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2000年(平成12年)

平成12年横審第17号
    件名
貨物船かつらぎ丸桟橋衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年6月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

勝又三郎
    理事官
河野守

    受審人
A 職名:かつらぎ丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
かつらぎ丸・・・・・・・・・右舷船首部に凹損及び右舷船尾部に擦過傷
鹿島石油第4号出荷桟橋・・・先端面のコンクリート床に亀裂及び防舷材の脱落等の損傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件桟橋衝突は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年10月5日18時20分
鹿島港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船かつらぎ丸
総トン数 698トン
全長 75.27メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 882キロワット
3 事実の経過
かつらぎ丸は、専ら鋼材輸送に従事する船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、鋼材1,609トンを積載し、船首4.20メートル船尾5.20メートルの喫水をもって、平成11年10月5日18時00分鹿島港住友金属工業専用岸壁を発し、成規の灯火を点灯し、田子の浦港に向かった。
A受審人は、単独で離岸時から操舵操船に当たり、18時10分鹿島港導灯(前灯)(以下「導灯」という。)から263度(真方位、以下同じ。)3,270メートルの地点に達したとき、出港部署配置を解き、針路を鹿島石油第6号出荷桟橋に向く131度に定めて自動操舵とし、機関を毎分210回転の4.5ノットの対地速力で進行した。

A受審人は、錨洗浄に使っていた雑用水ポンプを止め、その後船橋後部の海図台で後方を向いて航海日誌の記入を始め、時折振り返ってカラーレーダーの映像を見ていたものの、慣れた港なので大丈夫と思い、船位の確認を十分に行わず、18時14分少し過ぎ導灯から255度2,910メートルの内港北水路から港口に向かう水路に至る転針地点に達したが、このことに気付かずに続航した。
18時15分A受審人は、導灯から253度2,880メートルの地点に達したとき、ふと前方を見て、鹿島石油出荷桟橋に接近しすぎていることに気付き、急いで、手動操舵に切り替え、左舵一杯とし、同時16分機関停止、次いで後進一杯としたものの、及ばず、18時20分導灯から245度2,390メートルの地点にあたる、鹿島石油第4号出荷桟橋先端面に、055度を向いたかつらぎ丸の右舷船首部が約1ノットの速力で衝突した。

当時、天候は霧雨で、風力2の北風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
衝突の結果、かつらぎ丸は、右舷船首部に凹損及び右舷船尾部に擦過傷を生じ、鹿島石油第4号出荷桟橋は、先端面のコンクリート床に亀裂及び防舷材の脱落等の損傷を生じたが、のちいずれも修理された。


(原因)
本件桟橋衝突は、夜間、鹿島港において、出港部署配置を解き、内港水路を航行する際、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、鹿島港において、出港部署配置を解き、内港水路を航行する場合、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、慣れた港内水域なので大丈夫と思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、北水路から港口に至る水路の転針地点近くに達したとき、鹿島石油出荷桟橋に著しく接近していることに気付くことなく進行し、同第4号出荷桟橋先端面に衝突し、かつらぎ丸の右舷船首部に凹損及び右舷船尾部に擦過傷を、鹿島石油第4号出荷桟橋のコンクリート床に亀裂及び防舷材の脱落等の損傷をそれぞれ生じさせるに至った。






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