作業にとりかかった。
B受審人は、そのまま前示作業に専念していて三都丸が発した警告信号にも気付かず、同船の進路を避けずに続航中、08時25分わずか前ふと前方を見て至近に迫った三都丸を初認したがどうすることもできず、信栄丸は、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、三都丸は、左舷船首部外板に擦過傷を生じ、信栄丸は、船首部及びバルバスバウ部を破損した。


(原因)
本件衝突は、備讃瀬戸鹿島西岸において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、信栄丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る三都丸の進路を避けなかったことによって発生したが、三都丸が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
B受審人は、備讃瀬戸鹿島西岸を東進する場合、前路を左方に横切る三都丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、周囲を一瞥して他船はいないものと思い、漁獲物の選別作業に当たり周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、三都丸に気付かず、衝突のおそれのある態勢で接近する同船の進路を避けずに進行して衝突を招き、三都丸の左舷船首部外板に擦過傷を、信栄丸の船首部及びバルバスバウ部に破損を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、備讃瀬戸鹿島西岸を北西進中、前路を右方に横切る信栄丸が衝突のおそれのある態勢で間近に接近するのを認めた場合、速やかに減速するなどして衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、汽笛により警告信号を行ったのでそのうち信栄丸が自船を避けるものと思い、速やかに減速するなどして衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。

以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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