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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年9月1日13時20分 宮城県塩釜港 2 船舶の要目 船種船名
押船恵山丸 土運船第1202和光丸 総トン数 19トン 975トン 全長 16.70メートル 51.0メートル 幅
14.0メートル 深さ 4.8メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
956キロワット 3 事実の経過 恵山丸は、2基2軸の鋼製押船で、A受審人ほか1人が乗り組み、作業員1人を乗せ、浚渫土砂陸揚げの目的で、同土砂1,000トンを満載して船首尾とも3.80メートルの等喫水の非自航土運船第1202和光丸(以下「和光丸」という。)の船尾に設置された凹部材に船首部を嵌合(かんごう)し、全長67.7メートルの押船列(以下「恵山丸押船列」という。)とし、船首1.30メートル船尾2.40メートルの喫水をもって、平成11年9月1日13時05分塩釜港仙台船だまり防波堤灯台(以下「船だまり灯台」という。)南方約200メートル沖合で浚渫工事に従事している浚渫作業船々側を発し、宮城県塩釜港仙台区向洋埠頭(ふとう)へ向かった。 ところで、向洋埠頭は、船だまり灯台南東方510メートルに同埠頭西端があり、同端から385メートル東方に向洋埠頭の岸線(以下「向洋岸壁」という。)が延びており、向洋岸壁西端付近には、水深2メートルより浅い海域があった。 A受審人は、発航後、単独で操舵操船にあたり、13時16分少し過ぎ、船だまり灯台から116度(真方位、以下同じ。)640メートルの地点で、針路を095度に定め、機関を半速力前進にかけ、4.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。 定針したころ、A受審人は、向洋岸壁の東端付近に大型貨物船(以下「貨物船」という。)が西方を向いて係留しているのを認め、貨物船の西側の岸壁(以下「着岸岸壁」という。)に左舷付けをすることとし、13時17分少し前右舵一杯をとって右回頭を始め、その後回頭により速力が落ちたものの、そのまま右回頭を続けた。 13時18分少し過ぎA受審人は、船だまり灯台から120度760メートルの地点に達し、舵を中央に戻して右回頭中の船首が248度を向いたとき、貨物船に著しく接近しそうになったので、少し機関の回転数を上げ、同時19分少し前船首が回頭惰力により266度に向き、速力が少し上がり、貨物船を左舷方に10メートル離して替わし、恵山丸押船列船首と着岸岸壁までの距離が130メートルになり、このままの速力で進行すれば、同岸壁に衝突するおそれがあったが、もう少し着岸岸壁に接近してから機関を後進にかければその手前で停止できるものと思い、直ちに機関を停止し、必要に応じて後進にかけるなどして減速を十分に行うことなく、過大な速力のまま着岸岸壁に接近した。 13時19分少し過ぎA受審人は、船だまり灯台から125度690メートルの地点に達し、恵山丸押船列船首が着岸岸壁まで65メートルに接近したとき、機関を全速力後進にかけたが、間に合わず、13時20分船だまり灯台から133度608メートルの地点において、恵山丸押船列は、2.0ノットの前進惰力で266度に向首したまま、その左舷船首が着岸岸壁に衝突した。 当時、天候は曇で風力4の北東風が吹き、潮侯は上げ潮の初期であった。 衝突の結果、恵山丸に損傷はなく、和光丸は左舷船首部及び左舷船尾部各外板に凹損を、向洋岸壁は防舷材及び防舷台座等に損傷をそれぞれ生じた。
(原因) 本件岸壁衝突は、塩釜港仙台区において、向洋岸壁に着岸する際、減速が不十分で、過大な速力をもって着岸岸壁に接近したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、塩釜港仙台区において、向洋岸壁に着岸する場合、過大な速力で接近しないよう、機関を停止し、必要に応じて後進にかけるなどして減速を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、もう少し着岸岸壁に接近してから機関を後進にかければその手前で停止できるものと思い、減速を十分に行わなかった職務上の過失により、過大な速力で着岸岸壁に接近して同岸壁との衝突を招き、和光丸の左舷船首部及び左舷船尾部各外板に凹損、並びに向洋岸壁の防舷材及び防舷台座等に損傷をそれぞれ生じさせるに至った。 |