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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年8月13日21時00分 兵庫県姫路港飾磨区 2 船舶の要目 船種船名
交通船平成2 総トン数 19トン 全長 18.50メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
441キロワット 3 事実の経過 平成2は、2基2軸を装備した軽合金製交通船で、平成7年10月有限会社R石材が購入し、使用されないときは姫路港飾磨区野田川口から700メートルばかり上流の右岸にある船着場に係留されていた。 同社代表取締役社長Bは、平成2を兵庫県飾磨郡家島町男鹿島にある会社と姫路市の自宅との間の通勤用とするほか、同社従業員の通勤用としても使用していたもので、同人が管理を行い、自らと海技免状を受有する2人の従業員と交代で運航することに決め、船橋後部出入口と機関室出入口の鍵を3人がそれぞれ保管することとしていたものの、同鍵を忘れた場合に備えて、予備の鍵を船橋後部左舷側の屋根下の溝に隠して置いていた。 また、B社長は、本船を購入以来、実父であるA指定海難関係人を時々同乗させ、操縦を行わせていたことから、同指定海難関係人に対し、平素から、無資格であるから単独で運航してはならないとの厳重な注意を行っていた。 しかしながら、A指定海難関係人は、平成11年8月13日夕方知人と同人の友人及びその娘の4人で姫路市内をドライブしたのち、平成2の係留地に立ち寄ったところ、知人らから同船を運航して男鹿島付近までの遊覧に連れていってくれるよう頼まれ、2年前海技免状を受有する従業員が隠してある予備の鍵を使用したとき、この在りかを盗み見ていたので、その鍵で各室に入り、船橋内の引出しからエンジンキーを探し出して機関を始動し、無資格であったが、有資格者を乗り組ませないで、平成2を運航して男鹿島周辺に向けて発航することとした。 平成2は、A指定海難関係人が乗り組んで操縦し、前示3人を乗せ、船首0.4メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、19時00分係留地を発し、男鹿島に向かい、同時30分同島三角点(220メートル)から000度(真方位、以下同じ。)700メートルの地点にある桟橋に到着して上陸し、同指定海難関係人の自宅に立ち寄って休息したのち、20時40分同桟橋を発進して、帰途についた。 A指定海難関係人は、20時53分少し過ぎ広畑東防波堤灯台から209度1.6海里の地点において、前方の姫路市飾磨区付近の街の明かりなどを見ながら、針路を046度に定め、機関を全速力前進にかけて20.9ノットの対地速力で手動操舵により進行し、同時57分半飾磨新西防波堤灯台(以下、灯台の名称は「飾磨」を省略する。)から250度1,530メートルの地点に達したとき、針路を060度に転じ、同灯台から051.5度1,900メートルの所に設置してある関西電力姫路第1発電所の煙突(204メートル)の標識灯を船首目標とし、飾磨西防波堤に向首接近していることに気付かないまま続航した。 平成2は、その後、飾磨西防波堤に著しく接近したけれども、船位の確認が行われないまま進行し、海面付近が暗いことからA指定海難関係人が同防波堤の存在に気付かないでいるうち、21時00分新西防波堤灯台から327度270メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その船首が飾磨西防波堤の西側に北方から87度の角度で衝突した。 当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、視界は良好であった。 A指定海難関係人は、知人などが負傷していることから、携帯電話で警察に通報し、来援した姫路海上保安署の巡視艇の指示により坊勢汽船株式会社の桟橋に接岸して、負傷者を待機していた救急車で病院に搬送した。 衝突の結果、平成2は船首を1メートル圧壊し、レーダーが破損したが、のちいずれも修理された。また、知人が多発肋骨骨折を、同人の友人の娘が頬部挫創などの重傷を負った。
(原因) 本件防波堤衝突は、夜間、姫路港飾磨区において、有資格者を乗り組ませず、かつ、船位の確認が行われないまま飾磨西防波堤に向首する針路で進行したことによって発生したものである。
(指定海難関係人の所為) A指定海難関係人が、夜間、姫路港飾磨区において、有資格者を乗り組ませないまま単独で発航し、飾磨西防波堤に向首する針路で進行したことは、本件発生の原因となる。 A指定海難関係人に対しては、本件発生後、B社長から厳重な注意を受け、事後平成2に乗船していない点に徴し、勧告しない。
よって主文のとおり裁決する。 |