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2000年(平成12年)

平成12年函審第4号
    件名
貨物船第一徳神丸漁船第151関丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年5月23日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

酒井直樹、大石義朗、大山繁樹
    理事官
東晴二

    受審人
A 職名:第一徳神丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:第151関丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
徳神丸・・・船尾部左舷側ブルワークに凹損、付近ハンドレールを曲損
関丸・・・右舷船首外板及びブルワークを圧壊

    原因
関丸・・・動静監視不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
徳神丸・・・警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第151関丸が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る第一徳神丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第一徳神丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Bの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年3月4日20時10分
北海道十勝港東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第一徳神丸 漁船第151関丸
総トン数 499トン 19トン
全長 75.87メートル 21.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット 478キロワット
3 事実の経過
第一徳神丸(以下「徳神丸」という。)は、木更津港、京浜港及び千葉港から穀物、肥料及び家畜飼料などを北海道各港に輸送している船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、肥料1,000トンを載せ、船首3.35メートル船尾4.70メートルの喫水をもって、平成10年3月2日18時30分木更津港を発し、北海道釧路港に向かった。
A受審人は、浦賀水道を出航したのち航海中の船橋当直を同人、一等航海士及び次席一等航海士の3人による単独4時間当直の三直制として本州の東岸に沿って北上したのち三陸沖合から北海道襟裳岬の東方沖合に向け北上し、同月4日18時00分襟裳岬灯台から132度(真方位、以下同じ。)4.0海里の地点に達したとき昇橋し、船橋当直中の次席一等航海士に指示して針路を北海道十勝港の東方7海里ばかりのところに向く020度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で自動操舵により進行し、航行中の動力船の灯火の表示を確認したのち同人に当直を任せて降橋した。

A受審人は、19時50分広尾灯台から130度8.4海里の地点に達したとき、再び昇橋して次席一等航海士から当直を引き継いで単独船橋当直に就き、針路を釧路港に向く036度に転じて続航した。
A受審人は、19時59分広尾灯台から118度8.4海里の地点に達したとき、左舷船首41度2.0海里に、前路を右方に横切る態勢で東行中の第151関丸(以下「関丸」という。)の白、緑2灯を初めて認め、その動静監視に当たっていたところ、その後同船の方位が変わらず衝突のおそれのある態勢で接近していることを知った。
A受審人は、20時08分関丸が方位変わらず700メートルに接近したとき、警告信号を吹鳴せず、同船に向けて探照灯を数回照射したが、同船に避航の気配が認められなかった。しかし、同人は、探照灯を照射して自船の接近を知らせたから、いずれ関丸が右転するなどの避航動作をとるものと思い、速やかに右転するなどの衝突を避けるための協力動作をとることなく続航中、同時10分わずか前、60メートルに迫っても依然、避航する気配が無いので、危険を感じて右舵一杯をとったが効なく、20時10分広尾灯台から105度8.9海里の地点において、040度に向いた徳神丸の船尾部左舷側に、関丸の右舷船首が、後方から70度の角度で衝突した。

当時、天候は晴で、風力2の南風が吹き、潮候はほぼ高潮時で、視界は良好であった。
また関丸は、すけとうだら刺網漁業に従事する鋼製漁船で、前日に設置しておいた刺網2連の揚網作業の目的で、B受審人ほか5人が乗り組み、投網準備した刺網2連を載せ、船首0.80メートル船尾2.50メートルの喫水をもって、同日19時00分十勝港を発し、同港の東方17海里ばかりの漁場に向かった。
発航したときB受審人は、航行中の動力船の灯火を表示して単独船橋当直に就き、十勝港防波堤入口東方の沖防波堤の内側に沿って南下したのち徐々に左転して東方に向かい、19時13分広尾灯台から080度1.5海里の地点に達したとき、針路を前示漁場の少し南方に向く110度に定め、機関を全速力前進にかけ、8.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
B受審人は、19時40分広尾灯台から101度4.9海里の地点に達したとき、8海里レンジとしたレーダーで右舷船首61度6.1海里に徳神丸の映像を初めて認め、レーダーのプロッテング装置によりその動静監視に当たっていたところ、19時50分広尾灯台から103度6.2海里の地点に達したとき、同船のレーダー映像が右舷船首65度3.9海里となり、同映像の方位が4度ばかり右方に変わったことから、レーダー監視を中止し、操舵室後部の床に腰を下ろして夕食をとり始めた。

B受審人は、夕食をとり始めたころ徳神丸が右転し、そのレーダー映像の方位が変わらず接近するようになったが、レーダー監視を中止していたので、このことに気付かず、19時59分右舷船首65度2.0海里に徳神丸の白、白、紅3灯を視認できる状況となり、その後、同船が前路を左方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近した。しかし、同人は、同船のレーダー映像を初認したころ、その方位が明確に右方に変わったことから、同船が無難に替わるものと思い、依然、操舵室後部の床に腰を下ろしたまま食事を続け、衝突のおそれの有無を判断できるよう、立ち上がってその動静を監視しなかったので、このことに気付かず、速やかに右転するなどして同船の進路を避けることなく、20時08分同船が点じた探照灯の光にも気付かずに続航中、突然、衝撃を受け、原針路、全速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、徳神丸は船尾部左舷側ブルワークに凹損を生じ、付近ハンドレールを曲損し、関丸は右舷船首外板及びブルワークを圧壊したが、のち損傷部は修理された。


(原因)
本件衝突は、夜間、北海道十勝港東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、関丸が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る徳神丸の進路を避けなかったことによって発生したが、徳神丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
B受審人は、夜間、単独船橋当直に就いて北海道十勝港東方沖合を東行中、レーダーにより右舷船首遠方に徳神丸の映像を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静を十分に監視すべき注意義務があった。しかるに、同人は、同船のレーダー映像を初認したころ、その方位が明確に右方に変わったことから、そのまま右方に無難に替わるものと思い、操舵室後部の床に腰を下ろして夕食をとり始め、その動静を監視しなかった職務上の過失により、夕食をとり始めたころ、同船が右転し、前路を左方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、速やかに右転するなどして同船の進路を避けることなく進行して衝突を招き、徳神丸の船尾部左舷側ブルワークに凹損を生じさせ、付近ハンドレールを曲損させ、関丸の右舷船

首外板及びブルワークを圧壊させるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
A受審人は、夜間、単独船橋当直に就いて北海道十勝港東方沖合を北上中、左舷前方に前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近する関丸を認め、更に接近するも避航の気配が認められない場合、速やかに右転するなどの衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、同船に向けて探照灯を数回照射して自船の接近を知らせたから、いずれ関丸が右転するなどの避航動作をとるものと思い、速やかに右転するなどの衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、協力動作をとることなく進行して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。

以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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