日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年横審第141号
    件名
水先船いらご1漁船功盛丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年6月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

猪俣貞稔、勝又三郎、向山裕則
    理事官
葉山忠雄

    受審人
A 職名:いらご1船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:功盛丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
いらご・・・船首材等に擦過傷
功盛丸・・・右舷側中央部外板に亀裂及び船橋に圧壊並びに航海計器に損傷、船長が、右大腿四頭筋部分断裂

    原因
いらご・・・見張り不十分、船員の常務(新たな危険)不遵守(主因)
功盛丸・・・動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、いらご1が、見張り不十分で、功盛丸に対し、新たな衝突のおそれを生じさせたことによって発生したが、功盛丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年12月11日05時35分
伊良湖岬北方
2 船舶の要目
船種船名 水先船いらご1 漁船功盛丸
総トン数 19トン 14トン
全長 19.65メートル
登録長 16.64メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 735キロワット
漁船法馬力数 160
3 事実の経過
いらご1(以下「いらご」という。)は、操縦席を船体中央部に設けたFRP製水先船で、A受審人ほか1人が乗り組み、伊良湖三河湾水先区の水先人1人を乗せ、船首0.8メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、平成10年12月11日04時35分愛知県伊良湖港を発し、伊勢湾第1号灯浮標南方の水先人乗船地点に向かい、同地点に至って水先人を乗船させたのち、05時15分伊良湖岬灯台から152度(真方位、以下同じ。)5.2海里の地点を発進し、伊良湖水道航路第2号灯浮標のわずか東方に向首する327度に針路を定め、機関を全速力前進にかけ、航行中の水先業務に従事している灯火を表示したまま、18.0ノットの対地速力で手動操舵により帰途についた。

A受審人は、操縦席に座って操船に当たり、作動中のレーダーを監視しないまま進行し、05時27分半伊良湖水道航路第2号灯浮標に並航したのち、同時32分ごろ伊良湖岬を右舷正横900メートルばかりに航過し、このころから右舷正横わずか前方に見えてきた、伊良湖港防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)の北側に向けて転針する時機を窺(うかが)いながら続航した。
05時33分わずか前A受審人は、伊良湖岬灯台から266度1,040メートルの地点に達したとき、右舷船首53度1,650メートルのところに功盛丸の白、緑2灯を視認できる状況にあり、互いに右舷を対して無難に航過する態勢であったが、前路に散在している漁船10数隻の灯火に気を奪われ、見張り不十分で、それらのほぼ東端方向に存在した功盛丸を見落としたまま右転を始めた。
05時33分半A受審人は、防波堤灯台の北方沖合に向けて回頭を終え、046度の針路となったとき、中山水道第2号灯浮標至近の左舷船首19度1,100メートルのところを南下中の功盛丸に対して新たな衝突のおそれを生じさせ、その後方位がほとんど変わらず衝突のおそれのある態勢で接近するようになったが、依然として同船に気付かず、機関を中立にするなどして、衝突を避けるための措置をとることなく進行した。

05時35分少し前A受審人は、左舷前方に波状の白掛かった物体を認め、探照灯を点灯したところ、至近に迫った功盛丸の船体を初めて認め、直ちに機関を全速力後進としたが及ばず、05時35分伊良湖岬灯台から334度900メートルの地点において、同じ針路のまま、約10ノットの速力になったとき、その船首部が功盛丸の右舷中央部に前方から53度の角度で衝突した。
当時、天候は曇で風力3の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、潮流はほとんどなく、視界は良好であった。
また、功盛丸は、主としてしらす機船船曳(ひき)網漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.2メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、同日05時00分愛知県篠島港を発し、渥美半島遠州灘側沖合の漁場に向かった。
B受審人は、航行中の動力船の灯火に加えてマスト上部に白色全周灯を点け、手動操舵により操船に当たり、05時07分尾張野島灯台から317度930メートルの地点において、針路を伊良湖岬沖合に向かう173度に定め、機関を半速力にかけ、10.0ノットの対地速力で、同じ漁場に向かう僚船の最後尾に位置して進行した。

05時33分わずか前B受審人は、伊良湖岬灯台から342度1,540メートルの地点に達したとき、右舷船首27度1,650メートルのところに、いらごの連掲した白、紅2灯及び緑灯を初認し、それらの灯火の見え具合から、互いに右舷を対して無難に航過する態勢の水先船と知り、同船が伊良湖港に向かって転針することがあることを知っていたものの、自船の進路方向に針路を転じることはあるまいと思い、いらごから目を離して中山水道第2号灯浮標や伊良湖岬灯台の灯火を船首目標として続航した。
05時33分半B受審人は、いらごが防波堤灯台の北方沖合に向けて転針したことで自船の進路と交差し、その後新たな衝突のおそれのある状況が生じたが、いらごの動静監視を十分に行っていなかったので、この状況に気付かず、大幅に右転するなどして衝突を避けるための措置をとることなく進行中、同時35分わずか前至近に現れた同船の船体を認め、直ちに機関を微速力としたが及ばず、同じ針路のまま、約6ノットの速力になったとき、前示のとおり衝突した。

衝突の結果、いらごは船首材等に擦過傷を生じ、功盛丸は右舷側中央部外板に亀裂及び船橋に圧壊並びに航海計器に損傷が生じたが、のちいずれも修理された。また、B受審人が、右大腿四頭筋部分断裂を負った。

(原因)
本件衝突は、夜間、伊良湖岬北方において、北上中のいらごが、伊良湖港に向かって右転する際、見張り不十分で、南下中の功盛丸に対して新たな衝突のおそれを生じさせたばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことによって発生したが、功盛丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、伊良湖水道を北上中、伊良湖港に向かうためほぼ直角に右転しようとする場合、転針することによって新たな衝突のおそれを生じさせる船舶を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、前路に10数隻の漁船の灯火を認めていたものの、新たな衝突のおそれを生じさせる船舶はいないと思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、無難に航過する態勢で南下中の功盛丸に気付かず、同船の進路方向に転針し、同船に対して新たな衝突のおそれを生じさせたばかりか、衝突を避けるための措置をとることなく進行して衝突を招き、いらごの船首材等に擦過傷を生じ、功盛丸の右舷側中央部外板に亀裂及び船橋に圧壊並びに航海計器に損傷を生じさせ、B受審人に右大腿四頭筋部分断裂を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、夜間、伊良湖岬北方において、漁場に向かって南下中、いらごが連掲した白、紅2灯及び緑灯を視認し、同船が互いに右舷を対して無難に航過する態勢の水先船であると知った場合、同船が伊良湖港に向かって右転することもあるから、その後の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、互いに右舷を対して無難に航過する状況にあり、自船の進路方向に転針してくることはあるまいと思い、その後の動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、いらごが右転して伊良湖港に向けたことにより、新たな衝突のおそれがある態勢で接近するようになったことに気付かず、衝突を避けるための措置をとることなく進行して衝突を招き、前示の損傷を生じさせ、自らも負傷するに至った。

以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって、主文のとおり裁決する。

参考図






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION