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2000年(平成12年)

平成12年仙審第7号
    件名
漁船第七蛸島丸乗組員死亡事件

    事件区分
死傷事件
    言渡年月日
平成12年6月8日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

上野延之、根岸秀幸、長谷川峯清
    理事官
山本哲也

    受審人
A 職名:第七蛸島丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
甲板員が左前腕を切断、出血性ショックで死亡

    原因
索具取扱いの安全措置不十分

    主文
本件乗組員死亡は、索具取扱いの安全措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年9月10日19時45分
青森県八戸港北東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第七蛸島丸
総トン数 135トン
全長 46.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 860キロワット
3 事実の経過
第七蛸島丸(以下「蛸島丸」という。)は、大中型まき網漁業の網船として従事する中央に船橋のある船首楼付一層甲板型鋼製漁船で、A受審人、B指定海難関係人及び甲板員Cほか17人が乗り組み、さば漁の目的で、レッコボートを船尾に引き、船首2.8メートル船尾4.0メートルの喫水をもって、平成11年9月10日16時45分魚探船1隻及び運搬船2隻とともに船団を組んで青森県八戸港を発し、同港北東方沖合15海里の漁場に向かった。
ところで、蛸島丸は、船首楼甲板上に、同甲板上から船首側が高さ750ミリメートル(以下「ミリ」という。)及び船尾側が高さ600ミリの作業甲板が架設され、同作業甲板上の右舷側に双頭立型ローラ(以下「立ローラ」という。)、その船尾方1.5メートルに同ローラ等の操作レバースタンド、左舷側にスタンドローラ及び両舷のブルワークにフェアリーダ、並びに船首上甲板上の船首側中央に大手巻ウインチ、同甲板上の左舷船尾側に環巻ウインチ及びその船尾方にパワーウインチ等の油圧漁撈機械がそれぞれ設けられていた。立ローラは、直径410ミリ高さ450ミリの駆動ドラムが前後して2本装備され、船首楼甲板上からの高さが、それぞれ1,750ミリ及び1,600ミリであった。

漁網(以下「網」という。)は、長さが1,500メートル、網丈が中央部200メートル及び両側縁150メートルで、網下縁の沈子側に長さ2,000メートル直径21ないし30ミリの環ワイヤロープ(以下「環ロープ」という。)、網上縁の浮子側に長さ1,500メートル直径60ミリの大手巻合成繊維製ロープ(以下「浮子ロープ」という。)及び浮子側の両側端に長さ500メートルと80メートル直径24ミリのワイヤロープ(以下「大手巻ロープ」という。)、並びに沈子側に長さ40メートル直径48ミリの合成繊維製ロープ(以下「絞り綱」という。)が取り付けてあった。
操業方法は、大手巻、環両ロープ及び絞り綱の各端部をレッコボートに渡して投網を開始し、魚群を探知した魚探船を取り巻くように投網して展開したのち、レッコボートから前示各端部を受け取り、レッコボートにうらこぎさせながら、絞り綱を立ローラ、環ロープを環巻ウインチ、浮子ロープを大手巻ウインチ及び環ロープの自船側片端をパワーウインチでそれぞれ巻き揚げ、環ロープを巻き揚げたのち、魚探船を展開した網から外に出し、その後大手巻ロープを巻き揚げたのち、船尾のネットホーラーに網の一端を掛けて網の揚収にかかり、右舷ブルワーク上のサイドローラを使用して揚網を続け、網の展開径が小さくなったところで運搬船に網に入った魚を揚げてから船内に網を収容するものであった。

19時20分A受審人は、鮫角灯台から064度(真方位、以下同じ。)15.4海里の地点で、マストに取り付けられた500ワットの各作業灯を点灯し、レッコボートに乗組員1人及び魚探船の乗組員1人を乗り組ませ、船首部にC甲板員ほか3人、船橋に自らとB指定海難関係人、船尾部に乗組員13人をそれぞれ配置して操業を開始し、魚群を囲い込むようにして投網を終え、レッコボートから大手巻、環両ロープ及び絞り綱を受け取り、船首部上甲板上の2人に環ロープの両端を環巻ウインチとパワーウインチとでそれぞれ巻き揚げさせ、作業甲板上船首側の1人に球状船首に網がかかるかどうか監視させ、立ローラの船首側ローラ駆動ドラム(以下「ドラム」という。)と同ドラム操作レバースタンドの間の同ドラムから左舷船尾方40センチメートル離れたところに立ったC甲板員に、絞り綱を右舷船首のフェアリーダから左舷船首スタンドローラを経てドラム下部から上方に4ないし5回巻き付けて取り込みながら作業甲板上にコイルする作業(以下「立ローラ作業」という。)を行わせていた。
C甲板員は、1年前から船員として蛸島丸に乗船し、1箇月半前から立ローラ作業に当たり、20回ほど同作業を経験していた。
B指定海難関係人は、A受審人に操業中乗組員各自が事故防止を十分に注意するように指導していたので大丈夫と思い、立ローラ作業の絞り綱がドラムに逆巻きになった際、ドラムをいったん停止してから直すなど索具取扱いの安全措置について平素からC甲板員を指導するようA受審人に対して指示を十分にしなかった。また、A受審人は、他の乗組員が立ローラ作業中のC甲板員に注意を与えるものと思い、同安全措置について平素から同甲板員に対して指導を十分にすることなく、同甲板員を立ローラ作業に従事させていた。

19時44分A受審人は、環ロープの巻揚げが終了したので、いつものように揚網作業に従事するため降橋して船尾に向かった。
19時45分わずか前B指定海難関係人は、船尾の揚網作業の監視を続けていたとき、立ローラ作業現場で絞り綱がドラムに逆巻きになったが、ゴム手袋及びゴム長靴を着用したC甲板員が、同ドラムをいったん停止してから直すことなど索具取扱いの安全措置について指導を十分に受けていなかったことから、同ドラムをいったん停止しなくても逆巻きを直せるものと思い、利き腕の左手で絞り綱を握って強く引っ張っているうち、19時45分鮫角灯台から066度14.3海里の地点において、左前腕をドラムに巻き込まれた。
当時、天候は晴で風力2の南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
A受審人は、船首方の騒ぎでC甲板員がドラムに巻き込まれたことに気付き、事後の措置に当たった。

その結果、C甲板員(昭和50年10月22日生)は左前腕を切断し、魚探船で八戸港に運ばれて救急車で病院に搬送されたが、出血性ショックで死亡した。

(原因)
本件乗組員死亡は、八戸港北東方沖合の漁場において、揚網作業中、絞り綱がドラムに逆巻きになった際、索具取扱いの安全措置が不十分で、立ローラ作業中の乗組員が同ドラムに左前腕を巻き込まれたことによって発生したものである。
安全措置が十分でなかったのは、漁撈長が逆巻きになった索具取扱いについて平素から乗組員を指導するよう船長に対して指示を十分にしなかったこと及び船長が同取扱いについて平素から乗組員に対して指導を十分にしていなかたことと、立ローラ作業中の乗組員がドラムをいったん停止しないで逆巻きになった索具を強く引っ張ったこととによるものである。


(受審人等の所為)
A受審人は、八戸港北東方沖合の漁場において、揚網作業中、絞り綱がドラムに逆巻きになった場合、ドラムをいったん停止してから直すなど逆巻きになった索具取扱いの安全措置について平素から乗組員に指導を十分にするべき注意義務があった。しかるに、同人は、他の乗組員が立ローラ作業中の乗組員に注意を与えるものと思い、指導を十分にしなかった職務上の過失により、立ローラ作業中の乗組員の左前腕がドラムに巻き込まれて同腕を切断させ、同人を死亡させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人が、揚網作業中、絞り綱がドラムに逆巻きになった際、ドラムをいったん停止してから直すなど索具取扱いの安全措置について乗組員を平素から指導するよう船長に指示を十分にしなかったことは、本件発生の原因となる。

B指定海難関係人に対しては、本件発生以後、船団の乗組員を集めて立ローラ作業中の索具取扱いの安全措置を周知徹底し、また、深く反省している点に徴し、勧告しない。

よって主文のとおり裁決する。






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