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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年5月6日13時40分 京都府舞鶴湾 2 船舶の要目 船種船名
プレジャーボート共栄丸 全長 7.27メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
14キロワット 3 事実の経過 共栄丸は、船体中央部やや船尾寄りに操舵室を設けた、和船型のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、同乗者1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首尾とも0.4メートルの喫水をもって、平成11年5月6日08時30分京都府舞鶴港第1区、高野川河口右岸の係留地を発し、同港第3区の長曽根付近に至り、その後同港域内で釣り場を変えて釣りを行ったものの、釣果がなかったので、舞鶴湾金ケ岬西方沿岸の釣り場に移動することにした。 ところで、金ケ岬西方沿岸一帯には、時期により随所に定置網が多数存在し、当時、神崎2号と称する小型定置網が同岬南西方1,000メートルばかりのところに設置され、博奕岬灯台から217度(真方位、以下同じ。)3,650メートルの海岸を基点として、270度方向に長さ約250メートルの道網が沖に向けて延び、これと直角に多数の浮子が取り付けられた長さ約200メートル幅約50メートルの本網が南北方向に海岸に沿って設置されていた。 13時00分A受審人は、前示定置網の北方近距離の釣り場に至り、機関を中立運転として漂泊を始め、その後折からの北風と潮に流されて道網に近づいたときには、機関を使用して元の位置付近に潮昇りする繰り返しで釣りを続け、同時30分道網の北方80メートルにあたる、博奕岬灯台から219度3,650メートルの地点で潮昇りを終え、機関を中立運転とし、船首を北方に向け漂泊して釣りを再開した。 A受審人は、船首部に自らが、また同乗者が船尾部にそれぞれ腰を掛けていずれも左舷側に竿を出し、折からの北風と潮流の影響により、船首を北方に向け0.3ノットの対地速力で、ゆっくりと南方に圧流されながら釣りを行っていたところ、13時36分ごろ同乗者の釣糸に獲物がかかり、その直後に釣糸が絡んだので、これを解く作業を始めたが、短時間で終わるから大丈夫と思い、釣糸の絡みを解くことに気をとられ、定置網との接近状況を確かめて船位の確認を行わなかった。 こうして、A受審人は、同作業を続けているうち、船体が南方に圧流され続けて定置網の道網に近づき、13時40分博奕岬灯台から218度3,710メートルの地点において、共栄丸は船首を000度に向け、0.3ノットの対地速力で、定置網の道網に乗り入れた。 当時、天候は晴で風力3の北風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。 その結果、定置網は道網に破損を生じ、一方、共栄丸はプロペラに絡網して航行不能となったが、救助船により同網から引き出された。
(原因) 本件定置網損傷は、京都府舞鶴湾の金ケ岬西方沿岸において、漂泊して魚釣り中、船位の確認が不十分で、風潮流に圧流されて定置網に乗り入れたことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、金ケ岬西方沿岸に設置された定置網の近くで、風潮流に圧流されながら漂泊して魚釣り中、絡んだ釣糸を解く作業に当たる場合、南方に圧流され続けて定置網に乗り入れることのないよう、これとの接近状況を確かめて船位を確認すべき注意義務があった。ところが、同人は、短時間で終わるから大丈夫と思い、釣糸の絡みを解くことに気をとられ、定置網との接近状況を確かめて船位を確認しなかった職務上の過失により、風潮流に圧流されて定置網に乗り入れ、定置網の道網に破損を与え、自船のプロペラに網を絡ませて航行不能に陥るに至った。 |