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2000年(平成12年)

平成11年広審第12号
    件名
貨物船第一大黒丸灯浮標損傷事件(簡易)

    事件区分
施設等損傷事件
    言渡年月日
平成12年2月22日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

黒岩貢
    理事官
前久保勝巳

    受審人
A 職名:第一大黒丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
大黒丸・・・・・・左舷船首部に擦過傷
第3号灯浮標・・・防護枠、やぐら等に損傷

    原因
見張り不十分

    主文
本件灯浮標損傷は、見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年1月30日23時19分
山口県 平郡水道
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第一大黒丸
総トン数 330トン
全長 58.57メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第一大黒丸(以下「大黒丸」という。)は、瀬戸内海諸港間の雑貨輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか3人が乗り組み、空倉のまま、船首1.0メートル船尾2.6メートルの喫水をもって、平成10年1月30日17時37分福岡県苅田港を発し、法定灯火を表示して広島県瀬戸田港に向かった。
21時50分A受審人は、祝島南方で単独の船橋当直に就き自動操舵により平郡水道を東行し、22時55分下荷内(しもにない)島灯台から139度(真方位、以下同じ。)1.5海里の地点に達したとき、6海里レンジとしたレーダーで平郡水道第3号灯浮標(以下「第3号灯浮標」という。)を探知し、自動操舵の針路設定つまみを同灯浮標の方位に合わせることにより、針路をほぼ海図記載の推薦航路線に沿う086度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で進行したところ、23時07分少し過ぎ同灯台から107度3.5海里の地点に至ったとき、ようやく正船首2.2海里に船首目標となる第3号灯浮標の灯光を視認した。

23時12分半A受審人は、下荷内島灯台から102度4.4海里の地点に達し、速力の遅い同航船を追い抜いたところ、前路に関係する他船がいなくなったうえ、第3号灯浮標まではまだ距離があるものと思っていたことから、周囲の見張りが疎かになり、そのころ1.2海里に接近していた同灯浮標の灯光からもレーダーからも目を離したまま進行した。
23時17分半A受審人は、下荷内島灯台から099度5.3海里の地点に達したとき、正船首の第3号灯浮標まで500メートルに接近したが、依然、同灯浮標まではまだ距離があるものと思い、見張りを十分に行うことなく、このことに気付かず、同灯浮標を避けないまま続航中、同時19分わずか前左舷船首至近に同灯浮標の灯光を認めたものの、どうすることもできず、23時19分大黒丸は、下荷内島灯台から099度5.4海里の地点において、原針路、原速力のままその左舷船首部が第3号灯浮標に衝突した。

当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、付近には微弱な東流があった。
この結果、大黒丸は左舷船首部に擦過傷を、第3号灯浮標は防護枠、やぐら等に損傷をそれぞれ生じたが、同灯浮標はのち修理された。


(原因)
本件灯浮標損傷は、夜間、平郡水道を東行中、見張り不十分で、船首目標の灯浮標を避けなかったことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、平郡水道において、船首目標とした第3号灯浮標に向け航行する場合、同灯浮標と衝突することがないよう、前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、同灯浮標まではまだ距離があるものと思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、同灯浮標を避けることなく進行して衝突を招き、大黒丸の左舷船首部に擦過傷を、第3号灯浮標の防護枠、やぐら等に損傷をそれぞれ生じさせるに至った。






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