日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年神審第115号
    件名
プレジャーボート大門突堤衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年4月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

黒岩貢
    理事官
橋本學

    受審人
A 職名:大門船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
大門・・・船首部が破損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件突堤衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年7月20日20時40分
徳島県今切港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート大門
登録長 6.46メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 154キロワット
3 事実の経過
大門は、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人2人を乗せ、周遊及び魚釣りの目的で、船首0.7メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成10年7月20日11時00分定係港である徳島小松島港徳島区内の眉山マリーナを発し、香川県小豆島から高松港沖合にかけて周遊を行い、同日18時30分兵庫県淡路島鎧埼南東方1海里の地点に至り、しばし魚釣りに興じたのち、20時05分同釣り場を発進し、定係港への帰途についた。
A受審人は、自ら操舵操船に当たって鳴門海峡を南下し、20時22分大磯埼灯台から097度(真方位、以下同じ。)1,600メートルの地点に達したとき、眉山マリーナへの入口となる徳島小松島港内新町川河口に向け、陸岸から2海里ばかり離れて直行することを考えたが、夜間の航行経験が少なく、沖合を通ることに不安を覚えたことから、陸岸に沿って航行することに決め、針路を陸岸寄りとなる207度に定め、機関を半速力前進とし、19.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。

ところで、大磯埼から新町川河口にかけては、遠浅の岸線が凹状に湾曲し、ところどころに導流堤や防砂堤などが存在するうえ、同県今切港南方には陸岸から沖合に向けて突き出した長さ400メートルの灯火設備のない川内突堤が築かれているなど、障害物が多く存在し、陸岸沿いを航行する船舶は、岸線に対し十分な距離を保って航行することができるよう、船位を確認する必要があった。
20時37分半A受審人は、今切港長原導流堤灯台(以下「導流堤灯台」という。)の灯光を右舷側に並航し、同灯台から116度500メートルの地点に達したとき、このまま続航すると湾曲した陸岸に急速に接近するばかりか、正船首1,400メートルとなった川内突堤先端部に向首し、衝突するおそれのある状況となったが、まだ岸線からはかなり離れているものと思い、周囲の航路標識等を利用するなどして船位の確認を行っていなかったため、このことに気付かず、同針路のまま続航した。

A受審人は、その後も船位の確認を行わないまま進行し、20時40分大門は、導流堤灯台から183度1,500メートルの地点において、原針路、原速力のまま、川内突堤に対し65度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の南東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
衝突の結果、大門は船首部が破損したが、川内突堤には損傷がなかった。


(原因)
本件突堤衝突は、夜間、鳴門海峡南方の凹状に湾曲した陸岸に沿って航行する際、船位の確認が不十分で、陸岸から突き出した灯火設備のない川内突堤に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、鳴門海峡南方の凹状に湾曲した陸岸に沿って航行する場合、同陸岸沿いには航行の障害となるものが多数存在したから、岸線から十分な距離を保って航行できるよう、周囲の航路標識を利用するなどして船位の確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、岸線からはかなり距離があるものと思い、船位の確認を行わなかった職務上の過失により、陸岸に接近していることに気付かないまま進行して川内突堤への衝突を招き、自船の船首を破損させるに至った。






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION